通関業法
1目的・定義
1通関業法の目的(通関業法1条)
・この法律は、通関業を営む者について、その業務の規制、通関士の設置等、必要な事項を定め、その業務の適正な運営を図ることにより、関税の申告納付、その他貨物の通関に関する手続の適正かつ迅速な実施を確保することを目的とする。
2通関士制度の趣旨
☆通関士制度の趣旨について説明して下さい。
1わが国の貿易取引が拡大し、通関手続が増大したことにより、関税の確定につき申告納付方式が採用されるに至った。そこで通関業法は、新たに通関士制度を創設し、通関業者に対して通関業務を行う営業所ごとに通関士を設置することを義務付け、通関士に通関書類を審査、記名押印させることにより、通関手続の適正化を図ろうとしているのである。
2つまり、通関士制度の趣旨は、関税の申告納付、その他貨物の通関に関する手続の適正かつ迅速な実施を確保することにある。
3通関業務の定義
☆通関業法第2条(定義)に規定する通関業務について説明して下さい。
・通関業務とは、他人の依頼によってする次に掲げる事務をいう(通関業法2条1号)。
1次に掲げる手続又は行為につき、その依頼をした者の代理又は代行をすること。
1関税法その他関税に関する法令に基づき税関官署に対してする次に掲げる申告又は承認の申請からそれぞれの許可又は承認を得るまでの手続(通関手続)。
*関税の確定及び納付に関する手続を含む。
*貨物を保税地域に入れ、又は保税地域から出すことの届出を除く。
1輸出又は輸入の申告(積戻しの申告を含む)
2本邦と外国との間を往来する船舶又は航空機への船用品又は機用品の積み込みの申告
3・保税蔵置場、保税工場、若しくは総合保税地域に外国貨物を置くこと、
・保税工場において外国貨物を関税法56条1項に規定する保税作業に使用すること、若しくは
・総合保税地域において62条の8第1項2号若しくは3号に掲げる行為をすることの承認の申請、
・又は保税展示場に入れる外国貨物の係る62条の3第1項の申告
2関税法、その他関税に関する法令によってされた処分につき、行政不服審査法又は関税法の規定に基づいて税関長又は大蔵大臣に対してする不服申立て
3通関手続、不服申立て、又は関税法その他関税に関する法令の規定に基づく税関官署の調査、検査若しくは処分につき、税関官署に対してする主張又は陳述
2関税法、その他関税に関する法令又は行政不服審査法の規定に基づき税関官署又は大蔵大臣に対して提出する通関手続又は不服申立てに係る申告書、申請書、不服申立書、その他これらに準ずる書類(通関書類)の作成
2通関業の許可
1通関業の許可
☆次の事項について説明して下さい。
1通関業法第3条(通関業の許可)に規定する許可権者
2通関業法第4条(許可の申請)に規定する通関業許可申請書に記載すべき事項
3通関業法第5条(許可の基準)に規定する許可の基準
1通関業の許可(通関業法3条)
・通関業を営もうとする者は、その業に従事しようとする地を管轄する税関長の許可を受けなければならない。
・税関長は前項の許可に条件を付することができる(地域限定、貨物限定、許可期限)。
・前項の条件は、この法律の目的を達成するために必要な最小限度のものでなければならない。
・税関長は第1項の許可をしたときは、遅滞なく、その旨を公告するとともに、許可を受けた者に許可証を交付する。
・第1項の規定は、弁護士法第3条第1項の規定により弁護士が行う職務については適用しない。
2許可の申請(通関業法4条)
・通関業の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した許可申請書を税関長に提出しなければならない。
1氏名、又は名称、及び住所、並びに法人にあってはその役員の氏名及び住所
2通関業務を行おうとする営業所の名称、及び所在地
3前号の営業所ごとの責任者の氏名、及び13条の規定により置こうとする通関士の数
4通関業務を行おうとする地域、及びその通関業務に係る取扱貨物が一定の種類のもののみに限られる場合には、当該貨物の種類
5通関業以外の事業を営んでいるときは、その事業の種類
・前項の許可申請書には、申請者の資産の状況を示す書面、その他大蔵省令で定める書面を添付しなければならない。
3許可の基準(通関業法5条)
・税関長は、通関業の許可をしようとするときは、次の基準に適合するかどうかを審査しなければならない
1許可申請に係る通関業の経営の基礎が確実であること
2許可申請者が、その人的構成に照らして、その行おうとする通関業務を適正に遂行することができる能力を有し、かつ十分な社会的信用を有すること
3許可申請に係る通関業の開始が、その営まれる地域における通関業務の量、及び通関業者の数に照らして必要かつ適当なものであること
4許可申請に係る通関業を営む営業所につき、13条1項(通関士の設置義務)の要件を備えることとなっていること
4欠格事由(通関業法6条)
絶対 | 1禁治産者、準禁治産者 2破産者であって復権を得ない者 |
3年 | 1禁錮以上の刑に処せられた者 2関税に関する一定の罪、国税・地方税のほ脱罪等により 罰金刑に処せられた者、通告処分を受けた者 3通関業法違反により、罰金刑に処せられた者 |
2年 | 1通関業の許可を取り消された者、通関業に従事することを 禁止された者 2公務員で懲戒免職の処分を受けた者 |
*法人で役員に欠格事由に該当する者がいる場合
2許可の消滅・取消
☆通関業の許可の消滅事由と許可の取消事由、及びその手続について説明して下さい。
1許可の消滅(通関業法10条)
・通関業者が次の各号の1に該当するときは、当該通関業の許可は消滅する。
1通関業を廃止したとき
2死亡し、又は法人が解散したとき
3破産の宣告を受けたとき
・税関長は、通関業の許可が消滅したときは、遅滞なくその旨を公告しなければならない。
・第1項の規定により通関業の許可が消滅した場合において現に進行中の通関手続があるときは、当該手続については、当該許可を受けていた者が引き続き当該許可を受けているものとみなす。
2許可の取消(通関業法11条)
・税関長は、通関業者が次の各号の1に該当するときは、その許可かを取り消すことができる。
1偽りその他不正の手段により通関業の許可を受けたことが判明したとき
2第6条第1号、第3号から第5号まで、又は第8号の1に該当するに至ったとき
・税関長は、前項の規定により通関業の許可の取消をしようとするときは、あらかじめその者にその旨を通知して相当の期間内に自ら又はその代理人を通じて弁明する機会を与えるとともに、第39条第1項の審査委員の意見を聞かなければならない。
・通知→弁明する機会→審査委員の意見→取消→再許可は2年経過後となる(欠格事由)。
3関連業務等
1関連業務(通関業法7条)
・通関業者は、通関業務のほか、その関連業務として通関業者の名称を用いて、他人の依頼に応じ、通関業務に先行し、後続し、その他当該業務に関連する業務を行うことができる。ただし、他の法律において、その業務を行うことが制限されている事項については、この限りではない。
2営業所の新設
1営業所の新設(通関業法8条)
・通関業者は、その通関業の許可に係る税関の管轄区域内において、通関業務を行う営業所を新たに設けようとするときは、政令で定めるところにより、その営業所の所在地を管轄する税関長の許可を受けなければならない。
・第3条第2項から第4項まで及び第5条第2号から第4号までの規定は、前項の許可について準用する。
2営業所新設許可の申請(令1条)
1許可申請書の記載事項
1営業所の名称及び所在地
2営業所の責任者の氏名、及び13条の規定により置こうとする通関士の数
3通関業務を行おうとする地域及びその通関業務に係る取扱貨物が一定の種類のもののみに限られる場合には、当該貨物の種類
2添付書類
・前項の許可申請書には、許可を受けようとする営業所において通関業務に従事させようとする者の氏名その通関業務の用に供される資産の明細、並びに当該営業所において行われる見込みの通関業務の量、及びその算出の基礎を記載した書面、その他参考となるべき書面を添付しなければならない。
3営業区域の制限
☆通関業法第9条(営業区域の制限)の規定に関し、次の事項について説明して下さい。
1通関業者が通関業を営むことができる区域
2上記1の区域外において通関業務を行うことができる場合及びその手続
1原則(通関業法9条)
・通関業者は、通関業の許可に係る税関の管轄区域内においてのみ、通関業を営むことができる。
・地域限定の条件が付されている場合は、当該限定された地域内においてのみ業務を行うことができる。
2例外
・ただし、同一人から依頼を受けた通関業務、その他税関官署に対する手続で相互に関連するものについては、政令で定めるところにより、当該許可に係る税関の管轄区域外においても、当該手続に係る通関業務を行うことができる。
3手続(令2条)
1通関書類に業法9条但し書きの規定に該当する旨を付記するか、
2通関業務を行う際に、口頭で税関官署に対して業法9条但し書きに該当する旨を申し出る。
*関連業務については、営業区域の制限はない。
4通関業者の権利・義務
1変更等の届出(通関業法12条)
・通関業者が、次の各号の1に該当することとなった場合には、その者は遅滞なく、その旨を税関長に届け出なければならない。
1許可の申請事項の変更(4条1項)
1氏名又は名称及び住所、並びに法人にあってはその役員の氏名及び住所
2通関業務を行おうとする営業所の名称、及び所在地
3前号の営業所ごとの責任者の氏名及び13条の規定により置こうとする通関士の数
4通関業以外の事業を営んでいるときは、その事業の種類
2欠格事由の該当(6条)
1禁治産者、準禁治産者
2禁錮以上の刑に処せられた者
3関税に関する一定の罪、国税、地方税のほ脱罪等により罰金刑に処せられた者、通告処分を受けた者
4通関業法違反により、罰金刑に処せられた者
*法人で役員に欠格事由に該当する者がいる場合
3許可の消滅(10条1項)
1通関業を廃止したとき
→通関業者であった個人、又は法人を代表する役員が届出
2死亡し、又は法人が解散したとき
→相続人が届出
→通関業者であった法人を代表する役員、清算人が届出
3破産の宣告を受けたとき
→破産管財人が届出
2通関業法上の義務
☆通関業法第2章第2節及び第3章第2節の規定により、通関業者及び通関士に課されている義務(又は禁止行為)に関し、次の事項について説明して下さい。
1通関業者及び通関士の双方に課されている義務(又は禁止行為)を3つあげ、それぞれの内容
2上記1の他に通関業者がその業務に関して課されている義務を2つあげ、それぞれの内容
通関業者 |
通関士 |
従業者 |
1秘密を守る義務 (19条) |
1秘密を守る義務 (19条) |
1秘密を守る義務 (19条) |
2名義貸しの禁止 (17条) |
2名義貸しの禁止 (33条) |
|
3信用失墜行為の禁止 (20条) |
3信用失墜行為の禁止 (20条) |
|
4通関士の設置義務 (13条1項) |
||
5通関士に通関書類を 審査等させる義務 (14条) |
||
6料金掲示等の義務 (18条1項) |
||
7記帳、届出、報告等 の義務(22条) |
1通関業者と通関士に共通の義務
1秘密を守る義務(通関業法19条)
・通関業者及び通関士、その他の通関業務の従業者は正当な理由がなくして、通関業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならない。これらの者が、これらの者でなくなった後も同様とする。
2名義貸しの禁止(通関業法17条、33条)
・通関業者、通関士は、その名義を他人に通関業のため使用させてはならない。
3信用失墜行為の禁止(通関業法20条)
・通関業者及び通関士は、通関業者又は通関士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
2通関業者のみに課されている義務
1通関士の設置義務(通関業法13条1項)
1原則
・通関業者は、その通関業務を行う営業所ごとに専任の通関士を1名以上置かなければならない。
2専任の通関士の設置不要の場合(令4条1項)
・営業所における通関業務の量からみて専任の通関士を置く必要がないものとして、税関長の承認を受けた場合には、専任であることを要しない。
・通関士が欠けた場合は、2月以内に補充する。
3例外
1その営業所で取り扱う通関業務が通関士設置義務地域以外の地域でのみ行われるとき
2その営業所で取り扱う通関業務が通関業の許可の条件として一定の種類の貨物のみに限られているとき
*例外の場合でも任意に通関士を設置しうる(2項)。
2通関士に通関書類を審査等させる義務(14条)
・通関業者は、他人の依頼に応じて税関官署に提出する通関書類のうち政令で定めるものについては、通関士にその内容を審査させ、かつ、これに記名押印させなければならない。
1 2条1号イ(1)(一)(二)(三)の申告書、申請書
1輸出入申告書
2船(機)用品積込承認申告書
3蔵入承認申請書
4移入承認申請書
5総保入承認申請書
6保税展示場に入れる外国貨物に係る申告書(仮通関申告書)
2 2条1号イ(2)の不服申立書
1不服申立書(異議申立書、審査請求書)
3関税法施行令4条の2第1項、4条の3第1項
1修正申告書
2更正請求書(令6条)
*押印等の効力は、処分の効力に影響を及ぼさない(21条)。
3料金掲示等の義務(通関業法18条1項)
・通関業者は、通関業務(関連業務を含む)の料金の額を営業所において依頼者の見やすいように掲示しなければならない。
・大蔵大臣は、前項の料金の額について必要な定めをすることができるものとし、この定めがされたときは通関業者はこれに反して料金を受けてはならない(2項)。
4記帳、届出、報告等の義務(通関業法22条)
1記帳の義務(1項)
・通関業者は、政令で定めるところにより、通関業務に関して、帳簿を設け、その収入に関する事項を記載するとともに、その取扱いに係る通関業務に関する書類を一定期間保存しなければならない。
・営業所ごとに、取り扱った通関業務の種類に応じ取り扱った件数、受ける料金を記載する(令8条1項)
・帳簿、書類の閉鎖の日又は作成の日後3年間保存。
・保存義務ある書類(令8条2項)
2届出の義務(2項)
・通関業者は、政令で定めるところにより、通関士その他の通関業務の従事者の氏名、及び異動を税関長に届け出なければならない。
3報告の義務(3項)
・通関業者は、政令で定めるところにより、その取扱いに係る通関業務件数、これらについて受けた料金の額、その他通関業務に係る事項を記載した報告書を毎年一回、税関長に提出しなければならない
・毎年4月1日から翌年3月31日までの間に終了する通関業者の事業年度ごとに報告する(令10条1項)
・翌年6月30日までに報告書を提出する。
・法人である通関業者が提出する報告書には、報告期間に係る事業年度の貸借対照表、及び損益計算
書を添付しなければならない(令10条2項)。
3通関業者の権利
☆通関業法第15条及び第16条に規定する通関業者の権利について説明して下さい。
1更正に関する意見の聴取(通関業法15条)
・通関業者が他人の依頼に応じて税関官署に対してした納税の申告について、関税法7条の4第1項又は第3項の規定による更正をすべき場合において、当該更正が当該申告に係る貨物の関税率表の適用上の所属又は課税価格の相違、その他関税に関する法令の適用上の解釈の相違に基因して、納付すべき関税の額を増加するものであるときは、税関長は、当該通関業者に対し、当該相違に関し、意見を述べる機会を与えなければならない。(更正に関し意見を述べる権利)ただし、当該関税の額の増加が計算又は転記の誤り、その他これに類する客観的に明らかな誤りに基因するものである場合は、この限りでない。
2検査の通知(通関業法16条)
・税関長は、通関業者の行う通関手続に関し税関職員に関税法67条の検査、その他これに準ずる関税に関する法律の規定に基づく検査で、政令で定めるものをさせるときは、当該通関業者又はその従業者の立会いを求めるため、その旨を当該通関業者に通知しなければならない。 (税関検査に立会う権利)
*1,2の権利の保障を欠くことがあっても、処分の効力に影響を及ぼさない(21条)。
4通関業者に対する監督処分
☆通関業者に対する監督処分に関して次の各事項について説明して下さい。
1処分の種類
2処分事由
3処分を行う場合の手続
1監督処分(通関業法34条)
1処分の種類
1戒告
2 1年以内の期間を定めて通関業務の全部若しくは一部の停止
3許可の取消
2処分事由
1通関業者が、この法律、この法律に基づく命令、若しくは第3条第2項の規定により許可に付された条件又は関税法、その他関税に関する法令の規定に違反したとき。
2通関業者の役員、その他通関業務に従事する者につき、この法律、この法律に基づく命令、若しくは関税法、その他関税に関する法令の規定に違反する行為があった場合において、その通関業者の責めに帰すべき事由があるとき。
3処分の手続(通関業法37条)
・通知→弁明する機会の付与→審査委員の意見→処分の通知→処分の公告
2調査の申出(通関業法36条)
5通関士
1通関士に対する懲戒処分
☆通関士に対する懲戒処分に関して、次の各事項について説明して下さい。
1処分の種類
2処分事由
3処分を行う場合の手続
1懲戒処分(通関業法35条)
1処分の種類
1戒告
2 1年以内の期間を定めてその者が通関業務に従事することの停止
3 2年間その者が通関業務に従事することの禁止
2処分事由
・通関士がこの法律又は関税法、その他関税に関する法令の規定に違反したとき。
3処分の手続(通関業法37条)
・通知→弁明する機会の付与→通関業者の意見→処分の通知→処分の公告
2調査の申出(通関業法36条)
2通関士の資格
☆通関業者が従業者を通関士として通関業務に従事させる場合の手続及び通関士の資格の喪失について述べて下さい。
1通関士の確認(通関業法31条1項)
・通関業者は、通関士試験に合格した者を通関士という名称を用いてその通関業務に従事させようとするときは、その者の氏名、通関業務に従事させようとする営業所の名称、その他政令で定める事項を税関長に届け出て、その者が次項の規定に該当しないことの確認を受けなければならない。
2確認拒否事由(2項)
6条1号から7号までの1に該当する者 | |
2年 | 関税に関する一定の罪(輸入禁制品の輸入など)に該当する違反行為があった者 |
他 | 1監督処分としての通関業務の停止処分を受けた者 2懲戒処分としての通関業務に従事することの停止された者 |
3資格の喪失事由(通関業法32条)
・通関士は、次の各号の1に該当するときは、通関士でなくなるものとする。
1前条第1項の確認を受けた通関業者の通関業務に従事しないこととなったとき。
2第6条第1号から第7号までの1に該当するに至ったとき。
3第29条第1項の規定により通関士試験の合格の決定が取り消されたとき。
4偽りその他不正の手段により前条第1項の確認をうけたことが判明したとき。