ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : Part5

霧にかすむ晩秋のヴァッハウ(オーストリア)

2003年11月30日

[行程プラン : 思いつき]
11月は他の旅行を考えていたのだが, 天気が悪かったのと少々忙しくて休めなかったのとで結局出かけられず, 最後に思いつきでハイキングに出かけたというのが実態. とりあえずガイドブックはぱらぱらと調べたものの, かなりいい加減で列車の時間だけ注意しての出発でした.

Wachauはこの後2004年5月に職場旅行で行った番外編があります.

中欧地図
行程マップ

[Wien Westbhf → Melk : 天気, ダメじゃん!]
朝起きると星が見えていた. 昨日は雨時々曇で断念しただけに, ああ今日は大丈夫かなとほっとしながらいそいそと夜も全く明けないうちから駅へと向かったのだが…. いざ日が昇ってみると全然ダメ. ウィーンへ出る直前で再びどんより曇り空に. WestbahnhofからMelk間は緩やかな丘陵地帯を抜けていくが, 草原や樹木の霜が融けるとともに辺り一帯霧で真っ白けに. もう少し日が昇れば気温が上がって消えるのではないかと, 淡い期待をしてみたが, この季節の日差しは弱いし, そもそも上空を流れる雲がもう少し減らないと地上付近の霧には十分日差しが届かない. うーん. 割とお天気運はよいのだが, どうやら今回は外してしまったようだ. 残念.
[Melk : まっしろしろ]
Melk(メルク)に到着しても辺りは真っ白け. 駅を下りて北側に降りていくと正面にメルク修道院(Stift Melk)が聳えているはずなのだが, 全く見えない. ちょうど10時前ということで礼拝の鐘の音が目の前からガンガン聞こえるのに…. この修道院は東西320mの長さ, 尖塔は65mの高さを誇る馬鹿でかいものなのだが, これが見えないとはかなりの霧だ. で, 直下までたどり着いてようやく見えたのがこれ. 丘の下から塔の上がほとんど見えないということは視界100mくらいか. とほほ. せっかくの威容もこれでは全然様にならない, というか幽霊が出そうな雰囲気か(苦笑). 日曜の10時ということで礼拝時間. ルネッサンス期の結構立派な内部らしいが, ここはガイド見学だけということもあり, さすがにこの時間は当然見学もなにもないのでそのまま横を素通り.
[Melk → Emmersdorf : やっぱり真っ白]
修道院の裏をぐるっと廻るとそこはもうドナウ川(の入江)の川岸. 岸沿いをしばらく歩いていくと, やがてMelkの船着場に到着する. ここは「ドナウ一の風景」を誇るWachau(ヴァッハウ)を通るドナウ川汽船のスタート地点だが, 現在は完全にシーズンオフでがらんとしている. 困ったのは便所も開いてなかったこと. とりあえず次まで我慢…. そのまま通りを進んでいく. 白く濃い霧の中, 川沿いに並ぶ枯れ木の間を進んでいくのは, これが静寂な小道とかなら思索にふけりつつ幽玄な雰囲気に浸れるのかもしれないが, あいにくとここは車道脇の歩道だ. 交通量は多くはないものの, それでも1分も空けずに次の車が来る程度には走っている. これではあまり落ち着いて思索にふける雰囲気にはならない.
Melk修道院から20分ほど進むとやがてドナウ川を渡る橋に到着. なにせこの両側50km近く橋がない. よっぽど往来がないのか, みな船なのか. せっかく橋上に上ってもやはり霧は濃く, 反対岸も見えない有様. せっかく真ん中からドナウ全景! とか写真とろうかと思っていたのだがこれではまさに真っ白けしか写らない. しかたなくとぼとぼ橋を渡り終え, 左へ坂を上っていくとすぐにEmmersdorf an der Donauの駅に到着する.
[Emmersdorf → Dürnstein : 少しマシ ]
Emmersdorf(エマースドルフ)には列車の5分前に到着. さあ便所…と思ったが, 建物はどこも開いていない. ここも切符発売のない準無人駅. 使えん! 仕方なく張り紙を眺めながらボケーっと待っていると, 線路の反対側にいたおじいさんが「ハロー!!」と呼びかけている. ふっと振り向くとこちらに向かってバスが来ているよとジェスチャーで教えてくれていた. どうもありがとう. どうやらまた運休, 代行バスらしい. バスには客は誰も乗っておらず, 運転手が行き先だけ聞いて, 料金はいいよいいよといいつつただで乗せてくれた. 途中で一人乗ったがやはり料金は払っていないようだった. これでこちら, ヨーロッパへ来て3度目の代行バスだが, そういえば代行バスでチケットチェックされたことないな. お詫び込みで無料ってことか?
バスが出発して間もなく, ぱっと数分の間だけ日が差し込み, その間に川岸に濃く垂れ込めていた霧が一気に晴れ上がった. これでバス道路沿いを流れるドナウ川が見渡せるようになる. ん, 思ったより狭かった(苦笑). お陰で対岸のAggsteinの古い城跡もくっきり見えた. やっぱり水辺ってことなのか, この辺りはオーストリアとしてはかなり古い建築物(跡)が多いらしい. 日本語では一般的にヴァッハウ渓谷というようだが, 実際は渓谷といってもなだらかな丘の合間を縫って流れているだけってレベルだけど.
ようやくの眺めを楽しんでいる間にほとんど列車の予定と変わらずDürnsteinに到着. 下り際に運転手が次のバスの時間を教えてくれたが(これも代行なのか?), あいにくKremsまでは歩く予定なのでした(苦笑).
[Dürnstein → Loiben : 冬枯れ葡萄園]
この辺りはWachauワインの産地の中心地, ということで, 周りは葡萄畑だらけ. 平らなところはもちろん, 両側の山の斜面まで段々に葡萄畑が連なる. もちろん今年の収穫はとっくに終わっているので葉を落とした木が並んでいるだけだが, 場所によっては虫食いなどで使えない葡萄を取っていない場所も有り, かすかに葡萄のにおいが漂っていた. ウィーンのホイリゲで出てくるのは別として, オーストリアのワインというと, このWachauか南シュタイヤマルクらしいので(ほんとか?), 可能なら直売で買って帰ろうかと思ったのだけど, この辺りは日曜はほんとに休みらしく, 売ってますと書いてある看板があちこち出ているものの, 門や扉はぴっちりと閉まっている. 諦めた.

このDürnstein(デュルンシュタイン)ではまずPfarrkircheというブルーの教会の塔が目を引く. ドナウ随一といわれるバロック様式の塔だそうだ. とはいえ, やっぱり後ろが白く立ち込める雲だとイマイチ映えない. やっぱり青空か緑の山並みでないと厳しいようだ. 残念. もう一つ, 川側から見るとその後ろの頂の上に, 廃墟らしい(?)姿で城跡が残っている. 十字軍時代にイギリスのリチャード獅子心王がオーストリアのレオポルド公を侮辱して後に捕らえられ, 閉じ込められたのだとか. 30分くらいで上れるらしく, 眺めもいいそうなので上ってみようかとも思ったのだが, 道を間違えて途中まで違う道を上り, 途中で戻ってきたらもう登る気は失せていた. 水面付近の霧はだいぶ飛んだとはいえ, 山の上の雲や高い霧は依然残ったままだったしね. このあたりは川沿いと市内を一周するように遊歩道があり, 親子連れやカップルなどがぱらぱらとのんびりと歩いていた. シーズンオフでもちろんガラガラではあるのだが(やっとこ我慢してたどり着いた便所がまたもや閉まっていて困った!), こういうゆったり散策を楽しんでいる人とかいると, なんかあまりせかせか歩いているとちょっとはずかしくなりますね.
[Loiben → Krems : 晩秋の川岸 ]
Dürnsteinの東, Loiben(ロイベン)から川岸に出ると, ここからKremsまでは5kmほどずっと川岸を遊歩道が続いている. WachauもLoibenまで来ると対岸側の山並みが遠のいてぐっと川幅が広がり, 流れもゆったりとして, 大河の雰囲気が濃くなる. Kremsとの市境を越えるまではしばらく自動車道路沿いなので少々車がうるさくて忙しないが川の方だけむいていればのどかな散策が楽しめる. 当然シーズンオフということで, Kremsまでの間にすれ違った人は3人だけ. どんより立ち込めた雲と, 対岸に並ぶすっかり葉の落ちた冬の木々をぽーっと見つつ落ち葉を踏んづけて歩くのは, それはそれで悪くない. がっ! Melkでもいけず, Emmersdorfでも行けず, Dürnsteinでも行けなかった便所がそろそろ厳しくなり, 何度立小便をしようと思ったことか! でもそれなりに車の通る車道からまるまる見えるんだよねえ. そりゃ出来んわ…. 堪えながら歩く寂れた歩道はちょっと苦しかった….
[Krems an der Donau : ワインの十字路? ]
ここKrems(クレムス)はWachauの終点に当たる. この辺りもワインの産地で, ヴァッハウワインとは別に, クレムスワインと呼ぶらしい. 小さな町ではあるが, 1000年来の商業と船の街だそうだ. ワインもだが, この辺りは杏が名産らしい. ウィーン近郊の2階建て快速列車WIESEL(=車体にいたちの絵が描いてある)もここまで入る.
大規模改修中の駅でようやっと用を足してすっきりしてから, 次の列車まで1時間半ほど市内散策に出かける. 中央の目抜き通りは日曜で店が閉まっているのにも関わらず結構な人で賑わっており, ウィンドウショッピングしながら開いている喫茶店やレストラン, 露店などで適当に食事をしているようだ. 寿司屋が通りの一番外れにあったが, 漢字ばかりのところを見るとやっぱり中国人経営かな? かなり古そうな建物と石畳の市街で, 歴史のある雰囲気を漂わせている. しかしあまりに人が多くてなんとなくカメラを出しそびれてしまった. もったいなかったな.
本当に駆け足, ヨーロッパの田舎のせいなのか, ドナウのゆったりした流れのせいなのか, 日曜日のせいもあったのか, 今回通った町の人々はみんなゆったりとした雰囲気で, いくらシーズンオフで観光客用の夏限定ショップなどもすべてしまっていて寂しいとはいえ, もう少しのんびりしたかったのだが, あいにく冬至前ともなると日没は16時. 日暮は早く, 名残惜しい中まだ日差しが残る間にとドナウ平原を一路ウィーンへと向かったのであった.

番外編(ヴァッハウ、アゲイン!, 2004年5月)へ.


現地の行程

11/30 Wien Westbahnhof dep 08:38 ÖBB-E1804 6.50Euro
(12.90Euro)
Melk arr 09:45
ハイキング Melk〜Melk修道院〜Donau Brücke〜Emmersdorf駅
Emmersdorf an der Donau dep 10:51 代行バス
Bundes Bus
無料
(4.5Euro)
Dürnstein arr 11:32
ハイキング Dürnstein散策〜Loiben〜Krems
Krems arr 13:30 徒歩 ---
Krems市街散策(昼食)
Krems an der Donau dep 15:01 ÖBB-E1675 6.20Euro
(11.20Euro)
Heiligenstadt arr 15:55

参考