また, もともと使い捨て度が高く, 対象年齢や性別が一義的には存在し,
世間一般的にかなり特殊な位置にあるライトノヴェルズは, 同じアンケートをとっても「このミス」みたいに普段はまったく読書しないけどとりあえず上から3冊読んでみようか,
という使い方をして貰うにはやや難しい気がする. 通常このライトノヴェルズのノリが好き,
という前提が読者には暗黙のうちに存在する訳で, その壁を乗り越える普遍的な価値をもつ作品というのはややライトノヴェルズ読者ウケするものとはずれる可能性がある, と思う.
そういう意味では, もし行うならライトノヴェルズの世界に魅力を感じて既に入ってきている人が,
更に枠を広げていくための指針という使い方が一番真っ当なのだろうな, と思っている.
ライトノヴェルズというのは分類の一種であるが, これは内容の書き方の分類であって,
内容自体を分類している訳ではない.
中身のジャンルはSF,ファンタジー,学園,アクション,オカルト,ホラー,ミステリー,時代物,戦記,恋愛,とりあえず何でもありで,
もちろん一作中にごちゃ混ぜのもあるし,
作者は端から自分は恋愛ものを書いているとしか考えてなかったりする場合もある.
きっと多くの読者はジャンルは関係なく面白ければいいというスタンスで読んでいるのだろうと思うが, それでも,
ミステリーっぽい話のトリックの解決が超能力ではどうしてもむなしくなってしまうとか,
科学的正確さはつい気になるので真夜中に三日月をバックにカッコつけてもダメとか,
江戸時代なのにその時代の人の考えていることがどうも現代的な倫理観に則っているみたいで違和感ばりばりとか, まあ多分にそういうのに左右される人といない人がいる訳で,
どう「すごい!」のかというのは実はどの基準によったのかをはっきりさせないと分からない場合が多い. だからうちのアンケートの場合は毎回繰り返し書いているように,
中身の質の評価を望んでいるのではなくて, 回答者にとって面白かったかどうか,
つまり読者(=通常はイマドキの若い人々)の感性にフィットするかどうか,
ということだけを基準にして欲しいとお願いしている訳だ.
まあそう書いている自分だって結局科学的ないい加減さに引っ張られてせっかく盛り上がっているクライマックスがさっぱり楽しめない場合とか, 結構あるからそう簡単にはいかないのだけどね.
だから自由記述式のアンケートだったら, 評者がどういう読み方をした上て,
その結果どこが魅力だったかということをきちんと説明してもらえると,
読む側としては捉えやすいかもしれないなという気はする.
普段読書感想サイトを定期巡回している分には既にその著者の嗜好はある程度分かっている訳だし,
あまりいらないのだろうけど, 一つにまとめるのであれば,
その辺のフォローはあった方が親切ではあるかな, と思う.
逆に言うと, 数が揃うなら「ミステリー好きが選ぶベストライトノヴェルズ」とか「SF好きが選ぶベストライトノヴェルズ」とかもできるが, SF好きが選ぶ学園恋愛もの,
とか, 果たして買っていいのやら, 読者の情報識別能力が逆に問われそう(笑).
まあこれはかなり理想の話なので, 実際は無茶なんだろうけどね.
一方で当然他分野にまったく興味のない人で特定ジャンルだけ引っ張り出して読んでいる人もいる.
そういうジャンルオンリーの人はあまりたくさんライトノヴェルズを読んでいるわけはないと思うのだが, 気になるのは作家さん.
そもそもたくさん読んでいたうちに影響されて書き始めたへヴィ読者出身,
とかいう場合はともかく, そんなにみなさん読みまくってるんですかね?
一応プロとして自分が魅力的な物語を創造する立場にあるだけに,
影響を受けることを恐れて近い分野は全然読まない人とか, 逆に興味のない分野はまったく読まない人とか, 書くのに忙しくてあまり読んでいる暇がないとか, まあいろいろいる訳で.
となるともはやこのライトノベルがすごい! という「普遍性」を求める作業(とオレは解釈している)が, 私の好きな作家はどんな作品に興味を持っているんだろう?
という別のものに変質するような気もする. もちろんそれはそれで面白いだろうし,
そういうのを目指すのもありだとは思うが, そういう結果を見る時は,
SFやミステリで同じことをする場合とは中身はちょっと違うということになるのかも.
でもまあその辺は直木賞だって一緒かもね. あれもとりあえず作者の力量自体は評価できるから,
後は順番で今年は誰, みたいなのも無きにしも非ずじゃないのかなあ.
その辺り, SFやミステリーの場合は人それぞれで読書の偏りがあったとしても(バイオ系は読まないとか, 怪盗が主人公の作品は嫌いとか),
基準とするものはたいていセンスオブワンダーとかトリックのアイディアとかちゃんと存在するので, 数を集めればある程度標準化するということもあるだろうし,
そういう意味では, みんなすごいっていうからじゃあ私も右へ倣え, 的需要の強い日本では,
出るべくして出た「SFが読みたい!」「このミステリがすごい!」なんじゃないかと思う.
柄にもなく続けてだいぶえらそうなこと書いたのでこれでおしまい, っていうかこんなのたらたら書いている場合かお前はっ(爆).