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○大森林 (夕)

   本田、マウンテン・デューを片手に一

   心不乱に走っている。

   それを必死の形相で追う文左右衛門。

   もはや音速を超えた二人は橋を渡り、

   崖を飛び越え、ドッグファイトを繰り

   広げる。

   なかなか本田に追いつけず、業を煮や

   した文左右衛門、思い切って本田にタ

   ックルする。

   本田、突き飛ばされ、思わずマウンテ

   ン・デューを放す。

   空を舞うマウンテン・デュー。

   それを驚きの表情で見つめる本田と文

   左右衛門。

マウンテン・デュー、ゆっくりと地面

   へと落下していき、砕け散る。

本田「そ、そんな...」

文左右衛門「...」

   本田と文左右衛門、呆然と割れたマウ

   ンテン・デューの瓶を見つめる。

本田「何の為にあんな...」

   本田、膝からくだける。

   ハッとして顔を上げる文左右衛門。

文左右衛門「(独白)このままではいけない」

 

○原住民の集落 (夜)

   篝火が消され、静まり返っている集落。

   草の茂みから顔を出す本田と文左右衛

   門。

   二人とも顔に迷彩塗装をしている。

本田「人の気配はないね」

文左右衛門「この時間です。寝ているでしょ

 う」

本田「しかしさ。やっぱまずいんじゃないの?

 泥棒は」

文左右衛門「確かに神の御意志に反する行動

 かもしれません。しかし、我々の食料を奪

 ったのは原住民達です。目には目をという

 教えもあります」

本田「それってイスラム教じゃなかった?」

文左右衛門「(ごまかすように)さ、行きまし

 ょう」

   ソロリと茂みから出た二人、忍び足で

   民家の倉へと忍び寄る。

   とても神父とは思えない身のこなしで

   倉側の物陰に身を隠す文左右衛門。

   本田が後に続く。

本田「とても素人とは思えないね、ヨハネ」

文左右衛門「何を隠そう元SASですから」

本田「SAS?」

文左右衛門「英国陸軍特殊空挺部隊の事です

 よ。」

本田「へぇ」

文左右衛門「誰もいないようです。やりまし

 ょう!」

本田「え、ああ」

   サッと倉に突入する文左右衛門。

   一瞬遅れて後に続く本田。

 

   **************

 

   俄に騒がしくなる集落。

   原住民の男達がおのおの槍を手に民家

   から飛び出してくる。

 

○集落付近の林道 (夜)

   背に果物や野菜でいっぱいになったリ

   ュックを背負い、脱兎のごとく走る本

   田と文左右衛門。

   その後方から原住民達の怒号が迫る。

   本田と文左右衛門の真横から原住民の

   戦士Aが槍を構え、飛びかかってくる。

   文左右衛門、すかさず持っていたリボ

   ルバーで原住民の槍を見事に射抜く。

   反動で後ろに飛ばされる原住民の戦士

   A。

   気を取り直し、逃走を始める本田と文

   左右衛門。

 

○森林内・広場 (夜)

   林道から走ってきた本田と文左右衛門

   、広場の中央で跪き、肩で息をする。

本田「まいたな」

文左右衛門「ええ、たぶん」

本田「いや、しかしすごいな、ヨハネは。と

 ても神父とは思えない」

   無言でニヤリと笑う文左右衛門。

文左右衛門「とにかく、これで我々の食料は

 確保できたわけです」

本田「ああ。奴らに捕まらなけりゃいいけど

 ね」

   突然ガサッと音がし、茂みから先程の

   原住民の戦士Aが出てくる。

   戦慄する本田と文左右衛門。

 

つづく