ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : Part 15 - 1

スキーのメッカは夏ハイキングもOK、サンクト・アントン(オーストリア)

2004年7月31-8月1日(土,日)

[行程プラン : チロルへ!]
ともかくオーストリアに住んでいるからには一度はちゃんとチロルへハイキングに行かねばと思っていた. 候補はÖtztalかSt. Antonかいずれかを考えていたが, Innsbruck観光も兼ねることにしたため, 鉄道沿線でアクセスの簡単, 一日で回れそうなSt. Antonに決定. 冬スキーの中心地であるため, 夏は宿泊が安いというのも理由の一つ.

中欧全体地図
マップ

[ → St.Anton : また満員]
夜行列車はぎっしりであった. 座席車でぎっしりはなかなか寝るのはつらいのだが, 今回は輪をかけて, 隣に座った中国人のおば様がよく通る声で電話しまくること. 3分携帯に触ってないと禁断症状が起きるのか, て感じで仕舞ってすぐ取り出し毎度長電話. たまらん! かろうじて2時間くらいうとうとしてまだかすかに明るくなってきた時間にSt. Antonに到着.
[St. Anton : とりあえず便所と宿と列車]
サンクトアントン駅(St. Anton am Arlberg)で下りてまず駆け込んだのは便所. いやここの便所きれいです(苦笑). それから駅のロビーで持ってきたサンドイッチで朝食にし, さて, 外へ. さすがに6時を過ぎると外もすっかり明るくなっている. まずInformationへ行って(もちろんまだ開いていないが, 外にホテルの空き室表示板がある), 宿に空き部屋があるか確認. さすがに6時前に予約電話する訳にもいかないので, いくつか安いところで可能性があることだけ確認して確保は後回し. まずは谷間の川沿いと集落の散策に, 東に向かってしばらく歩く.
現在鉄道線路はSt. Anton am Arlberg駅部分を残して両側が完全にトンネルになっている. 町中を通っていた線路を最近付け替えたらしく, まだ新しい複線が川を挟んだ町の反対側の斜面下を数キロ先までトンネルで走っている. 騒音や町の雰囲気と安全向上だろうか? 列車はほぼ毎時両方向だが, それ以外に貨物も通る. とりあえず時間を合わせて線路際に出て, 数枚デジカメでパチリ.
[St. Jakob 〜 St. Anton : 緑がまぶしいいい天気]
谷底にある線路際から一段高い集落に上ると, そこはSt. Jakob. 可愛い教会がある. 日が昇ると青空に後ろの岩山と手前の緑の草原を背景に, 家や教会の赤屋根が映えていい感じ. 岩山の上の方に残っている残雪の白い部分が日の光を反射して輝いているのもうれしい. しばし道路脇で鑑賞. 土曜の朝ということもあり, ずいぶんと静かだ. ここからSt. Anton方向へ集落と草原の間を抜けてのんびり戻る. 通り沿いのPensionを見ていると結構休業中も多く, さすがスキーのメッカ, 冬期専業の人もいるんだなあと.
[St. Anton : 早めの宿ゲット]
一通りぐるっと回ると10時位になったので, 宿を取りに行く. サンクトアントン(St. Anton)の町は店は中心のメインストリート沿いに並ぶ程度のかわいらしいものだが, ホテルやペンションは結構あちこち散らばっており, しかも川沿いからすぐ斜面のため, 道路ごとに標高が違ったりして上り下りがあり, 荷物付で歩くのは存外面倒. とはいえ例によって電話は大嫌いなので, 近場だけピックアップし, 直接歩いて3軒チェックした後, 一番よさげな所の受付へ. …まだ朝食時間だったらしい(苦笑). 受付で一晩一人分部屋ありますか? と聞くと, 30Euroで朝飯シャワー便所つきシングルがあるという. 部屋を見せてもらうと…ベランダ付でした. いやあ, 今まで自腹で泊まった宿でベランダなんて付いてた事ないよ.(笑) 建物の前は自動車通行可の道路だが, 町外れを抜ける車道や対岸のAutobahnのトンネルを通過する車がほとんどなので, しばし見ていた限り通行は少ない感じで, まあ問題ないかなと, そんな感じでそのままOK. まさか10時から部屋入れると思っていなかったので内心大喜び.
[St. Anton : ハイキングへれっつごー]
リュックから衣類などを出して荷物を軽くすると, 早速ハイキングへ. この町は裏山がそのままスキー場というお手軽なところだ. そこから3本乗り継いでVallugaという岩山のてっぺんまでいけるロープウェイがあり, 地図を見る限り麓から2度目の中間駅の間は手ごろなハイキングコースらしい. まず雲の沸かない内に一度Vallugaの頂上まで上がって展望を楽しみ, 一緒にコースの様子を見て, 1つか2つ戻ってハイキングすることにする.
さて, スキーリゾートとしてはオフシーズンとはいえ, 20分に一本の一本目ロープウェイ(Galzig Bahn)は存外賑やか. 出発直前に乗り込んだこともあり窓際には寄れず, 人々の間から景色を覗くのみ. それでも比較的緩やかな斜面を登っていくにつれ, 周囲の山並みがどんどん見えてきてなかなか素晴らしい景色だ. 特に南側に聳える3000m峰, (パッテリオル)Patteriol山の岩塊が異彩を放っている. 余談だが, オーストリアの3000m峰は多くがイタリア国境沿いとHohetauernにあり, 列車から間近に見えるのはそれほど多くない. そんな風景に見とれているうちにあっという間に中間駅のGalzig Bergstationに到着.
[Valluga]
Galzigからはすぐの接続で第2中間駅へ上がるロープウェイが出る. 半分以上の人はこので駅で下りてしまうようで, こちらはぐっと空いた. ここで既に森林限界の上のため, ここからは草原と岩砂利の上を進んでゆく. 下に見えるハイキングコースは前半はよく整備されたお手ごろなルートだったが, 岩峰を一つ越えるとその裏は雪の斜面! 第二中間駅へのハイキングコースはこの雪の上らしい…. ちょっと無理だなあ(しょぼん). 間もなく第二中間駅(Vallugagrat)へ到着.
ここからVallugagipfel(頂上)へは6人乗りの小型ロープウェイで2分ちょい. 上がってきた約15人全員は一度に乗れないので, ピストン輸送で先に並んだ人たちを運ぶロープウェイを2度見送ってから3度目の便で頂上へ向かう. 岩の急斜面の上にあるファルーガ(Valluga)頂上は, St. Antonの町からは手前の峰の裏になるため見えないが, ともかく360度の展望. 裏(北側)のLechtal方面や西のVorarlbergやスイスの峰まで見渡せて, これは飽きない風景だ. ただし本当に頂上駅の建物しかなく, 登山道は少々険しいので, 狭い展望台にいるしかないのが惜しいけどね. 頂上直下に登山者用に岩場にかけられた橋があって渡ってみたかったのだが, 高々15m程度がかなり急で, そこまで下りられなかった(苦笑).
[ハイキングはGalzigから]
しばし風景を堪能した後, 次の上りで上がってきた人たちと入れ替わりで下へ下りる. Vallugagipfelから隣の峰, Kapallのリフト頂上駅まで雪原を横切って歩いていく人はチラホラいてそれもいいかなあと思わなくもなかったが, やっぱり雪の下りはちょっとおっかないので断念してGalzigbergstationまで戻ることにした. Vallugagratで接続ロープウェイを待つ間, 駅舎の外で眺めていると, 家族連れで来ていたグループの子供達がウィンドブレーカーを体の下に敷いてソリみたいにして雪の斜面を一気に滑り降りて行ったのに出くわし, ちょっとたまげた. 犬連れ家族もおり, 小型犬が雪の上を嬉しそうに走り回っていた. ここは列車や店内はもちろんこういうところでも結構犬を連れて乗ってくる人がいる. もちろん躾けられていてこそであるが, 犬好きとしてはほほえましい光景で, つい笑みがこぼれる. 間もなく時間になってGalzigbergstationへ戻り, さてハイキングスタート.
[Ulmer Hütte]
最初Galzig Bergstationで下りていった人が多かったように, ここは草原の中で, ここから草原やお花畑, 森を抜けて町へハイキングして戻る人が多いようだ. ここからはSt. Antonの町も良く見える. が, 私はとりあえず行けるところまでという事で, 雪の斜面の下にあるUlmer Hütteまで上がることにした.
最初はVallugabahnのロープウェイの下をしばらく歩く. ほぼ平らな歩き易い道だ. こちらの初級ハイキングコースというのは大抵の場合, 山小屋や牧場の管理小屋などへの車両通行兼用の道なので, 車分の幅のあるしっかりした道で, 危ないところはまったくといっていいほどない. この道と平行して100m程上のGalzig山頂を回っていくコースもあったが, どうせただのスキーリフトの頂上みたいなのでパス. 20分ほど歩き, 人工湖の脇を通るとやがて道は上り坂になり, ロープウェイで越えたVallugaの前の峰を捲いていくと, まもなくUlmer Hütteが見えてくる.
Valluga
このあたり, チロル一帯は頂上より下をずうっと伸びているトレッキングコースが整備されているらしく, 結構こういった中間にきちんとした山小屋が存在する. ここからはもうVallugaの岩稜が目前であり, やはり間近にみると存在感は素晴らしい. 谷側の南側テラスも実にいい眺めで, しばしそこで休憩. ああ, 気持ちよくて眠ってしまいそう(苦笑). 回りこんだ東側では食事も出来, 何人かビールなど飲んでいたが, さすがにまだ山道を歩く時に飲みたくはない.
[Steißbach]
下りは上りと違う道を通り, まずArlberg峠へ下りる沢沿いの21番の道をしばらく下りてゆく. こちらは牛の放牧されている山道で, 車は入らない. 人工池の脇をぐるっと回り込み, 行きに通った道をそのまま交差して, 今度は反対側のSteißbachtalの谷筋(645番)を下りてゆくことにする. やはり山道側の方が若干人が少なく, のんびり歩ける. ただしこちらもまた牛が放牧中, 堂々と道路を封鎖(?)してくれていたりするので, 時々草原やお花畑の中を迂回する羽目になるが.
Steissbach
いい天気だとやはり日差しが強く, いくら標高2000m近いとはいえ森林限界の上で木陰がないとやや暑いが, そこは谷筋で小川の音を聞きながらだとやはり涼しげで少し気分がいい. 日本だと谷筋は森の中かガレ場が多いが, こちらで草原の中の牛のたたずむ谷筋を道がくねくねと伸びているのを上から見下ろした時の感触はやはりチロル独特という感じがして, 私は好きだ. 特にスイスより山の風景が若干おとなしい分か, オーストリアのそれぞれの谷はとても印象深い.
30分ほどで隣のGampenのリフトの脇に出て林道と合流し, やや退屈な道をさらに20分降りる. 今度は行きに乗ったGalzigbahnの下に出る. ここから林道をそれて再び山道をGalzigbahnのほぼ下を歩くように下りてゆく. 途中にあるMoosの集落を抜けると森の中の沢沿いに入る. ここは結構小さな滝などがあり, その脇に木段などが整備されていて見所がある. もうすぐ麓に下り切る最後にいいところがあり, いい加減足が疲れてだらけてきた所に気分がリフレッシュされてよかった. パタゴルフのゲーム場の脇を抜け, 無事町へ到着.
[晩飯]
ハイキングから17時過ぎに戻ってくると, 一度宿へ戻ってシャワーを浴び, 一休み. せっかくベランダがあるので, 一度使ってみようと(笑), 本を持って椅子に座り込んでみる. 谷を挟んだ向かい側に滝があるので存外音が大きく聞こえてくるが, 道路沿いとはいえ聞こえるのは人の声がメインでやはり車は少なく, 良かった. さすがにほとんど寝ないで来た夜行明けだけに, ちょっと疲れてうとうとしだしたが, 日が傾いてくるとあっという間に気温が下がって, ベランダで寝るのはちょいと寒い. もともとオーストリアは内陸国で平地でも朝晩は結構気温が下がるが, この涼しさはさすが標高1300mといったところか.
18時に近所の教会の鐘を聞いてごそごそ晩飯を食いに再び外出する. いくらスキーの聖地とはいえ, なにせ小さい町なので外食できるのはほとんどメインストリート沿いだけ. なんか微妙にいいのが見つからず, うろうろ3往復もした挙句ピザ屋って, せっかくのチロル観光としてはちょっとダメ過ぎかもしんない(苦笑).
こういうアウトドア系田舎町では夜遅くまでうろついていてもすることもないし, 20時前には部屋に戻り, 明日の予定をまとめてさっさと眠ることにする.
[Rosanna Schlucht : …シュルフト?]
翌朝は朝食が8時からだそうなので, その前に一歩きと, 6時に起きて散歩へ出かけることにする. リゾート地のホテルでは大抵朝食が遅いため, 朝食前に散歩する人がよくいるが, さすがに日曜の6時に出る人はあまりいないらしく, 道はまだがらんとしていた. 今日も良い天気で空気もすがすがしい. 手ぶらで気分よく出発. 行き先はRosanna Schlucht, St. Antonから南に折れ, Patteriolへと向かうVerwandeltalを流れるRosanna川がここで狭い峡谷を作っている…らしい. その入口部分約5km程が気軽な遊歩道になっており, 帰りは林道を歩いて往復約2時間弱でいけるかなと. 夏の間は毎週木曜だけ運行という, なんのための運行だかよくわからないRendlbahnの脇を抜けると, 川沿いの林道へ入ってゆく. しばらくはただの川沿いの気分良い道をさくさく歩く. ドイツ語の定義はイマイチまだ良く分からないのだが, Schluchtというからにはもっと岩の狭い割れ目みたいなぐっと狭いところを川がごうごう流れていくのを想像していたので, 肩透かし気味. 30分ほど歩くといままでほぼ平坦だった道がぐいぐい上りだし, あっという間に川音が遠くなるが, 間に森の斜面が挟まれていて, さっぱり見えない. 最後ほぼ上りきったところでようやく眼下に川が望め, 深い峡谷になっていることは分かったものの, 存外両側斜面は木々の生い茂る森で, なんか勝手にSchluchtという単語から想像していたものからは外されてしまった(苦笑). 変な期待しなければ歩きやすい静かなハイキング道なのだけどね(苦笑).
やがてずっと斜面の上を走っていた林道に出ると, そちらを引き返す. この林道はほぼ平坦で, 最後にArlberg峠へ上ってゆく自動車道に当たって終る. 道路の反対側の集落の間の道を下ってゆくとSt. Antonへ戻れる. こう見ると結構峠への途中上のほうまで集落が伸びているんだなあ. ゼラニウムなどで飾られた通り沿いの民家や宿などは朝日には実に良く映えるのでやはり気分がいい.
[朝飯]
部屋から朝食へ下りていくと, 食べていたのは2グループ. 彼らとは反対側にとりあえずオレンジジュースを持っていって, その後パンを物色していたら, 出てきたオーナーのおじさんが, こちらへどうぞと, 夫婦の座っていた席の隣の二人掛けテーブルに案内してくれた. …どうやら席は決まっていたらしい. 例によってまた半熟卵を頼んでしまい, 食べるのに四苦八苦. これはどうも毎度なかなかうまくいかないんだよねえ. ジャム&パンにコーヒー, チーズ&ハムにシリアル用のフルーツだけ頂いて, この国にしては十分な朝食だった.
[移動]
朝食後さくさく準備をしてチェックアウト. 昨年のLienzもそうだったが, 飛び入りで泊まる小さい町の小さい宿は安くて対応も部屋もいいので結構印象がいい. こちらもまた泊まりたいくらい. 午前中の列車でInnsbruckに移動するのがもったいないくらい(笑). とはいってもInnsbruckの予定を考えるとそうのんびりもしていられないので早々出発.
Bregenzから来た列車はコンパートメントは存外人がたくさん乗っていて, ボックス席でようやくフルに空きを見つけて収まる. 今まで夜行でしか通っていなかったSt.Anton-Innsbruck間の車窓の風景は谷底の川と緑の草原と岩山と青空の対比がきれいで, なかなか素敵だった. 列車が遅れてMittenwaldから下りてくるはずの列車と時間がずれてしまい, 崖上を走る列車が見えなかったのは残念だったが.

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現地の行程

7/31(土) St. Anton am Arlberg Bahnhof arr 5:18 --
集落散歩St.Anton,St.Jakob等/部屋確保
Galzigbahn Talstation dep 10:30 Galzigbahn 19Euro
Galzigbahn Bergstation arr 10:38
dep 10:45 Vallugabahn I
Vallugagrat arr 10:53
dep 11:04 Vallugabahn II
Vallugagipfel arr 11:07
Valluga頂上
Vallugagipfel dep 11:30 Vallugabahn II
Vallugagrat arr 11:34
dep 12:10 Vallugabahn I
Galzig Bergstation arr 12:18
dep 12:40 (徒歩) --
Ulmer Hütte arr 13:55
dep 14:30
Steißbachtal via 15:00
Moos via 16:02
St. Anton arr 16:40
(夕食,泊)
8/01(日) Rosanna Schlucht散策 dep 6:20 (徒歩) --
arr 7:30
(朝食,チェックアウト)
St. Anton am Arlberg Bahnhof dep 10:08 ÖEC669 --
Innsbruck Hauptbahnhof arr 11:18

参考


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