英雄王ディグランツ |
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ウァルハーリパル・イェン(Aブランチ)
でも、魂の半身を受け入れれば自分の性能の全てをひきだせる。
「ウァルちゃん!」
テレサが止めようとするが、「魂の開放」など止める手立てはない。
エスプレイドが一言、宣言すればいいだけだから。
ウァルハーリパルの頬に涙がつたった。
言葉がふしぎな程、しっかりしている。
「アクエリア。ジグ様が他人に傷つけられるぐらいなら自分が……と言っていましたね。
私はそうはさせたくない。そんなことをしたらジグ様は本当に一人ぼっちです!」
アクエリアには、孤独にどんどんはまっていくジグの最期の砦になってほしい。
ジグがこれからどうなるにしろ『アクエリアに刃を向けられた』という事実を背負わないで欲しい。
「あなたはジグ様を守り死ぬでしょう。私は全てを受け入れ、クローン素体『アリス』と同調します」
ウァルハーリパルは瞳を閉じた。あの『うぁる』の消滅の時だ。
(ごめんなさい、りゅなりすさま、てれささま、うぁるをゆるしてくれてありがとう)
だから、『ジグのアクエリア』を守るためにアクエリアと戦う事が出来たのです。
ジグとアクエリアが戦うかもしれない。ジグが誰も彼もに背を向けられて、傷心のままに滅ぶかもしれない……。
そんなことを悩みながらここを後にはしたくは無い。
彼女の言い分としては、そういうことだ。
ちゃんと勝って戻るつもりだ。
どんな人格になっていても。
今の『うぁる』は新しい人格に溶けていってしまうけれど……。
(さようなら、あるねいゆさま……)
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エルツベルム軍で捕獲されて再暗示を施され、ディグランツ隊に拾われたレグルタの人造人間『エスプレイド』の少女。その実体は、本来の冷徹非常な人格の上にダミーの人格を植え付けられ、無意識下でジグ軍に有益な行動を遂行する密偵である。彼女は潜在意識化に植え付けられた命令に従い、(後の神竜信仰の開祖である)アルネイユに付き従っていたが、自分自信ではその命令を『アルネイユに対する愛情』『本当の自分の心』と認識していた。
神竜の祝福により、全てのエスプレイドにかけられた暗示が解かれる機会を得たその時、ウァルハーリパルは迷っていた。今のアルネイユに恋するウァルハーリパルの人格そのものが、暗示によって植え付けられた偽りの人格であり、その暗示を解かれれば『今のウァルハーリパル』は消えて消滅してしまう。
「ほんらいのじぶんにかくせいしてしまったら、いまのじぶん、ほんらいではないほうののじぶんは、どこにいってしまうのだろう……」
彼女はその決断から逃げた。しかし。スヴァルト王ノアールに犯され深い心の傷を負った「運命の女」リッチャルダへの、同じ道具として扱われるものとしての共感や……。そのリッチャルダを傷つけてしまったミレーネの「……私も、どうしていいかわかんないんだ」という言葉から感じた英雄の苦悩に、「じぶんはこれでいいのだろうか」と悩む事になる。
もし自分が、自分で考えることのできる、感情を持った人間であったなら、どのように動くべきか……。弱い自分自身との決着をつけるため、ウァルハーリパルは単身ジグの住む『天の城』へと潜入する。
黒竜に洗脳されたジグを開放し、ディグランツ隊との和解に尽力することに、ふたつに引き裂かれた心の対立の妥協点を見出したのだ。しかし、天の城で彼女を待っていたのは「何処へ行っても自分は役立たず」という現実を、真っ向から突きつけられるのみであった。
小さな活躍で手柄を立てたものの、それも束の間。ディグランツ隊の仲間アリュースがジグに無謀な説得を試み、無残に殺害される現場に衝撃を受けたウァルハーリパルは、ジグの前に飛び出し、ジグに仕えるエスプレイドの一人、アクエリア・リュエラシードに破れて捕らえられる。
懸命の説得も虚しく、ジグとアクエリアから「自分の真珠の涙が、世の中を変える万能薬と信じて疑わない」傲慢さを厳しく指摘され、ディグランツ隊に対する人質となってしまう。(現在執筆途中)
ウァルは、ゲーム序盤に設定やアクション方針が二転三転したキャラクターですね。今から初期設定を見ると本当に「……誰、コイツ」って印象。『太陽と月の鎮魂曲』にコンバートしたウァルハーリパルのデータの方が、全10回のゲーム内でのイメージに合わせたものなので、あちらの方がイメージが近いのです。
シートを見ての通り、最初はもっとヒネた、退廃的で不気味で得体の知れない、とんがった個性のキャラクターを想定していました。
ところがAブランチは、バリバリの本筋ブランチの割に、レグルタの人造人間種族「エスプレイド」の女性PCが、ウァルハーリパル一人しかいなかったんですよ。他の3人は早々に他ブランチに移動してしまったり、ジグ軍に属した事のない特殊な少年型だったり(アズさん)、突然変異の筋肉オヤヂ型だったり(フランシスコさん)でしたから。以後、なんとなくウァルハーリパルは「Aブランチにおける、エスプレイドという種族の代表と言うか代名詞と言うか、代弁者と言うか」って感じのキャラクターになっていきました。
証拠に、Aブランチに登場するエルラシエルさんの部隊に所属する脱走エスプレイドの少女達は、みんなひらがな口調で喋るんです(笑)。結果としては、それが世界観や、ウァルハーリパルのキャラクター性に深みを与え、プラスに作用していたのかも知れません。印象深いシーンの多かったPCです。
(現在執筆途中)