ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : Part 30-2

そこはかとなくスイス的な谷間、フォーアールベルク(オーストリア)

(フェルトキルヒ, ブレゲンツの森, モンタフォン)

2005年6月11,12日(土,日)

オーストリア全体地図
周辺マップ

その1 : リヒテンシュタインへ

6月11日

[到着 : Feldkirch]
リヒテンシュタインSchaanからのバスは国境を越えると, 地元客を続々と乗せて市街へ向かう. 中心街一つ前のLandesgerichtでその地元客の1/3くらいと一緒に下車. Wasserturmを見ながらIll川沿いに少し歩き, 橋を渡ってFeldkirch(フェルトキルヒ)中心街へ. 適当に正面にあったショッピングモールを潜ると, 出たのはMarktplatz. 土曜の昼前ということで, 通りには市場の店が並び, 随分賑やかだ. 建物の雰囲気がオーストリア他所と比べるとちょっと違うかも. とりあえずInformationへ向かうとまだ開いているようなので中へ入り, 町の地図を貰う. Informationの前にはKatzenturm(猫の塔)が建つが, その後ろがマクドというのがちょっとズッコケだ. どうもあまり時間がないので町のシンボル, Schattenburgのお城をはじめとするFeldkirch観光はさっさと諦め, 軽く市街を一周して市役所の壁画などを眺めた後, パン屋で昼飯にバゲットサンドを買い, ホテルへ向かうバスを待つ間にぽりぽり. 安い昼飯だ. でも食わないよりいいだろ. ちょうどFeldkirchで音楽祭が開かれていたのと関係あるのかないのか, 中心部のホテルはネット予約で取れなかったので, 北側の旧市街(Altenstadt)に取ったのであった.
[ホテルはホテル : Altenstadt]
Feldkirchの北端付近にあるホテルへは, バス停から5分ほど閑静な緑溢れる住宅地を歩いてゆく. 先に観光して回ったいかにも旧市街なところはZentrum, 中心街で, こちらがAltenstadt, つまり旧市街, なのだが, 実際は…? なんか割と普通. ホテルに到着し, ふと見ると駐車場に大型バスが. ああ, やっぱり郊外泊まりの団体用ホテルだったか. ロビーへ入ると, 左側の大きな食堂ではまさに団体さんがわいわい昼食の真っ最中であった…. 愛想だけは良かった受付では, なかなか予約が見つからなかったり, 部屋の準備ができていないから15分待ってといわれて30分待たされたりイマイチだったが, 部屋は上の階の一番奥, 道路とは反対側, 幸い団体さんの部屋からも離れていたようで静かだった. 広い部屋にまずまずの景色ともども一安心.
[午後はハイキング : Feldkirch → Bregenzerwald]
荷物を置くと再びさっさと外へ. バスで再度Feldkirchの駅へ戻り, 今度はBregenzerwaldへ向かう. Bregenzerwaldというのは別にBregenz郊外だけではなく, 地理的にはライン川沿い低地の東側, Klostertalの北側の, Arlbergの山並までの広大な地域を呼ぶようだ. 観光の中心はもちろんBregenzへと流れ出るBregenzerach川の谷沿いだが.
Bregenzerwaldへの入口となるDornbirnへは列車で向かう. ちょうどタイミングよくウィーンからの優等列車が盛大に遅れて到着したので, それに乗り込む. 州内乗り放題チケットで国をまるまる横切る特急に乗れてしまうところがやっぱりオーストリア.
Vorarlberg最大の町Dornbirn(ドーンビルン)は駅前のロータリーがバスターミナルになっていて, まず乗り場を探す. ここからBregenzerwaldへ入るバスは2系統あるが, 先に来るのは峠を越えていくSchwarzenbergへの直通バス, Linie 38だ. バスの出発時刻になり, 到着したバスへ向かうと, 団体さんの中年グループがぞろぞろ. ほとんどぴったり座席が埋まるほど乗り込んで出発.
バスは旧市街の脇を通り, Bödeleの峠へ一気に上ってゆく. 坂を上るにつれて北西のBoden湖が見え出す. 2年前のLindau行以来だから2年ぶりか. あの頃はLindauの周囲の地形とか, Vorarlbergなんてろくに知らなかったな. 峠で団体さんはぞろぞろ降りてゆき, 残り2割程度の乗客とともに今度は一気に坂を下りると, 終点Schwarzenbergだ.
[森は森でも : Schwarzenberg]
さて, Bregenzerwald, ブレゲンツの森という名前がついているが, 実際には谷間は別にうっそうとした森でもなんでもなく, やはり牧草地や農地である. この辺りは山の上でも標高が低いから頂上まで森林限界の下, ということはあるけれど, それは東オーストリアThermenlandや, ウィーンの森だって一緒だ. ここがローカルの保養地として以上に有名なのは, 多分にチーズ街道その他, イメージ宣伝戦略の賜物かもしれない.
とはいえ, 別に見るべきものがないという訳ではない. その一つがこの地方独特の家の作り.
Haus im Bregenzerwald
ヨーロッパとしては珍しく木造で, 木のタイルを貼り付けたような独特なスタイルは, あまり他所ではお目にかからないのでちょっとマジマジと見つめてしまったりして. おそらく朝霧などで薄っすらと霞んだ中で見ると, きっと少し幻想的な素晴らしい眺めなのではないかな, と少し想像を働かせてみたりする. Schwarzenberg(シュヴァルツェンベルク)はこの地方の中心とはいっても所詮小さな村なので, 集落を回るだけならいくらもかからない.
[ここもSL : Bregenzerwaldbahn]
Bregenzerwaldへやってきたもう一つの目的は, 谷を走るSLを見るためだ. Bregenzerwaldbahn, 760mm狭軌路線であるこの通称Wälderbähnle(ヴェルダーベーンレ)は, もともとBregenzと谷奥のBezauを結ぶ路線であったが, 度重なる自然災害に見舞われ, 1980年の災害においてついに復旧を断念し, 現在はその最奥部分だけ観光路線になっている. Bregenzerachの谷筋から外れているSchwarzenbergへは線路は来ていないので, バスで2km弱ほど移動し, Bregenzerachの谷筋, Bersbuchへ出る. ここが観光列車の下流側終点駅で, でも駅名はSchwarzenbergだったりする.
さて, ここからほぼ線路に沿った道をしばらく上流に歩こうかと思ったのだが, 思いのほか自動車がビュンビュン走りぬけ, 歩道はなく, 谷沿いに他にハイキングコースはない. 仕方なくあっさり断念して, 列車の時間まで谷でのんびりすることにする. ロッククライミングの練習らしい団体が取り付いている岩場を横目で見ながら谷へ降りていくと, 河原へ出られる. 釣り客など先客が何人かいたが, 邪魔にならないようにしばし休憩+うろうろ. やはり水はきれい. まもなくSLの警笛が谷間に響き渡り始めたので慌てて線路際へ戻る. 河原から線路が見えないかなあという期待をちょっとしていたのだが, 川岸はぎっしり木立で, とても無理であった. 例によってのんびり走ってくるSLの写真を撮っていると, 客が喜んで手を振ってくれる. 少し場所を変え, 列車が引き返してくるのを待ってもう一度撮影. この時はなんともう一組撮影にやってきた夫婦がいてちょっとびっくりした. しかし今回もまた撮影だけで, 乗車はなし. そりゃ途中で走っているところを撮ろうと思うと, 公共交通機関か徒歩の移動しか出来ない上にタイトな日程を組む私には乗れる訳がないのだが, そのうちオーストリアのSL保存団体にまとめて寄付でもしないと申し訳ない気がしてきた(苦笑).
[少し歩こう : Bersbuch → Schwarzenberg]
Bersbuchからバスに乗って帰ってもいいのだが, まだ時間はあるし, 少しくらい歩かないともったいないので, 帰りはSchwarzenbergまで歩くことにした. もちろん車道を歩いてもしかたないので, 少し遠回りしてハイキング路を歩く. 川沿いから離れ, 森の中の斜面を上ると牧草地に出て, 途中の農家の犬に吠え掛かられたりしながら約30分で到着. さすがに途中誰一人歩いていなかった. メジャー観光地のメジャールート以外はだいたいこんなもんだ.
Schwarzenbergで夕食を食べて帰ることも考えたが, 朝夕賄い付ホテルの多い保養地だけに, 夕食だけ, という雰囲気はあまりなく, そのままバスと列車でFeldkirchへ戻り, こちらで夕食に. 市街のホテルのテラスで食べたのだが, これまた愛想はいいものの, やけに待たされまくり, 勘定をお願いしてから払うまで実に30分. 結局催促したが, 忘れてたのだろうか? はあ. さすがに夜行到着だからボチボチお疲れ. 22時過ぎてようやく暗くなった中を再びバスでホテルへ戻り, 明日の予定を確認してあとはさっさとおやすみなさい.

6月12日

[天気が…]
朝起きると外はどんより, 支度をしているとぽつぽつ. 参ったなあ. 今日は山なのに. モンタフォンなのに. 金曜の天気予報では土,日とも夕立の心配あり, 程度で, むしろ土曜の方が危なそうだったのに. それでもまもなく回復, という予報を頼りに, ぽつぽつと小降りの雨の中, 例の大きなレストランで朝食を済ませ, 速攻チェックアウト.
[とりあえず列車 : Altenstadt → Schruns]
今日はFeldkirchまではバスではなく, Feldkirch Altenstadtから一駅だけ列車を使う. 昨日も使ったLiechtensteinを通る路線だ. 日曜はこの路線, 一日3往復しかない. 駅は当然無人駅, 時刻表が貼ってあるだけの停車場で切符売り場はなし, やってきた列車はワンマンで車掌無し, 運転室はきちっと閉じられていて, 運転手からは買えず, 車内の自販機は故障中で購入不可. …ただ乗りしろってことか. ついでにいうと乗客もゼロだった. おお, 貸し切り列車(あまり笑えない).
当然ながらFeldkirch駅でチケットを購入して乗り換え列車を待つ. 次の列車は私鉄のMontafonerbahnへ直通の快速列車だ, …って, 来たのは普通のCity Shuttleだった. BludenzからÖBBの本線を離れ, 列車は更に南下してゆく. 工場脇, 谷沿い, 林の中, 牧草地の中と順に抜け, 10分ほど遅れたまま約20分で終点Schrunsに到着. かろうじて雨は止んでいた.
[ちょっと寂しげ : Schruns]
ガラガラであったこの列車に乗っていた何人かの客はそのまま接続するMontafonの谷奥へ向かうバスへ飛び乗っていったが, 私はそのまま歩いてSchruns(シュルンス)の町中へ向かう. 日曜の朝ということで, まだ通りはがらがらだ. 夏休みはまだ先だから観光客も少なく, しかもこのどんよりとした天気で心持ち寂しい雰囲気. とはいえ別に町のたたずまいそのものが寂れている訳ではなく, Silbertalから流れ出る川沿いの町は, こじんまりしているが, それなりにおしゃれ. 多分晴天の真夏に来ればのんびりした雰囲気の溢れる明るい田舎の観光村なんだろうなという感じ. 幸い雲は高めで, 「Montafon谷の門番」Zimbaの稜線や「Schrunsの裏山」Hochjochなど(いずれも勝手に命名)頂上まで良く見える.
[雨の坂道 : Schruns → Latschau]
さて, 一応このあとHochjochのロープウェイで上へ上がろうと思っていたのだが, よく見るとこのロープウェイに接続してさらに上のSennigradへ上がるリフトの運行が来週からであった. という訳であっさり予定変更し, 西側のGolmerbahnへ向かう. まずSchrunsから川沿いに少し歩き, Tschagguns(チャグンス)へ出る. ここからは先ほど列車で通過してきた牧草地が広がり, Zimbaの稜線が良く見える. 惜しいなあこの天気は. 標高700mのTschaggunsから標高1000mのLatschauまで上がるバスの時刻表を見ると…行ったばかりだ. という訳で歩いてしまえ. しばらく車道を上っていくと…再び雨がぽつぽつ. 最悪…. Tschaggunsの町を抜けると両側は牧草地帯になり振り返ると下にTschaggunsとSchrunsの町が見える. 半分ほど上ると斜面が急になり, 車道は蛇行しながら上っていくので, 歩行者はそのまま草地をまっすぐ突っ切る. 雨でなければなあ…. 約45分で坂を上り切り, ロープウェイの麓駅Latschauへ到着.
[氷河湖…というのか? : Latschau → Golmeralm]
Latschauにはダム湖と水力発電所があり, ロープウェイの駅まではこれをぐるっと回ってゆく. ここの水は見事な乳灰色, いわゆる氷河色なのだが, いかんせん完全護岸の柵付人工湖だ. 微妙に趣不足(苦笑). 湖の北側が斜面になっていて, モンタフォン谷の出口方面がよく見える他, 下からも良く見えたZimbaの稜線が少し近くなった. ロープウェイ駅に着くまでにかろうじて雨があがり, ちらちらと青空が覗いたのでそのままロープウェイで上ることに決定.
ここは現在テレキャビンで, 6人乗りゴンドラでのんびり上がって行く. 中間駅があり乗り降りが出来るが, 通しで乗る場合も乗り換えは必要なく, そのまま座っていればいい. 冬はスキーゲレンデとなるが, さすがに2000mより下はもう雪はなく, 真中をくねくねと作業用車道が走っているのが見える. これを歩いて上り下りも出来, 若干人の姿も見えるが今日は時間がない. 20分弱かかって頂上駅, Golmer Almに到着.
[曇天のスイス国境稜線 : Golmerjoch]
頂上駅を出るとまず目の前に飛び込んでくるのが, Sulzfluhの岩壁と稜線.
Sulzfluh aus Golmeralm
雪交じりの稜線はオーストリアというよりスイス寄りの雰囲気といった感じだが, それは当たり前, 裏はスイスだ(苦笑). 眼下のMontafonの谷の奥には更に, Silvretta Gruppeの雪の残る3000m級山並が覗く. 今度はあっちも行きたいな. そして上ってきた後ろを振り返ると, Silbertalの奥に, Arlbergの山々が連なる. ダイナミックな稜線が続くこの周囲の景色の素晴らしさは, 日本ではあまり知名度が高くないが, 結構有名で国外の客は多いらしい. スイスよりはよほど物価も安いし(苦笑).
さて, 帰りの列車の時間から逆算して2時間強ほど時間があるので, 正面のGolmerjochへ向かう. 一応正面奥に頂上の十字架が覗いており, そこへ至る道は大丈夫そうだ. 正面の, Golmer Hohenwegと名づけられた良く整備された, しかしちょっと急な坂道を上ってゆく. 左手に谷を挟んでずっとSulzfluhの岩壁が見えているのが嬉しい. 半分程度上ると再び右側にZimbaの稜線が, これも谷を挟みぐんと迫って来て素晴らしい. 30分もかからず, 2124mのGolmerjoch頂上に到着. 時々霧雲が通過していくので景色が遮られるのが惜しいが, 360度の展望である. …あ〜しかし肝心なのが見えない. Montafonertalを囲む山稜のシンボルの一つであり, Sulzfluhから続く国境稜線にある, Drei Türmeの三連岩峰を見たかったのに, 2800mの岩峰は雲に覆われたまま. それでもなんとか一番左の尖塔は見え, 真中の岩壁も時々薄くなったガスの間から顔を覗かせたものの, ついに右端の岩壁は見えず. 悔しい! 20分ほど粘ったが, いつまでも頂上にいる訳にもいかないので, 同じ道を引き返す. あと一時間余裕があるので, 頂上駅脇のGasthofで昼食にする. さすがにテラスで食事は寒いので, 客はみな室内であった. しかしオフシーズンで客が少ないから, 席の一部を閉鎖するのは分からなくもないが, 何故それが一番見晴らしの良い窓際なんだ?
[一歩遅いよ曇り後晴 : Tshcagguns → Bludenz]
帰りはバスの時間に会わせて再びテレキャビンで下山. 間もなく来たバスをTschagguns で下り, 更に少し時間があるので隣駅のKaltenbrunnenまで一駅区間だけ線路際の草原脇を歩く. この辺りからようやくだいぶ日が覗き出した. まもなく来た列車に乗り, 案外満員でほとんど座席の埋まった列車で車掌さんから切符を買ってなんか随分久々の立ち席乗車のままBludenzに来る頃にはもうすっかり晴れ渡っていた. うー, もう2時間早く晴れて欲しかった, と思いつつ, そのまま帰路についたのであった.

なかなか来る機会のないVorarlbergはもちろん東オーストリアとは全然違うし, チロルともまた違う, 独特の雰囲気に触れられて楽しかったのだが, やはり日曜の天気がちょっと惜しかったな.


現地の行程

6/11 Feldkirch Landesgericht arr 11:18 LBA Bus 70 (12.5Euro)
Feldkirch散策, ホテルチェックイン
Feldkirch dep 12:40(50分延発) ÖEC462 (12.5Euro
Vorarlberg一日券)
Dornbirn arr 13:00(50分遅延)
dep 14:10 Bus 38
Schwarzenberg Dorfplatz arr 14:37
Schwarzenberg散策
Schwarzenberg Dorfplatz dep 15:09 Bus 40 (12.5Euro)
Bersbuch Gh. Ritter arr 15:12
Bregenzerach谷筋散策,Bregenzerwald鉄道見学
Bersbuch Gh. Ritter dep 17:00 徒歩 --
Schwarzenberg arr 17:30
dep 17:48 Bus 38 (12.5Euro)
Dornbirn arr 18:20
dep 18:33 R5657 (12.5Euro)
Feldkirch arr 19:02
夕食,宿泊
6/12 Feldkirch Altenstadt dep 08:09 R5707 4.0Euro
Feldkirch arr 08:13
dep 08:33 E1667
Schruns arr 09:02
Schruns, Tschagguns 散策
Tschagguns dep 10:10 徒歩 --
Latschau arr 10:55
dep 11:15 ロープウェイ
Golmerbahn
11.20Euro
(往復)
Golmeralm arr 11:32
dep 11:35 徒歩 --
Golmerjoch arr 12:01
dep 12:25
Golmeralm arr 12:55
dep 13:45 ロープウェイ
Golmerbahn
(11.20Euro)
Latshcau Golmerbahn
(Talstation)
arr 14:02
dep 14:15 市バス 1 1.2Euro
Tschagguns Gemeindeamt arr 14:24
dep 14:24 徒歩 --
Kaltenbrunnen arr 15:02
dep 15:09 MBS
R8942
1.6Euro
Bludenz arr 15:25
dep 15:35 ÖEC161 --

参考


Mittel Europa Platzトップへ