ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : Part 31-1

チロルの奥深く三国が交わるところ、オーバーインタール(オーストリア,イタリア)

2005年7月2日(土)

[夏はチロル]
今年の夏休みはチロルを重点に回ろうとプランニングをしたのだが, エンガディンエクスプレスとして一部で有名なこのオーバーインタールからウンターエンガディンに抜けるルートは, そのままスイスへと抜けてしまうためチロルめぐりに組み込むのがちょっと難しかった. かといって除外してしまうのはあまりにもったいなく, ここだけ別枠でいつもの「週末旅行」で来ることにした.
夏休み一週前ということで, まだ混雑は大丈夫かと思い, 行きの夜行列車と宿泊は予約無し. 帰りはスイスからの国際線列車ということで, 乗車券ともども一応夜行座席車の指定を出発日(乗車2日前)に確保.
今回は前売りで既に国際線割引の効いている鉄道乗車区間を除くとスイス国内での交通機関の利用は少ないので, パスやHalf Fare Cardなどの割引手段は確保せず, すべて正規運賃で利用.

オーストリア全体地図
行程マップ

[またしても雨 : Landeck]
今回も土曜から天気回復予報を頼って出てきたのだが, 少々回復が遅れ, 早朝に到着したLandeck(ランデック)は雨がぱらぱら降ったり止んだり. 5時過ぎには日の出で既にそれなりに明るいのだが, やはり日が出ないとイマイチだ. 晴れが続いた5月とは反対に, 6月中旬以降, イマイチ晴天が続かない.
さて, Landeckの駅はLandeckの町と, その東のZamsの町の真中にあり, 駅舎にパン屋が付いていることと, 駅前がバスターミナルであるほかは目の前の道路の向こうは, ただInn川が流れているだけである. ここからLandeckまでは10分くらい歩く. さすがに5時過ぎではまだ人もおらず, 小雨でがらんとした街並を眺める. Innsbruck以西の西チロルでは最大規模の町で, 南から流れてくるInn川の両側に家が並んでおり, その奥一段上にSchloss Landeckが建っている. とりあえず金を下ろす. バスで8km程先にある, SemmeringのKalte Rinne Viaduktと並ぶオーストリアの鉄橋, Trisanna Brückeを見にいくことも考えていたのだが, これでは光量が足りず, おそらく鉄道写真が撮れないのでやめ. LandeckのInn川鉄橋を渡る夜行を一枚撮ってみたが(WLBmz 76-94を初めて見た(笑)), やっぱり光量不足だった. 1時間ほどうろついて, 駅へ戻り, ようやく開いたパン屋でパンを買って軽い朝食にする.
[高原のスキーリゾート : Fiss / Serfaus]
7時前のバスでFissへ向かう. 駅から乗った人はあまり多くなかったのだが, Landeckの町からはぞろぞろ手軽なおばさんおねえさんおばあさんが乗り込んできてぎっしり. 上で働いてLandeckで暮らしているのだろうか? さすがスキーリゾート.
Ried im OberinntalまでInn川沿いを走っていたバスは, ここから川の西側斜面を一気に上ってゆく. 300m上り, 遺跡が見えてくるとLadisだ. ここからは更に200m程上りながら, Inn川より一段高い高原の草原の中を走り, ついでFiß, Serfausと走ってゆく. 私はFiß(フィス)で下車し, Serfausまでは歩くことにした. とはいえ雨はまだ止みきらない. 日が出ないと伊達に標高1400mではない, ちょいと寒いくらいだ. スキー場の町で, 夏休み前となると, Fißの町もまだオフシーズンでがらん.
FißからSerfausへ向かうハイキング路は, しばし車道を歩き, 道が大きく尾根を巻いてカーブするところでそのまま尾根を登ってゆく. 地図をみながら入口まで行くと…, なにやら工事中らしく, 作業車両が並んでいる. 標識がないけど道はあるし, 多分間違いないだろうと, そのままあがってゆくと, 少し奥に看板が後ろ向いてひっくり返っていた. いいのかそんなのでと思いながら更に進んでいくと, その先には反対から来た人用に, 「この先工事中のため, 別ルートに迂回してください」の案内が. …この道ほんとは入ってはいけなかったのか(苦笑). まあいいや, どうせ土曜の朝で今は作業してなかったし.
自動車道路の少し上の林の中を上ってゆくと, やがて時々木々の合間から先ほど出てきたFißの町や, その下のOberinntalが望めるようになる. こう見ると, 確かに谷より一段上の高原リゾートという感じだ. 100m程上り, 牧草地に出ると, 今度は反対側に下り, やがてSerfausの村が見えてくる. ちょうどこの辺りで雨が止み, 時々日差しが覗くようになってきた.
[何故ここに? : Römer Brücke]
Serfaus(セルファウス)も小さな村で, メインストリート沿いに奥まで往復してきたが 更にスキー場観光産業に特化したような, 道の両側に並ぶのは店か宿泊施設かどちらかしかないような雰囲気で, それだけにどの建物も御洒落だ. そして斜面には牧草地が広がり, 谷の奥にはリフトが上下している. 中央の教会の建物だけ妙に古めかしいところが微妙なアンバランス感を醸し出しているかも. この村はOberinntalからその支谷の一つに半分入り込むような形で建っているため, ちょうど谷の角の高台から景色を見るような, 展望台のようなロケーションだ. 最低地点が1500mの山間で冬場は雪もそれなりにあるようで, 日本では知名度が低いが, それなりに人気のあるスキー場らしい. 道はぼちぼち起きだしたらしい観光客が散歩する姿と, 近所の家?からホテルやお店などに出勤?するらしい民族衣装姿の現地の人がちらちらと見受けられる. 地元の人らしき人たちは結構こちらを見てくるので, 挨拶を連発.
SerfausからはそのままInn谷へハイキングコースを歩いて下りることにする. 教会の裏の標識を見, 牛の逃亡防止柵を抜けると, 森の中の一気の下りだ. あっという間に谷底の沢の音が大きくなり, 約20分で300m近く下りて谷底へ. やたらつるつるすべる木の橋を渡り, 再度100m程上り返すと, 再び牧草地へ出て, Oberinntalの視界が開ける. 牧草地のど真ん中を下り, もう一度林の中へ入って下っていくと, やがて氷河色のInn川沿いの村, Tösenへ到着する. 牧草地のあたりでもう少し楽な大回りルートをとったらしい初老の夫婦に会った他は誰もいなかった.
さて, このTösensの村から見て, Inn川の対岸の岩壁沿いに, ローマ時代の遺跡の橋が残っていて, まだ渡れる. 地図をみながらてっきりInn川にかかる橋だと思っていたのだが, 河岸の岩壁沿いの窪みを渡るように作られていた. 対岸にいくらでもスペースがあるのに, なんでこんなところに橋があるのか謎だが, 詳しい解説はなく良く分からなかった. まあいいけど.
[満員御礼? : ナウダースへ]
Tösensではバスまでしばらく間があるはずだったのだが, 前のバスがドンピシャで遅れて来たので予定より一本早く乗れてしまった. ラッキー? Oberinntalは両側の主稜線は3000mの山なのだが, どちらも懐が深く谷底からは手前の2000m程度の山しか見えないため, 緑豊かな落ち着いたたたずまいを醸し出している. オーストリア側最後の谷沿いの町, Pfundsを抜けると, まずスイスの免税地域, Samnaunへ向かう道を, ついで川沿いにそのままスイスのMartinaへ向かう道を分け, バスは一気にオーストリア側の坂を上ってゆく. 400m程上って開けた草原に出ると, まもなく建物が見えてきてNaudersに到着. バスは本来は村の中央の郵便局前へ行くはずなのだが, よく分からないが大通り沿いの消防署前で降ろされてしまった.
建物の間の斜面を上ってゆくとすぐに郵便局へ到着, その少し奥にInformationがあるので, まずそこへ向かう. 今回は宿の手配をしてこなかったので, ここで紹介してもらう. 「今晩一人宿を取りたいんですけど, ここでお願いできますか?」「出来ますけど, 今日は部屋ないよ」「え?」「今週末はMTBの競争があって, 埋まってるの」「…」「でも一人で一泊ならなんとかなるかも」「よろしく」結果は55.40Euroが一室. ぎゃあ! 予算40Euroで来たのに. とはいっても予定を変更して他所へ行く気もせず, 結局その部屋を確保した. はあ. で, バスが町内に入ってこなかったのはそのレースのせいらしい.
[スキーリゾート : Nauders]
ともかく部屋を確保し, 昼飯をすませて再び外出. このNaudersもかなり観光依存度が高いような感じの村で, 村の案内地図などをみていると, 部屋貸ししていない家の方が少ないのではないかという勢いだ. 従って建物もほとんど例外なく, きれいに飾られている. 四方を山と, その斜面の牧草地に囲まれた村は, 微妙に作られた村という印象が漂うが, 雰囲気はいいしのんびりできるからまあいいのかな.
Nauders
村の南端にSchloss Naudersbergというお城があり, そのバックに聳える国境の山々ともども風景のアクセントになっている. その脇をぬけて自動車道の少し上の牧草地の中を走るサイクリングロードを散歩することにする.
[峠を越えてもチロルはチロル : Reschenpass]
そのMTBレースのせいなのか, ひっきりなしに前から後ろから自転車が通過していくのが忙しないが, 雰囲気はのんびりした道だ. なにやら動いていないゴンドラを潜り, 右に三国国境を抱えた山, Piz Lat(2808m)を見ながらしばらく4km程歩くと, やがて道は車道と合流し, まもなくイタリアとの国境の税関跡を通過する. もちろんもう使われていない.
イタリア側に入り, 再び牧草地の間の道をしばらく緩く上ってゆくと, まもなくReschen Paß(レッシェン峠)を通過. といっても別に標識が出ている訳ではない. 峠を越えるとここは分水嶺になり, 今度は南側へ伸びる谷はObervinschgautal(オーバーフィンシュガウタール), イタリア語名Val Venosta(ヴァル ヴェノスタ)へと変わるが, まあいずれにしてもチロルはチロルである. 雰囲気はさして変わらない. 道が下りになるとすぐに道路沿いにReschenの小さな町が見え, その奥に氷河色をした湖, Reschenseeが姿を現す. ぼちぼち足が疲れてきたがともかく湖畔へ向かい. 都合よくあったベンチで休憩とする. だいぶ日が出てきて気分がいいや.
[人造ダム湖 : Reschensee]
ところでこの旅行の前, Naudersの観光サイトで調べた夏季のロープウェイ運行案内で, 3つほど動いているロープウェイがあったのだが, Nauders付近の地図では見つからず, 首を傾げていた. それが, よく見ると3つのうち2つまでが実はイタリア側のロープウェイであった. そりゃ見つからんわ. さすがにこちらに歩いてくるので時間を取ってしまったので, もう上っている余裕はない. そのまま湖畔を散歩し, Graunまで行くことにする.
このReschenseeの湖畔にはパノラマ遊歩道がついていて, 気分よく歩くことが出来るが, 実はこの湖は人造湖である. もともとは谷底に小さな湖が2つある谷奥の農村地帯だったらしいが, 水力発電計画により, 1950年にダムが完成し, 22m水位が上昇したそうだ. その結果当時谷底にあったGraunの町は沈んでしまい, 現在は湖岸の上に新しく作られている. 私が向かったGraunの町はそういう過去を持つ訳だが, それに由来して, ここは現在観光名所になっている. それは湖の湖面から突き出したサンタアンナ教会の塔だ.
Graun
そのダム建設の際, イタリア政府はかなり強引に計画を通したらしい. ともかくかなり強制的に退去させられた旧村の建築物は, 湖底に沈む前に爆破された訳だが, どういうわけかこの塔だけうまく爆薬が効かず, 崩れずに残ってしまった. それで旧村の住民はそのまま抗議の意味を込めて塔を残したままにしてしまったとか. お陰で今はすっかり観光名所で, 湖の北岸から約3km, その塔まで歩いていくと, そこにはしっかり駐車場も備え付けられ, 湖畔には湖が出来る前の谷の立体模型やら, 湖造成の歴史や当時の抗議行動の写真などのパネルがいろいろ展示されており, 訪れた人が歴史を認識できるようになっている. 南チロルは東側の奇岩峰の連なるドロミテでさえ日本ではあまり知名度が高いとはいえないし, ましてや西側を占めるフィンシュガウの谷は言うまでもない. 自然以外のハコモノ観光もできる湖水地方に比べればそりゃ観光客も少ないだろうが, その分雰囲気は落ち着いている.
しばらく塔とパネルを見学した後, その南側へ出来た新村へ移動し再び少し休憩, 帰りはMalsからNaudersへの越境バスを捕まえて楽々帰還した.
[峠から眺めれば : Schöpfwarte]
Naudersに戻る頃にはもうほぼ晴れとなり, まだ雲は残るものの, すっかりいい陽気だ. 18時では夕飯にはまだ少し早いので, 今度は気軽に行ける村の西側, 100m程斜面を上ったところにある, スイス国境のInn川を見下ろす展望台へ行くことにする.
牧草地の中をしばらく上り, 一般道際から再び林の中へ入っていくと, いきなり断崖絶壁の上にでる. ここが展望台だ. St.Moritzなどスイスの谷間を流れてきたInn川は, ここからしばしオーストリアとの国境をなしながらPfundsまで深い谷間を流れて, 更に昼間通過してきたOberinntalからLandeck, Innsbruckへと下っていく訳だ. この展望台からもう少し歩くとこちらからはそのスイス-オーストリア国境を作る, Inn Schluchtの狭い谷間を望め, こちらも素晴らしい眺めだ. Naudersまで来てこれを見ない手はないね. 帰りはずっと左手にNaudersの村を見下ろす車道をのんびり下りて帰って来た.
[飯食ってお休み : Nauders]
基本的に長期バカンス/スキー滞在がメインの村だけに, おそらく朝夕まかない付宿が多いのだろうが, そのMTBレースのせいか, 夕飯も街中のレストランはかなり混雑していた. なんとかテーブルの空きを見つけて入り込んだが, 注文から結構待たされたな. 部屋へ戻ると一日の疲れが出て, 翌日のプランもろくに確認せずにさっさとお休みへ. Zzz.

その2 : ウンターエンガディン(スイス側)へ.


現地の行程

7/02 Landeck dep 6:52 Post Bus
(Bus4423)
4.8Euro
Fiß Postamt arr 7:39
Fiß → Serfausハイキング
Serfaus散策 8:30-9:10
Serfaus dep 9:10 徒歩 ---
St. Georgen via 9:55
Römer Brücke via 10:10
Tösens Postamt arr 10:15
dep 10:10(5分遅延) Post Bus
(Bus9986)
3.4Euro
Nauders Feuerwehr arr 10:50
Naudersホテル確保, 昼食
Nauders dep 13:25 徒歩 --
オーストリア/イタリア国境 via 14:40
Reschen Paß via 14:55
Reschensee北岸 arr 15:15
dep 15:45
Graun Santa Anna arr 16:20
dep 16:40
Graun(Curon) arr 16:45
dep 17:09 SAD Bus
(25)
2.0Euro
Nauders Postamt arr 17:26
Schöpfwarte/Innbrick往復ハイキング 18:30-20:00
Nauders 夕食,宿泊

参考


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