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○ワンの村 

   茂みから村の様子を伺う本田。

   村自体は、特に混乱した様子もなく、

   連れ去られた女達も悲痛な様子はな

   く、黙々と畑仕事をやっている。

   突然、驚愕する本田。

   トトが、にこやかな表情で、一人の男

   に藁を手渡している。

本田「(つぶやき)トト...」

   トトの背後を、ネルが無愛想に男を睨

   みながら畑へと歩いていく。

   息をのむ本田。物音をたてないように

   その場を後にする。

 

○同・畑 

   畑の隅から田植えを始めるネル。

   そこにネルを呼ぶ声。

本田の声「ネル!」

   ネル、ハッとなり、脇の茂みの方を見

   る。

   その茂みから、本田が顔を出し、手招

   きしている。

   驚いた表情で茂みへと近づくネル。

ネル「どうして...?」

本田「君を助けに来たんだ」

ネル「無茶だ。ここは戦士の村。あなた一人

 では返り討ちにあうだけだ」

本田「わかってるよ。でも君を見殺しになん

 かできないよ」

ネル「...何故...?」

本田「それは...」

   言葉に詰まる本田。

ネル「早くここから立ち去れ。命を無駄にし

 てはいけない」

   本田、ガバッと立ち上がり、ネルの両

   肩をつかむ。

ネル「あ...」

本田「ダメだ!君もトトと一緒に来るんだ」

   畑に来たトト、本田とネルを発見し、

   二人の方へ駆け出す。

トト「じょーすたー」

   嬉しそうな顔のトト。

本田「トト」

   本田、トトを抱きしめる。

   そこに、男の叫び声が割り込んでくる。

男の声「seiA"A!!」

   驚愕の表情の本田とネル。

   畑の向こうでは、槍を持った男達が本

   田達の方を指さしている。

ネル「逃げて!」

本田「君も一緒だ!」

   本田、トトを抱え、ネルの手を引いて

   茂みの奥へと逃げ去る。

 

○アーの村近く (夕)

   薄暗くなってきた道を、文左右衛門が

   一人歩いている。

   その向かえから男達の話し声が近づい

   てくる。

   文左右衛門、咄嗟に脇の茂みに身を隠

   す。

   男達、槍を構えつつ口々に何かを叫び

   ながらアーの村へと駆けていく。

   注意深く様子を見守る文左右衛門。

文左右衛門「...まさかジョースター」

 

○湖のほとり (夜)

   本田とネル、湖のほとりで焚き火を囲

   み座っている。

   ネルの脇では、トトが安らかな寝息を

   たてている。

ネル「ジョースター」

本田「ん?」

ネル「なんでこんな事を?殺されるかも知れ

 ないのに」

本田「だって、ネルを助けたかったから」

ネル「わからない。私に命をかけるというの

 か?」

本田「そうさ。だって俺、君の事がさ。えー

 っと」

ネル「何?」

本田「何て言ったらいいのかな。初めて会っ

 た時から、運命って言うのかな。そういう

 のを感じてさ」

ネル「私を好きなのか?」

本田「ああ。単刀直入に言えば」

ネル「それだけでこんな危険な事ができるも

 のなのか?」

本田「愛があれば何だって出来るさ!なんて

 ね」

   軽く笑う本田。

ネル「私には夫がいるが、そんな愛情なんて

 感じた事がない」

本田「えっ!そうか結婚してたんだよね?そ

 うだ」

   途端に落ち込む本田。

ネル「私はむしろあの男が嫌いだ。傲慢で粗

 暴で、何かにつけて暴力をふるう。あの村

 の男達はみなそうだ。私達が奴らから離れ

 てアーの村を作ったのも奴らの僕の様に生

 きるのが耐えられなかったからだ」

本田「...そうか。ウーマンリブってやつ

 だね。こんな所にまでひろまってるのか」

ネル「だから本当はあなたに感謝してる。で

 も、もし奴らに捕まったらあなたはただで

 は済まない」

本田「かまうもんか。俺は命をかけてんだか

 ら」

   本田とネルの目と目が合う。

   本田の手がネルの手に重なる。

   ネル、重なり合った自分達の手を静か

   に見下ろす。

ネル「あっ」

   ネル、手を引き上げる。

   残念そうな本田。

本田「そうしたの?」

ネル「汚い、私の手」

本田「おいおい」

   再び見つめ合い、笑う本田とネル。

ネル「水浴びがしたい」

本田「するかい?」

ネル「しよう」

本田「するの?一緒に?」

   ネル、何も答えず、微笑んで立ち上が

   る。

   本田、ムードに酔った様子でネルを目

   で追う。

   ネル、歩きながら服を脱ぎ捨て、湖へ

   と入っていく。

   本田、シャツのボタンをはずしながら

   立ち上がる。

 

○湖の中 (夜)

   ネル、湖の中程まで来て振り向く。

   本田、いつの間にかその背後に立って

   いる。

   ネル、本田の懐にゆっくりと近づく。

   本田、ネルの両手をとり、自分の懐に

   引き寄せる。

   そのまま抱き合う二人。

   その頭上には満月が輝いている。

つづく