○七階・裏階段前廊下 (夜)
   パーティー客達がガヤガヤと騒ぎなが
   ら裏階段へと移動していく。
   その一団の一番後ろにロブとヨーコ、
   そしてジェフらがいる。
ヨーコ「どこ行くの?」
ロブ「これから決めるとこだよ」
   後ろのジェフらを見るヨーコ。
ヨーコ「あの、タケルも呼んできていいかな
 ?」
ロブ「やめとけよ。あんなヤツいたって面白
 くないぜ」
   と言いながらヨーコの肩を抱く。
   ヨーコ、落ち着かない様子である。
ヨーコ「じゃ、何時頃までやるの?」
ロブ「さぁな。朝までかもしんないし、その
 次の日までかもな」
   ロブを見上げるヨーコ。
   ロブのヨーコを見る目つきがいやらし
   い。
   後ろのジェフ達を見るヨーコ。
   無言で歩いているジェフ、チャン、ジ
   ョー、そしてリー、四人とも無表情で
   ヨーコを見返す。
   ヨーコの表情に恐怖が見え隠れする。
ヨーコ「あの、あたしやっぱり帰る」
   ヨーコ、ロブの手を逃れようと前に出
   ようとする。
   ロブ、そのヨーコの肩を放さない。
ロブ「何でだよ、いいじゃないか」
   ヨーコ、その手をふりほどく。
ヨーコ「いえ、あたしタケルに用があるから。
 じゃ」
   ヨーコ、逃げるように階段の方へと駆
   け出す。
ロブ「おい!」
   ロブの後ろでジェフらが笑い出す。
ロブ「何がおかしいんだ?」
   と、憮然として後ろを振り向く。
ジェフ「別に」
   バカにしたように言うジェフ。
   ロブ、釈然としないまま歩く。
ロブ「くそ...」

○地下室 (夜)
   懐中電灯の光が暗闇を舞う。
   地下室はかなり広く、懐中電灯の光が
   奥までは届かない。
   タケルとクリスティン、密着しながら
   辺りを見回す。
タケル「暗くてよく見えないな」
クリスティン「どこたろ、配電盤?」
   どこからかネズミが飛び出してくる。
クリスティン「きゃっ」
   タケルにしがみつくクリスティン。
タケル「ネズミだよ」
クリスティン「ああ、びっくりしたぁ」
   タケルとクリスティン、奥へと進む。
クリスティン「ね、子供の頃を思い出さない
 ?」
タケル「え?」
   見つめ合う二人。
クリスティン「こうやって暗い中を探検した
 りしたでしょ?あ、日本ではやらないのか
 な、そういうこと」
タケル「そんな事ないよ。確かに子供の頃は
 こういった事を冒険と称してよくやったも
 んだ」
クリスティン「やっぱり。国の違いなんて関
 係ないのね」
タケル「こういう事もやったなぁ」
クリスティン「え、どんな?」
   タケル、突然懐中電灯を消し、いなく
   なる。
クリスティン「えっ、ちょっとやだ。タケル
 ?」
   全く反応がない。
クリスティン「タケルってば!私はやらなか
 ったわよ、こういう意地悪は」
   顔は笑っているが、声が震えている。
   クリスティン、そのままタケルを探し
   ながら奥へと進む。
クリスティン「タケル、いいかげんに出てき
 て!じゃないと帰るわよ、私」
   突然後ろから抱きつかれるクリスティ
   ン。
   顔を恐怖で引きつらせながら後ろを見
   る。
   抱きついているのはタケルだった。
   タケル、笑顔でクリスティンを抱えた
   まま、懐中電灯をつける。
クリスティン「怒るわよ、もう!」
   と言いつつ顔が笑っている。
タケル「ごめんよ」
   タケル、真剣な表情でクリスティンを
   見つめる。
   クリスティン、タケルの雰囲気の変容
   に気づき、緊張する。
   そのまま近い位置で見つめ合う二人。
   タケルが顔を近づけようとするがクリ
   スティンは何気なく顔を逸らし、目の
   前の配電盤を見つける。
クリスティン「あ、配電盤よ」
   タケル、少し落胆し、クリスティンが
   指さす方にライトをあてる。
タケル「異常はないみたいだね。どうして電
 気がつかないんだろう?」
クリスティン「そうだ!そうよ、メンテナン
 スだ」
タケル「メンテナンス?」
クリスティン「そう。管理事務所の方で今晩
 一晩メンテナンスやってるのよ。張り紙が
 でてたんだった」
タケル「なんだ。それでか」
クリスティン「あういう広告って案外見てて
 も憶えてないもんなのよねぇ」
   会話がなくなり、再び見つめ合うタケ
   ルとクリスティン。
クリスティン「もう帰ろうか」
   タケル、だまってクリスティンの顔を
   見つめている。
クリスティン「タケル...?」
   タケル、クリスティンの両肩をつかむ。
   戸惑うクリスティン、困ったようにタ
   ケルを見上げる。
   タケル、ゆっくりと顔を近づける。
   クリスティン、すんでの所で顔を後退
   させてかわすが、タケルは尚も唇を求
   める。
   こわばるクリスティン。
   唇と唇の先端がついたくらいの所で上
   に通じる階段から話し声が近づいてく
   る。
サムの声「今声がしたぜ」
ボビーの声「こんな所に誰かいるのか?」
   驚くタケルとクリスティン、抱き合う。
   ボビー、のぞき込むように地下室に入
   ってきて、タケルとクリスティンを見
   つける。
ボビー「おお、いい場面の真っ最中だったよ
 うだぜ」
   続いてサムとジェイが興味本位で顔を
   覗かせる。
   怯えるタケルとクリスティン。
ボビー「おやおや、さっきのイエローチキン
 じゃねぇかい。白人女と何しようってんだ
 、ああ?」
   タケル、咄嗟に懐中電灯をボビーに投
   げつける。
   辺りが真っ暗になり、ボビーらがひる
   んだ隙にタケルとクリスティンは彼ら
   を突き飛ばして地下室から逃げ出す。

○一階・廊下 (夜)
   タケルとクリスティン、手をつなぎな
   がらアパート玄関近くの地下室へと続
   く入口から駆け出てきて、玄関とは反
   対側の裏階段へと走る。
ボビー「待て、この野郎!」
   後ろからボビーとサム、ジェイが遅れ
   て出てきて追いかける。

○裏階段・一階 (夜)
   一階廊下から裏階段ホールに飛び込ん
   できたタケルとクリスティン、階段を
   必死に駆け上がる。
   遅れてボビー、続いてサムとジェイが
   入ってきてタケルらを追って駆け上が
   る。


次回につづく


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