ステラマリス・サガ |
---|
セリスタ・モデルノイツェン(HAブランチ)
「そう、壊すのね?」
スレイヴドール、セリスタ・モデルノイツェンが呟く。その様子はいつもの彼女とは違って見えた。
「セリスタ?」
「あなた達は私達と違う生き物ですものね。だから、私たちは違う。スレイヴドールは作られたものを、ツヴァイを見捨てる事は出来ない」
「間に合わねえ、やっちまえ、ユリアっ!」
御免なさい、ユリアは心の中で叫んで自爆キーをツヴァイに向けスイッチを押した。しかし、何も起こらない。
「…………どうして」
ユリアはがく然としてその姿を見つめた。
「ジャミングさせてもらったの。これであの子は自由」
「だれか、そのクリーチャーを止めてっ」
しかし、その叫びはもはや手遅れであった。『王』の身体がまるで中身を失った鎧のように、がしゃりと崩れ落ちたのだ。
「ツヴァイーーーーっ!」
セリスタ・モデルノイツェン | ||||
---|---|---|---|---|
女性型スレイヴドール 23才 | ||||
称号 | 「罪と愛を心に秘めて」 | |||
タイプ | ハンター(スレイヴ・ドール) | |||
クラス | エグゼクター候補 | |||
一人称 | 自分(呼ばない) | 二人称 | きみ | |
口調 | やや素っ気ない女性口調「〜ね」「〜よね」 | |||
髪の色 | クローム銀 | 髪型 | ラフなセミロング | |
瞳の色 | 常に閉じている | 肌の色 | クリーム | |
身長 | 170.32ミュール | 体重 | 42.58キロガルト | |
体格 | 人間離れして痩身。壊れ易そう。 | |||
服装 | ロングコートに黒のブーツ、黒の皮手袋。 | |||
性格 | 「冷静沈着でドライな、優等生タイプかな。 でも本当は、身勝手な自分。孤独が怖いくせに、常に他人の幸不幸と、自分の損得を天秤にかける……そんな自分が、嫌い」 |
|||
特徴 | そばかす、物静か、足首が細い | |||
好きな物 | 音楽。お互いの傷つかない恋愛ごっこ。 | |||
嫌いな物 | 血、辛い現実、希望のない未来。 | |||
大切な物 | スレイヴ・ドールの同胞たち。思い出。 | |||
自由設定 | 「徹底した軽量タイプの戦術偵察型スレイヴ・ドール。常に目を閉じているのは、機械的に強化された聴覚センサー類に集中するためなんだ(センサーの機能や能力は所持技能に準じます)。 普段はソナーを使っているから、不自由はないよ」(評価:△) |
|||
特殊設定 | (改造部位)「骨格構造を組み替えれば、格闘戦にも対応できるよ。内臓武器は、肋骨に仕込んだパイルバンカー(空薬莢の排出口は背骨沿いから)。軽量タイプと侮ったら、軍用スレイヴ・ドール並みの出力(筋力17)に痛い目を見るよ……。 戦いたくは、ないけれど……」(評価:○) |
|||
地位 | 3rdランクハンター | マーク数 | 37匹 | |
戦闘力 | 7125(C) | 権力 | 2503 | |
資産 | 3130マリス | 知名度 | 90 | |
能力値 | 筋力17、知恵13、敏捷15、感覚9、身体3、精神7 | |||
技能 | 格闘回避、格闘、殺気感知、暗号、聞き耳、偵察 跳躍、ブランド知識、作り笑い、嘘 |
|||
メモリシア | 透視力、魔視、馴具、能力増加、能力増加、暗視、機智、狂暴化、貫通、予測 | |||
アイテム | ナイフ、リベットナックル、レザーブーツ、ブランドシューズ、ノート型コンピュータ、フライハイトのうさりんご、フライハイトのてるてる坊主 | |||
履歴 | HA>HA>HA>HA>HA>HA>HA>HA>HA>HA |
人造人間ツヴァイ(別ブランチに登場していたアインス、ドライの姉妹)の自爆を妨害し、みすみす敵クリーチャーの王『サンクシオン』の手に渡してしまったセリスタ。彼女は翌月のネットプラスのPC紹介コーナーで『大罪人』として紹介された。無論、たいそう名誉なことなのである。ファイナルイベントで担当の榊大悟マスターから聞いた話では、セリスタの予定外のアクションによって、『自爆を強要されたツヴァイが暴走し、PCの敵として立ちはだかる』という予定のストーリーは大きく変更されたとのこと。プレイヤー冥利に尽きるというものだ。ツヴァイを救う事ができなかったのは、心残りだけど。
人間の定義って何だろう。
自主性を持たない人間は、もはや人間ではないという。そうなのだろうか。
別ゲームの話で恐縮なのだけれど、PBM『七界の剣』のEブランチに、フォルという名の少女が登場していた。彼女は七界の剣の精霊として、神々に道具として産み出された存在で……そんな彼女が周囲のPCたちにちやほやされたり、励まされたり支えられたり感化されたりして、だんだん強くなっていくお話なのだけれど。そんな状況を評して、ある悪役(?)PCさんが「所詮道具として産み出された彼女を、人間扱いするのはナンセンスだ」と言っていたシーンがあって、その言葉が喉に刺さった小骨のように心に残っていた。
当初、フォルの自我が希薄だったのは、そのような存在として産まれたからであって、望んでそうなったわけではない。彼女は結局、周囲が人間として扱ってくれたからこそ、人間らしい自我を確立したのであって、努力したとかそういう次元の問題ではない。……自主性とか、脳細胞の数とか、魂の重さみたいな数値的な基準で「人間とモノ」を分け隔てていいものなのだろうか? ある次元では真実かもしれない。しかし、否定するとしたら、その根拠は何かあるのか。僕は返答に窮した。
その回答として、セリスタというキャラクターは産まれた。人間とは違う視点を持った外部の存在、ロボットの目を通して、人間とは違った価値観を訴えていくPC……というイメージが前提にあった。そしてそのテーマは、『七界』のフォルと同様、道具として産み出された自我を持たない存在、ツヴァイの登場によって、具体的なものに昇華されていく。ページ冒頭の台詞はその答えだ。
『人間が我々を同族(人間)と見なさないのなら、我々はもはやあなた達を同族とは見なさない。我々は互いに理解し合う事は永遠にできない』
結局、それはコミュニケーションの拒否ではないか……。「人間」と「モノ」の境界を、杓子定規な規定で縛ってしまうことへの危険性が、僕の感じた違和感だったのだのではないかと思い返すのです。
セリスタはその後、ツヴァイの死を通し、「人間」と「モノ」との和解の道を模索する事になる。デチーソやアイゼンヴォルフを渡り歩き、「全人類を意思なきロボット(超越種)に洗脳して惑星ステラマリスを襲う破滅の危機を乗り切る」という大仰な人類補完計画、『フライハイト・プラン』に対して、自分なりの和解の道を模索しつづけた。ツヴァイの身体を乗っ取ったサンクシオンとの絡みや、第7ターンでの放送局(JBブランチ)絡みのグループFA(蒼魔くんや薄氷紋君やのPCとの)でも目立った活躍をした。外れた回はほんの2、3行しか登場していないのだが、活躍した回では、ぶっちぎりで丸々1ページ登場していたりする。
いろんなことを考えさせられたPCだった。心に秘めたまま、リアクション上で明らかにする機会のなかったフライハイト・フォルケンへの慕情や、密かにギミックに凝っていた肋骨パイルバンカー(金沢のネット交流者の皆様から、色々とアイディアを頂きました)の設定など、少々詰めこみすぎて消化不良であった感は残るけれど……。自分なりに全力を尽くしたPCだったと思う。
プランの失敗の後は、ゆるやかな破滅を待つステラマリスの地の果てで、人類の遺伝子データを保存し未来に伝えるという箱舟計画に参加。残り少ないエネルギーの全てを、ツヴァイの簡易量産型である超越種「アヴニール」たちと共に、箱舟の警備のために過ごす。「私、ここにいてもいいのかな」と戸惑うセリスタを祝福する無感情なアヴニールたち……という結末は、ある意味でブラックではあるけれど、彼女なりに突き詰めた結論の末に辿りついた、彼女だけの『約束の地』に他ならない。
ファイナルイベントで配布したプラリアのHTML版があります。全10回のアクションを読み物風にまとめたもので、リアクション上には書かれなかったエピソードを綴ったものです。申し訳ない事にHAブランチ本編を読んでいないとワケのわからない内容で、恐縮なのですけれど……。lzh圧縮版をダウンロードすることもできます。