藤田さんはまずドライバーを手にとると「ゼクシオのヘッドは6−4チタンです。」聞いて驚いた方もいるかもしれません。21世紀のクラブを標榜するわりにはレトロな(?)素材ですよね。「新素材××チタン」とか聞くとなにか今以上の性能のクラブと思いこんでしまうものですが、大事なのは基本設計。素材がボールを飛ばすわけではありません。ゼクシオがそれを証明していますね。コスト的にも安くできるのではないでしょうか。7万5千円という値ごろ感のある定価も鋳造ならでは?
鋳造でヘッドを作る一番のメリットは均一性の高さ。フェース、クラウン、ソール、ネックを個々に鍛造して溶接していく鍛造チタンはどうしても製品にばらつきが出る。現在は溶接技術の進歩でそれほどまではないのかもしれませんが「鍛造チタンのヘッドに2つとして同じものはない」などと言われていました。「はずれ」のヘッドをつかまされることがないのはありがたいですね。
「ゼクシオは音がいい」とはよく聞く話です。これもまた鋳造ヘッドのメリットのひとつ。カン高い金属音は鋳造ならでは。ゼクシオはさらに高音域へ音をチューニングしているそうです。ボールもそうですが、ゼクシオは音にこだわたモデルと言えるかもしれません。
物には固有振動数というものがあり、振動数の違うものが衝突した場合エネルギーの伝達効率が悪くなるとか。通常クラブはボールに比べその値は大きくなっています。「ボールは柔らかくフェースは硬いわけですね。IP(インピーダンス)フェースとは簡単に言えばフェースを柔らかくしているのです。」と藤田さん。これはダンロップ独自の考え方ですね。
鋳造のゼクシオのフェース厚は3ミリ。ライバルメーカーのモデルに比べ厚い。しかしフェース周辺にぐるりと2.2ミリの肉薄部分を作ってフェースを「柔らかく」している。これがIPフェース。
eliotはこれはスプリング効果を狙ったものかと思っていましたが、「これはいわゆるスプリング効果とは違うものです。」と藤田さん。スプリング効果についてはUSGAのやっているような規制方法にはたして飛距離を抑制する意味があるのかわからないともいわれています。この問題については現在はメーカーも規制する側も混乱期にあるのかもしれません。
ロフト角/° 8 9 10 11 12 フェース角/° +2.0 +2.5 +3.5 +4.0 +4.0 重心深度/ミリ 36.0 36.5 38.0 38.0 38.0 SS高/ミリ 30.0 30.0 31.0 31.5 32.0 重心距離/ミリ 33.5 33.5 33.0 32.0 31.5
ロフトバリエーションの多さ、これはすなわち対象とする人間、ユーザーが多いということ。ゼクシオは上記のものの他に7度のへッドもある。プロ、上級者、とかスライスしか打てない初心者、とかににユーザーを限定したものはどんなにいいものでも、なかなか「ベストセラー」にはなりにくい。ゼクシオはどんな人でも使える設定になっています。ハイブリッドのときからそうでしたが、主力商品にこれだけのバリエーションを揃えているのはダンロップだけでしょう。
しかもヘッドはロフトごとに個別設計。8度と12度ではまったく別のヘッドだと言ってもいいでしょう。こういうようなヘッドのバリエーションなら「ロフトで選ぶ」という他に「重心位置で選ぶ」という選択方法もあるのではないでしょうか。
「昔は、まず10度のマスターを作って、ロフトを減らして9度、増やして11度と言うような作り方をしていましたが、今はCADの技術が発達していますのでコンピュタ−の中でどんな性能のヘッドになるか判るのです。」と藤田さん。
この写真はダンロップの設計部の極秘写真(笑)。
ヘッドの設計も外部のデザイナーに発注するのではなく自社で行なっています。
ダンロップは「ゴルフ科学研究所」も持っていて開発レベルはかなりのものだと言えるでしょう。
極端なフックフェースのクラブはどんなに機能が素晴らしくても使う気になれないものです。ゼクシオがベストセラーになった理由のひとつには見た目がいいということがあるでしょう。
大形ヘッドはどうしても右へ飛びやすいためフェースを左に向けて設計されるものですが、ゼクシオはポッと置いた時にほぼストレートに見えるフェースアングル。このあたりはまさに設計の妙ですね。
フェースを左に向けずにボールを捕まえるには?1ライ角を立ててやる、2重心距離を短くする、3重心アングルを大きくする、といった方法があると思いますが、ゼクシオはそのバランスがいいのでしょう。
ロフト別にその数値はすべて変えて設計されているヘッド。33ミリ(10°ロフト)という重心距離はかなり短かめ。