ばーくらいとさんちのお花見   半蔵さん


>花見に行こうよ!
アミィ「ええと・・食費はこれくらいかかるよね、あとは・・・」
テーブルに向かって今月の生活費を計算するアミィ
アミィ「ふぅ、これならなんとか赤字にならなくてすむかな。」
アミィはパタンと家計簿をとじる。そこへ・・・
アーチェ「たっだいま〜♪あ!アミィちゃん、ちょっと聞いてよ〜」
アミィ「却下。」
アーチェ「まだ何も言ってないじゃん!」
アミィ「アーチェさんの言い出すことなんて、どうせまたロクでもないことに決まってます。」
アーチェ「ぐ・・。で、でも今回はそんなことないからさ!お願い〜聞いてぇ〜 」
そう言うとアミィの前に身を乗り出してくる。
アミィ「わ、わかりましたから、そんなに近づかないでください。それでいったい何ですか?」
アーチェ「よくぞ、聞いてくれました!」
アミィ「別に聞きたくないですけど。」
アーチェ「まあまあまあ・・・。あのね、さっきまでお空のお散歩しててさ、たまにはちょっと遠くまで〜ということでユークリッドの方まで行ってみたんだけどちょうど時期的に見ごろなのよ!」
アミィ「・・・・。」
アーチェ「あれ?『え?何が見ごろなんですか?アミィ、とっても気になるぅ〜』とか聞いてくんないの?」
アミィ「ヘンな物まねしないでください。・・・で、何が見ごろなんですか?」
アーチェ「うふふ♪桜よ、さ・く・ら。ユークリッド公園の桜、ちょうど満開で見ごろなのよ♪だから明日さ、」
アミィ「不許可。」
アーチェ「早っ!重要なところまだ言ってないって!!」
アミィ「言わなくてもわかります。要するにアーチェさんはお花見に行きたい訳ですよね。」
アーチェ「さすがはアミィちゃん!その通り!!」
アミィ「絶っっっ対、ダメ!!!!!」
アーチェ「なんで〜?いいじゃん、とっても綺麗だよ、満開の桜。うっ・・・」
ゴゴゴゴゴ・・・
アーチェはふとアミィから放たれる怒りのオーラを感じ取った。
アミィ「なんで?ですか・・・。」
バンッ!!!
アミィはテーブルの上の家計簿を叩く!!!
アミィ「ウチはいつでも生活費がギリギリなんです!桜を見に行ったら、食べ物や飲み物その他諸々に一体いくらかかってしまうと思ってるんですか!!!」
アーチェ「ううっ・・・そう言われると居候の身としては返す言葉がないけど・・・
でもさ〜、行けば絶対見に来て良かったと思うはずだよ〜」
アミィ「ダメです。野に咲くタンポポで我慢してください。」
アーチェ「ああ・・・タンポポも綺麗だよねぇ〜・・・でもさ、でもさ〜」
そこへ・・・
バタン
チェスター「ただいま〜。お、二人ともいたのか。」
アミィ「お帰りなさい、お兄ちゃん♪」
アーチェ「あ、おかえり、チェスター。」
チェスター「お!そうそう、さっきユークリッドからの行商人から話を聞いたんだけどよ。
あっちじゃ桜が満開らしいじゃねえか。明日は休みで狩りもねえし、どうだ?みんなで見に行かないか?」
アミィ「わ〜い、賛成!!」
アーチェ「なっ!?アミィちゃん、さっき言ってたのと違・・」
アミィ「アーチェさん?(にっこり)」
アーチェ「え?」
アミィ「うっかりアーチェさんの分だけお弁当作り忘れた、なんてことになったらイヤ、ですよね〜?」
アーチェ「うっ、そ、それは;;」
アミィ「うふふ♪」
チェスター「・・・・ア、アミィ?」


その夜・・・
アミィ「ふぅ・・・」
家計簿眺めながら生活費のやりくりに四苦八苦するアミィちゃんでした。


>場所取り激戦区
翌日〜
チェスター「着いたぜ!」
アーチェ「着いたね〜♪」
アミィ「わぁ・・・」
ユークリッドの桜の名所。ユークリッド公園。
何万本も植えられた桜の木々はまさに今が満開である。
アミィ「す、すごいね!お兄ちゃん!!」
チェスターの腕を引っ張りながら感激のアミィちゃん
チェスター「そうか、まだお前は小さかったからあんまり憶えてないか。」
アミィ「え?なんのこと?」
チェスター「昔、家族で来たことあるんだぜ。親父とお袋と俺とお前でさ。
お前はまだ2歳かそこらだったからな。憶えてないのも仕方ないな。
それにしても・・・あれから何年も経ったけどここは変わんねえよな・・・」
桜を眺めつつ、ちょっと想い出に浸るチェスター
アミィ「お兄ちゃん・・・」
アーチェ「100年前と比べると随分変わったけどね。」
アミィ「さ、そんなのは放っておいて、早く行こ!お兄ちゃん♪」
チェスター「お、おぅ・・・」
アーチェ「無視っ!?」

ガヤガヤガヤ・・・
桜の名所で今日は休日なだけに人、人、人の大賑わい。
チェスター「予想していたとはいえ、混んでやがんな・・・」
アミィ「座れるスペースないね、どうしよう・・・」
ポンポン☆
アミィの肩を叩くアーチェ
アーチェ「アーチェさんに任せなさい。」
アミィ「どうにかできるんですか?」
アーチェ「伊達にハーフエルフはやってないのよ〜」
クルッと指を回すと、アーチェの手にマナが収束してくる。
紅の瞳は更に赤みを増し、いつものおちゃらけた表情が消える・・・
アーチェ「ロックマウンテン♪」
キュピン☆
花見客「あれ?なんか急に暗くなった?」
アーチェ「そこ、危ないよ〜!」
花見客「へ?」
頭上を見上げると上空から大岩が・・・
花見客「のわーーーー!!!?」
避ける花見客!!
ズドーーーン!!!
花見客「・・・・・」
アーチェ「はいはい、どいてどいて〜」
凍りつく花見客の間を通り、落ちてきた大岩の前に立つアーチェ。
アーチェ「ファイアーボール。」
ドカン☆
大岩木っ端微塵。
そして大岩が消えたあとには、座れるだけの充分なスペースが空いていたのであった・・・
アーチェ「場所空いたよ、二人ともおいで〜・・・って!!!」

アミィ「はい、お兄ちゃん、お弁当♪」
チェスター「お、おぅ・・・」
アーチェ「ちょ、ちょっとーー!!!なんで既にシート広げて座ってるのよーー!!!」
アミィ「隣のおじさんが、少し場所を詰めてくれたんですよ。ありがと、おじさん♪」
隣のおじさん「どうも。」
アーチェ「うぅ〜;;アタシの苦労ってば一体・・・」
アミィ「ていうか、アーチェさん・・・野蛮。」
アーチェ「ぐ・・・;;」
チェスター「と、とりあえず場所は取れたんだからよ、座ろうぜ、な?アーチェ。」
アーチェ「うん・・・。でもさ、三人で座るにはちょっと狭くない?この敷物。 」
チェスター「確かに・・・そうだな。」
アミィ「大丈夫。そう思ってアーチェさん用の敷物持ってきたの。はいコレ。」
アーチェ「・・・これ、新聞紙?」


>桜色
新聞紙を敷いてアミィちゃんお手製おにぎりをほおばるアーチェさん・・・
アーチェ「なんか虚しい・・・」
チェスター「何か言ったか?アーチェ」
アーチェ「う、ううん;;別に何でもないってば。」
チェスター「それにしてもよ、アーチェはまさに春って感じだよな。」
アーチェ「何それ?」
チェスター「今までこんなこと考えたことなかったけど、お前の髪の色、桜の花と同じ色だなってな。」
アーチェ「そ、そうかなー?アタシの髪はもうちょっと濃いピンク色だと思うよ。」
チェスター「そ、そうか?」
アーチェ「でも、そう言われて悪い気はしないね♪アタシ、この髪の色気に入ってるし、桜の花も好きだかんね。」
チェスター「俺も好きだぜ、桜・・・」
アーチェ「え・・・?(桜が好きってことは、同じ髪の色のアタシのことも・・・)」
アミィ「深読みしすぎです。」
アーチェ「うっ・・・」


>アミィちゃんの主張
アーチェ「は〜い♪宴もたけなわになってまいりました〜☆」
アミィ「なんですか?アーチェさん、いきなり立ち上がって。」
アーチェ「ふふん〜そろそろアレの時間だと思って♪」
アミィ「アレ・・・?」
アーチェはゴソゴソと何やらバッグの中を探り出す・・・
アーチェ「あった♪これよ!!」
じゃーーーん!!!
アミィ「お酒?なんでそんなもの?」
アーチェ「アミィちゃんにはまだわかんないかな〜?桜を見ながら飲むお酒は格別なのよ♪」
アミィ「む・・・。いいです、まだわかんなくても。私たちはお茶でも飲んでますから。ね?お兄ちゃん。」
チェスター「おいアーチェ、それ、もしかして・・・」
アーチェ「さすがはチェスター・・・気がついたようね!」
チェスター「一年でごくわずかにしか生産されていないという幻のじゃぽん酒・・・」
アーチェ「そう『銘酒・ゆぐどら汁』よっ!!手に入れるの大変だったんだから。」
チェスター「でかしたっアーチェ!!」
アミィ「え?お兄ちゃん・・・飲むの?」
チェスター「あ・・・いや・・・そのちょっとだけだから、な?アミィ。」
アミィ「・・・じゃあ私も飲む。」
アーチェ「え?」
チェスター「お前はまだ子供なんだから、やめとけって。」
アミィ「やだ!私だってお酒くらいのめるもん!!」
チェスター「あのな、アミィ・・・」
アーチェ「まあまあいいじゃん☆こういう場なんだしさ、一口、二口くらいなら大丈夫だって。」
アミィ「一口、二口じゃなくてたくさん飲めます!」
アーチェ「はいはい、でも、まずはこれだけ飲めたらね。」
そういうとアーチェはお猪口をアミィに手渡す。
アーチェ「それじゃ注ぐよ。」
トクトクトク・・・
アミィの持つお猪口になみなみ注がれたお酒。
アミィ「・・・・。」
チェスター「おい、アミィ。無理に飲まなくてもいいんだぞ。」
アミィ「無理じゃない!」
ゴックン!!
一口でアミィは飲み干した。
アミィ「ぷひゃ〜☆」
チェスター「だ、大丈夫か!アミィ!?」
アーチェ「お〜、やるもんだね、アミィちゃん。」
アミィ「このくりゃい、なんてことはないですよぉ〜、さあもう一杯!」
チェスター「それくらいで満足だろ?もうやめとけって。」
アミィ「大丈夫らもん。たかが『ゆぐどら汁』の一杯やにひゃい、ヒック☆」
アミィちゃんの目がとろ〜んとしてくる。
チェスター「おい、アミィ!」
アーチェ「アミィちゃん!?」
アミィ「・・・・にゃー!」
そのまま寝てしまうかと思ったアミィだったが、不意に立ち上がった。
チェスター「どうしたアミィ、気分悪いのか?」
アーチェ「無理なら、寝てた方がいいと思うよ・・・」
アミィ「二人とも、そこに座りなさい。」
チェスター&アーチェ『・・・・は?』
アミィ「早く座りなさい!!!」
チェスター「は、はい!」
アーチェ「なんなのよ?一体!!?」
既に座っていたチェスターとアーチェだったが、よくわからないアミィのプレッシャーにより、正座に体勢を変えて座りなおす。
アミィ「いいですか?私は〜お兄ちゃんが大好きです!生活はいつも大変だけど、お兄ちゃんはそれよりもっと大変な思いをして私を守ってきてくれました〜。お兄ちゃん、本当にありがとー。」
アミィはペコリと頭を下げる。
チェスター「よ、よせよ、アミィ;;」
アミィ「だから私は〜、お兄ちゃんには誰よりも幸せになってもらいたいのでーす! しかーし!!」
アミィはアーチェを指差す!!
アミィ「こんなののどこがいいんですかー!!」
アーチェ「こ、こんなの!?」
アミィ「アーチェさんは・・・いっつも遊んでばかっりで、ふらふらしてて〜、ちゃらんぽらんで・・・
だから、だから私・・・お兄ちゃんへの気持ちも遊びなんじゃないかって・・・
本気じゃないんじゃないかって・・・
そんなんじゃ、そんなんじゃ、お兄ちゃん幸せになれませんっ!!」
アーチェ「そ、そんなことないよ!!」
アミィ「・・・・何がですか?」
アーチェ「その・・・気持ち、ふざけてたりなんかしないから!!」
チェスター「アーチェ・・・」
アミィ「それじゃアーチェさん、私が10数える間に、その気持ちを示してください。」
アーチェ「う、うん、いいよ・・・。」
アミィ「それじゃ、1・・・」
アーチェ「チェ、チェスター・・・」
チェスター「おう・・・」
アミィ「2・・・」
アーチェ「その、ね・・・アタシ、アンタのこと・・・」
アミィ「3・・・」
アーチェ「好・・」
アミィ「10。」
アーチェ「へ?」
チェスター「あれ?」
アミィは天高く拳をかざし、叫ぶ!
アミィ「私はアーチェさんより胸があります!!!クー・・・」
アミィはそのまま倒れこむと寝てしまった。
アーチェ「な・・・なんだったのよぉ・・・」
チェスター「・・・ア、アミィ?」



>おうちへ帰ろう
アミィ「くー・・・お兄ちゃ〜ん・・・」
チェスターの背中でスヤスヤ眠るアミィ
アーチェ「とんだ花見になったわね。」
チェスター「お前がアミィに酒を飲ませたからだろ?」
アーチェ「あは、あはは;;そうかもしんないね。それにしても、さ。」
上目遣いにチェスターを見るアーチェ
チェスター「なんだよ?」
アーチェ「ふ、ふざけてなんかいないからね(///)」
チェスター「・・・・ああ(///)」
アーチェ「まあ、その前にアミィちゃんに認められないとねぇ・・・」
アーチェはアミィのほっぺをつっつく。
アミィ「う、うん・・・アーチェ・・・お姉ちゃん・・・」
桜並木の下、仲良く家路につくばーくらいとさんちでしたとさ

                          おしまい



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