ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : Part 31-2

緑の斜面を渡る風、ウンターエンガディン(スイス)

(シュクオル-タラスプ〜フタン,グアルダ)

2005年7月03日(日)

中欧全体地図
行程マップ

その1 : オーバーインタールへ

[快晴! : Nauders → Scuol]
起きると素晴らしい天気だった. 明け方少し朝霧が出たがほぼ快晴. よかった. 今日は山歩きだ. 昨日朝食に関する説明を貰わなかった上に部屋に案内すらなかったので, 適当に7:30頃降りていくと, 何人か既に食事をしていた. 一応係の人が出てくるのを待って案内してもらい, 窓際の席へ. テーブルには今日の催し物案内など書かれた紙が置かれており, 最後に「本日で残念ながらバカンスを終えてお帰りのお客様, お気をつけてお帰り下さい」の添え書きが. 私はバカンスどころか週末の一泊だけですが….
8:30にチェックアウトし, 昨日同様の臨時バス停, 消防署前へ向かう. 一人待っていると, やがてやってきたバスは, Scoul行? …いやMartina経由とか出ているし, 多分綴りミスだ(苦笑). 10人くらい乗っていた客はほとんどすべて降り, かわりに一人乗り込む. "Scuolまで". "Schulsね. 一人?" え? 後ろをみると, いつの間にかもう一人並んでいて, しかもアジア人のおばさんであった. 今回初めて見たアジア人が朝のバスとは(苦笑). ちなみにSchulsはScuolのドイツ語名だが, 一瞬認識できず, 地名を聞き間違えられたかとドキリ.
Naudersからスイスへは, 昨日Schöpfwarteへ上る時に通った峠を越え, それから九十九折の坂道を一気にInn川まで下る. 川を渡る橋が国境で, 橋を渡ったところに検問所があったが, 前回のリヒテンシュタイン帰りに続き, またしても運転手と係官の目配せのみでフリーパス. いいのかオイ.
ここからはInn川沿いをひた走る. 左に川, 右手は牧草地の斜面だ. 幾つか集落を抜けたが, 斜面中腹に建つRamoschの集落が一際印象に残った. ここもあまり観光客が立ち止まるところではないのだろうが, ちょっと途中下車したい衝動が(苦笑). やがてScuolの街中へ入り, 郵便局の停留所を経て終点の駅へ到着. どこから来るバスもみな, きちんと列車と接続するようにダイヤが組まれているため, 駅前では複数のバスがぞろぞろと並んで到着することになる.
[町は飛ばして山上へ : Motta Naluns]
駅前にはちょうど接続する折り返し列車が到着したところで, 観光客で溢れていたが, それを横目にそのまますたすた駅の外れにある, ロープウェイ駅への通路へ向かう. 駅の裏側の斜面からそのまま山の上へ向かう訳だ. もちろんScuolの町はそのまま通過. それなりに利用者はいるらしく, 同じような旅行者の姿もちらほら見受けられる. 乗り場で片道だけのチケットを購入する. "Sechz..." え? 一瞬60(Sechzig)に聞こえたが, そんな訳はあるまい. 20Fr差し出すとちゃんと4Frお釣りが帰って来た. 16Fr(Sechzehn)ね(苦笑). ここは4人乗りテレキャビンの運行で, 一人で乗り込みのんびり揺られて10分ちょい, 頂上駅のMotta Naluns(モッタ・ナルンス)に到着.
この辺りの斜面はあまりきつくないため, 頂上駅からは既に谷下のScuolの町は見えない. 東側の谷間から, 先ほどバスで抜けてきたUnterengadin下流側の谷下が少しだけ見える. さて, 靴の紐を締めなおして出発.
ここからはScuolへ戻るコース, Ftanへ降りるコース, Pruiへ向かうコースなどいくつかハイキングコースがあり, 人々はあちこちばらけていくが, 私はまずスキーリフト沿いに300m程上る. 道は広く, 両側は既に森林限界の上, 草原で主に黄色い花々が咲き, 明るい雰囲気だ. テンポよく上ってゆくとやがて東側Sentと西側Alp Clünasを結ぶ道に出, 西側へ向けて折れるとまもなくスキーリフトの頂上駅. 小さなテラスがあるが, さすがに夏場は営業していないらしい.
[爽快なトラバース道 : Alp Clünas]
ここからは作業車の入らない狭いハイキング道になり, 緩く登ったり降りたりしながら, Piz Clünasの中腹の草原の中を歩いてゆく. ここまでくると人はだいぶ減り, はるか前に二人組の姿を見つつも, 基本的に静かな一人歩き. 時々谷下のFtanの集落などが覗けるものの, 周囲の草原と両側の峰々の黒い岩と白い残雪が青空に映えた景色を見ながらのハイキングに, ふとするとすぐ隣, 1000m下に谷を挟んでいることを忘れるような, 広い高原散歩をしているような感覚に陥る.

気分よく歩いてゆくと約30分でAlp Clünas(アルプクリューナス)に到着. 標高約2500m. ここから右手の少し急な斜面をジグザグに300m程上るとPiz Clünasの頂上へたどり着けるが, 今回は涙を飲んで省略. もっともその頃にはこの山とその裏の3000m峰Piz Minschunの頂上付近にはガスがかかり始めていたが. こちらはそのままいい天気の中間道を歩き続ける. 少し進むと, 登山口分岐からだと見づらかったPiz Clünasの全容と, Piz Minschunの岩壁が良く見えるようになる. よく分からないうちにMuot da l'Homの裏を抜ける.
[見世物? いや礼拝らしい : Alp Laret]
正面にPiz Cotschen(3031m)の山容と, その手前に切れ込んだVal Tasnaの谷が迫ってくると, 道は下りになり, 左へ折れながらAlp Laretへ降りてゆく. 途中二組ほどと出合ったが, こちらからということは結構下から歩いて上ってきたのだろうか?
谷下からAlp Laret(アルプラレット)までは, また車の入る道があり, 小屋が一つと, 牛も放牧されている. 小屋の裏から下りていくと, 表側のテラスに人だかりがしていた. 何事かと思って見てみると, なにやら金管楽器を抱えた人々が20人ほどいて, 人々はそれを見ていたらしい. おお, こんなところまでサービス旺盛…と思いきや, 端の人が例の説教口調で喋り始め, イエスがどうのこうの言って, 最後にアーメン. …日曜礼拝らしい. 更になにやら見学者をグループ分けして賛美歌を歌わせようとしだしたので, さっさと退散した.
[明るい小さな村 : Ftan]
Alp Laretはスタート地点のMotta Nalunsとほぼ同じ程度の標高で, 東へ向けてPruiへ向かうことも出来るが, このままFtanへ降りることにする. 15分ほど車も通るダート道を歩くと森林限界になり, 木々がチラホラ現れ始める. ここから再びハイキング道へ入り, 森の中を一気に高度を下げていく. 下りの下手な私としては, それほど急というほどではないけれどここは慎重に. 朝飯が足りなかったのか12時過ぎあたりからエネルギー切れになり, ちょっとへろへろになったが, 約30分でFtanの村が見えてきた. ちょうど大きな岩がごろごろしているところがあったので, 村に入る前にしばし休憩. これで今回の野原歩きは終わりなので, ちょっと名残惜しんでみた(笑).
Ftan(フタン)の村は, 上から見ると, 山の南側斜面の草原に教会を中心にして立つ, こじんまりとした明るい雰囲気の村だ. 振り返って見上げると, 森林の上に, 先ほど間近で眺めたPiz Clünasの頂上が随分上の方に小さく見える. このあたりでも谷底から300mくらい上のはずだが, ちょうど傾斜の緩い大地が広がっているところで, あまり谷間奥深く, という雰囲気がない.

Motta Nalunsから直接下りてきた人が多いのか, 村のレストランは結構賑わっていた. うまく人が出たところに入れ替わる形で納まり, 昼食とする. …高い, やっぱりスイスだ…. まあ別に連泊する訳でも無し, ケチるほどでもないのでご丁寧に食後のアイスとコーヒー込でゆっくり食事をする. 日曜の昼下がりということもあるのか, もちろん通過する車は谷底の道を行くから村まで上がってこないせいもあるのだろう, 集落の中でもいたって静かで, のんびりした空気が流れている. ほんとに半日くらい何もしないで休息をとるにはもってこいかもしれない….
[ウンターエンガディンのハイライトへ : Guarda]
ここからはバスでScuol-Taraspの駅まで戻る. 1時間に一本のバスだが, 発車前にはわらわら人が集まってきてほとんど満席になった. 斜面に沿って付けられた道を左右に折れながら高度を下げて行く. 外をぽけっと見ていると, いきなり後ろから日本語で話しかけられてびっくり. 道中全然アジア人見かけなかったのに. なにやらMünchen住まいで, こちらの旦那さんとバカンスでScuolに泊まっているのだそうだ. 私は週末だけなんですよ, 今晩夜行で帰るんですよ, などとどうでもいい話をしているうちに, あっという間に駅に到着. よい休暇を!
さて, 私はここで列車に乗り換えて約10分, Guardaで降りる. この町はUnterengadinの町観光ハイライトなのだそうだ. 町はFtan同様, 谷底から250m程上であり, ほとんど何もない駅前からバスで連絡する. 事前に調べた時刻表では私が乗ってきた列車に接続して出るはずだったので, 降りるとすぐに駅脇に止まっていたマイクロバスへ乗り込みチケット購入. 「あと2本接続待ちするからね」「はい…え?」なにやら微妙にフレキシブルらしい…. 更に2人ほど乗り込み, 上の町へ向かう. 目の前の急斜面を大きく回りこむように上ってゆき, 約10分で集落へ. 狭い石畳の路地を少し入ったところが終点.
[風が渡る村 : Guarda]
Guarda(グアルダ)の村をこの地方最大の観光地たらしめている理由は, その建物の壁に描かれた絵画にある. スグラフィッティ, というらしいその絵画の技法はこの地方特有のもので, ぐるっと一周した村内の建物にはあちこち見受けられる. しかし絵画を差し置いても, Ftanと対照的な古い石造りの家が石畳の狭い路地の両側に並ぶ集落が, 谷へ落ち込む岩壁の縁にへばりつくように立てられている様は, ちょっと哀愁の漂う雰囲気とあいまって時の流れを実感させる. ちょうど午後遅く, 西日が差し込む時間だったのも良かったのかもしれないが, 裏の草原をなびかせる風が, 町の路地からふと見上げた青空と流れる雲が, それぞれ少しずつ味わい深い, 黄昏た雰囲気が漂う村だ. 村の中の時間が止まっている, という表現より, 周りの時間の流れにここだけ取り残された, というちょっと物悲しさが似合う雰囲気といったらいいだろうか. 村の西外れからは谷下のLavinの町が望めるが, やはりこの村の雰囲気はこの村だけのものかなという感じだ.
村自体は超鈍足で一周しても1時間かからないので, 後はしばし, 村の中心のレストランの前のテラスでビールを飲みながらぼーっと休憩. 近年はすっかり有名になり, Vereina Tunnelでアクセスも便利になったせいか, 観光客もそれなりに増え, 嬉しそうにアイスをなめながら歩く家族連れが私と同じ様な印象を持ったかどうかは定かではないが, 一人少ししんみりした雰囲気で村を後にした.
[やっぱりハイジ? : Guarda → Sargans]
帰りはGuardaの村から急な斜面に付けられた歩行者道を一気に歩いて駅まで降りてくる. 集落は少し下り出すとすぐに岩壁の陰に隠れ, 見えなくなる. 反対に下にちらちら見える線路があっという間に近づいて, 大回りしてきた車道とぶつかると, 間もなく駅に到着.
ここからはScuol-TaraspとLandquartを結ぶ快速列車に乗る. Lavinの町のすぐ西から伸びる, Vereina Tunnel(フェライナトンネル)を潜ると, Davos, Chur, Bad Ragazなどの保養地が広がる谷間だ. この辺りからMaienfeldにかけての斜面は, 昨年のスイス旅行の際は朝に逆向きに通ったが, 本当に緑がまぶしい. 似たような風景はチロルにもあるはずなのだが, なんかやはりここは雰囲気がハイジなのである. 何故だろう. Landquartで乗り換えてSargansへ.
SargansはRhein川沿いにBodenseeのRorschach方面へ行く列車と, 北西へZürich方面へ向かう列車の分岐点だ. 通過駅, 乗り換え駅として以外, 特に観光で寄る町ではないようだが, 乗り換えに時間があるので少し歩いてみた. 両路線が分かれる又の中央に聳えるGonzenの岩壁をバックに, 小さな旧市街がある. 駅から少し北へ歩くとレストランやホテルがいくつかあり, その先のLiechtenstein, Buchs, Zürich各方面への道路の交差点から旧市街へ向かう路地が延びている. 岩壁の下半分を覆う森林の手前の一段高いところにお城があり, その下を走る路地の両側が旧市街だ. といってもホテルがちょっと, と市役所があり, 一番奥に教会と広場があって終わり. 実にこじんまりしたところだが, その回りには普通の新市街が広がっており, 場所柄栄えてはいるようだし, 観光よりは産業の町なのかもしれない. 日が沈んで暗くなり始めた中を駅へ戻り, 夜行列車に乗って, オーストリアへの帰路へついた.

現地の行程

7/03 Nauders Feuerwehr dep 08:43 Post Bus
(Bus4220)
8.0Euro
Scuol-Tarasp Staziun arr 09:25?
Scuol Talstation dep 09:40
ロープウェイ
16.0CHF
Motta Naluns arr 09:50
dep 09:55 徒歩 --
Chna. da Naluns via 10:25
Alp crünas arr 10:55
dep 11:00
Alp Laret arr 11:55
dep 12:05
Ftan arr 13:20
Ftan散策, 昼食
Ftan dep 15:15 Post Bus
222
3.8CHF
Scuol-Tarasp Staziun arr 15:26
dep 15:34 RB1949 --
Guarda(CH) arr 15:46
dep 16:11 Post Bus
19
2.8CHF
Guarda Post arr 16:19
Guarda散策
Guarda cumün dep 18:30 徒歩 --
Guarda(CH) arr 18:45
dep 18:55(10分延発) RE1264 --
Landquart arr 20:10
dep 20:23 IR794
Sargans arr 20:37

参考


Mittel Europa Platzトップへ