6月・ばーくらいとさんちの梅雨時   半蔵さん


>降水確率100%
チェスター「それじゃ、ちょっと出てくるぜ。」
アミィ「雨、降ってるから、気をつけてね。」
チェスター「おう!」
ガチャ☆
チェスターは外へと出かけて行く。
アミィはチェスターを見送ると、空を見上げた。
ここ数日、ずっと雨が続いている。
いわゆる梅雨時というものだろうか。
雲の様子から見ても、今日も晴れる気配はなさそうだ・・・
アミィ「ふぅ。やまないかな、雨。洗濯物乾かないよ・・・」

窓から空を眺めているアーチェ・・・
アーチェ「はぁ・・・雨、つまんないな〜」
サー・・・
たまにならいいだろうが、こうして毎日毎日雨が降られていては気が滅入ってくる。
アーチェは、不意に五・七・五をつぶやく。
アーチェ「梅雨空を 眺めてため息・・・」
アミィ「遊び人。」
アーチェ「な!?」
トコトコトコ・・・
アーチェの後ろを洗濯物抱えて素通りしていくアミィ。
アーチェ「ちょい待ったー!!」
アミィ「なんですか?今、忙しいんですけど。」
抱えていた洗濯物をよいしょと持ち直すアミィ。
アーチェ「『梅雨空を 眺めてため息 遊び人』じゃ、アタシが遊べなくてため息ついてるみたいでしょ。ここは『梅雨空を 眺めてため息 窓辺の美少女(字余り)』 となって、降り続ける雨に切なさを感じている情景を現して、」
アミィ「少女っていう年齢ですか。三桁に達しているのに。」
アーチェ「ぐ・・・。ね、年齢は100歳越えてるけど、ハーフエルフは年取るの緩慢だからいいの!」
アミィ「要するに亀みたいなもんなんですね。万年生きるって言うし。」
アーチェ「か、亀・・・ハーフエルフが・・・」
アミィ「そんなことよりアーチェさん、暇なんですか?」
アーチェ「ん?まあ、こんな雨の日だしね。どっかにかけるつもりもないし、暇って言えば暇かな?」
アミィ「それじゃ、たまには掃除を手伝ってください。掃除なら人に害を及ぼすとも思えませんし。」
アーチェ「が、害って・・・」


>掃除しちゃうぞ!
アーチェ「あ〜あ・・・雨のおかげで掃除の手伝いか〜。ま、たまにはいっか、 こんな時でもなけりゃしそうにないもんね。」
右手には水の入ったバケツと雑巾。左手には箒とちりとりを持って2階へとあがるアーチェ。
がちゃ☆
最初に入ったのは、アミィちゃんのお部屋。
アーチェ「やぁ、年頃の娘さんのお部屋はなんだか緊張しますな。ハッハッハ〜 」
親父くさい台詞をはくアーチェ
アーチェ「んじゃ、早速始めるとしますか。」
サッサッサ・・・
箒で床を掃き始める。
床を掃き、ベッドを整え、机を濡れ布巾で拭き始める。
アーチェ「・・・何じゃ?コレ」
ふと目に付いた机の上、本と本の間にあったピンクのノート。
何となく気になって手にとる。
アーチェ「『アミィのドキドキ大作戦』?うわ♪なんか気になるタイトルじゃん〜」
悪いと思いつつもパラパラッとノートを開くと・・・

作戦1>賞味期限切れの食材をそっと混ぜちゃおう
アミィ「さあさ!ご馳走ですよ〜」」
????「わ〜い♪美味しそうじゃ〜ん」
アミィ「どうぞ、めしあがれ♪」
????「いっただきます〜。あれ?ちょっと妙な味がするけど・・・
あ、アミィちゃん料理失敗したね?ダメじゃん、それじゃ〜」
アミィ「大丈夫・・・なんですか?」
????「何が?」
アミィ(チッ・・・)
(○月×日:強力な胃袋の前に作戦失敗。非常に残念;;)

作戦2>仕事を無理やり押し付けよう。
アミィ「すみませんが、料理を手伝ってもらえますか?」
????「うん、いいよ!」
1時間後・・・
アミィ「せ、折角の食材が・・・おじゃんに(涙)」
????「ごめ〜ん;;」
(料理はこちらへの影響も大きいため、得策とは言えず。他の仕事を回そう)

作戦3>何か秘密を握っちゃおう
ベッドの下(特になし)×
日記(つけてない)×
服のポケット(特になし)×
胸の谷間(ない)×
(現段階では発見できず。今後の捜査に期待)
作戦・・・


アーチェ「見なかったことにしよう!」
パタン☆
ノートは再び閉じられた。


じゃぶじゃぶじゃぶ・・・
お風呂場。洗濯板を使い洗濯物を洗うアミィ
アミィ「ふぅ・・お兄ちゃんのシャツも綺麗になったね♪えっと、次は、と・・・」
アミィが手にとったのは、女物の下着・・・
アミィ「・・・・(///)」
アーチェ「アミィちゃん・・・何、ジッとアタシの下着見てるの?」
アミィ「「うわ!?ア、アーチェさん!!?に、2階の掃除はどうしたんですか!?」
アーチェ「いや、ほらバケツの水の取り替え。それよりもさ〜(にんまり)」
アミィ「な、何ですか・・・」
アーチェ「アミィちゃんもそういう大人の下着に興味あるわけだ。」
アミィ「な!?そ、そんなんじゃないもん!!ただ、その・・・こ、この下着は ちょっと健全じゃないと思っただけ!!
アーチェさんのえっち!!」
アーチェ「そっかな〜?これくらいなら別に普通だと思うけど?」
アミィ「アーチェさんの普通は、世間一般の普通から大幅にズレてるんです!だいた いこんな下着を干してたら お兄ちゃんに悪い影響を与えちゃいます!!」
アーチェ「あ、それなら大丈夫!チェスター、あれで結構スケベだから。『妖精弓の スケベ大魔王』って呼ばれてたしね。」
アミィ「お、お兄ちゃんはそんなんじゃないです!!」
アーチェ「じゃ、今度その下着つけてチェスターに見せてみよっか?」
アミィ「な、な、な、何言い出すんですかーーー!!!」
勢い良く立ち上がったアミィ。
ツルッ☆
が、お風呂場の床に滑った
アミィ「わわっ!?」
アーチェ「危ない!!」
バッシャーーン・・・
アーチェ「あちゃ〜・・・」
アミィ「つ、冷たぃ・・・」
アーチェがアミィの腕を取ってくれたおかげで、勢いよく転ばずにはすんだが、
側にあった洗濯物の入った大きな桶にザブン☆
アーチェ「だ、大丈夫・・・?」
アミィ「・・・じゃないです。くしゅん☆」
アミィちゃん、全身びしょ濡れ・・・


>最終兵器ぼうず
アミィの部屋・・・
アミィ「アーチェさんは、まったく・・・」
髪をほどき、濡れてしまった髪をタオルで乾かすアミィ。
ガチャ
アーチェ「アミィちゃん、大丈夫?」
アミィほどではないにせよ、多少水に濡れたアーチェが着替えを終えてアミィの部屋 にやってきた。
アミィ「まあ、何とか。・・・それにしてもアーチェさんがヘンなこと言うからです よ!まったく!!」
アーチェ「ごめんごめ〜ん。でも転んだのはアミィちゃんのせいじゃ・・・」
アミィ「あ。私、なんだか転んだ影響で夕飯を一人分、作り忘れそうな気がする・・・」
アーチェ「う・・・。」

サー・・・
雨はまだまだ降り続けている。
バークライトさんちの軒先の紫陽花は鮮やかに色づき、天から降る雨を一身に受けている。
そしてみずみずしい緑の葉から、また一滴、雫がこぼれ落ちた・・・
アーチェ「それにしても雨やまないね・・・。早く梅雨終わらないかなぁ。」
アミィ「本当ですね。」
アーチェ「おや?珍しく意見が合いましたな♪」
アミィ「・・・屈辱。」
アーチェ「ぐ・・・。で、でもさ、本当に早く梅雨が明けるといいよね。梅雨が明ければ夏になるじゃん!
空は青いし、太陽まぶしいし、海に山に出かけられるし!」
アミィ「洗濯物乾くし!」
アーチェ「洗濯物って・・・。」
アミィ「やっぱり洗濯物は太陽の下で乾かすのが一番です!」
アーチェ「まあ、なんとなくわかる気もするけど・・・。そうだ!アミィちゃん!!」
アミィ「さてと・・・掃除の続きをしようかな。」
立ち上がろうとするアミィ
アーチェ「待ちなさいって。」
その手をとるアーチェ。
アミィ「また何か遊びを思いついたんですか・・・。私、そんなに暇じゃないんですけど。」
アーチェ「遊びじゃないってば。ほら、雨やむように作ろうよ!『てるてるぼうず』!」


アミィ「できた♪」
可愛らしいてるてるぼうずを作り上げるアミィ。
アミィ「アーチェさんはまだなんですか?」
アミィに背を向け、一生懸命てるてるぼうず作りに集中しているアーチェ。
アーチェ「よっしゃ、こっちもできたー!!」
ジャーンとアミィに見せつけるアーチェ!!
アミィ「・・・これ?アーチェさん?」
頭の部分がピンクに塗られて、どうやって作ったのかポニーテールまでついている、 てるてるぼうずだ。
アーチェ「アーチェさんてるてるぼうずなのだ。基本的にアタシは晴れ女だから効果 はかなりあると思うよ〜」
アミィ「頭の中がピーカンなんじゃ・・・」
アーチェ「何か言った?」
アミィ「いえ。で、そっちにあるのは・・・?」
アーチェ「えへへ〜♪ほら、アミィちゃんてるてるぼうずとチェスターてるてるぼうず!!」
アミィ「そ、それは・・・」


風にゆれる4つのてるてるぼうず・・・
アーチェ「これで、もう安心ね!」
アミィ「何が安心なんですか・・・?」
アーチェ「いつ晴れてもおかしくないってこと!」
アミィ「はいはい、そうですか。それじゃ私は、そろそろお買い物に行ってきます。
留守番お願いしますね。」
アーチェ「あ、アタシも一緒に行く〜」
アミィ「一緒に行ってもいいですけど、アーチェさんのリクエストには一切お答えしませんよ。
もう、今日のメニューは決まってるんですから。アーチェさんはつべこべ言わずに食 べていただくしか道は残されていません。
それでも良ければ、荷物持ちとしてついてきてください。」
アーチェ「い、いいよ・・・それでも。」
アミィ「それじゃちょっと待ってて下さいね。」
アミィは手際よく、髪を二つに結び始める。
アーチェ「そういえばアミィちゃんってば、いつもその髪型だね。何か意味あるの?」
アミィは動きを止めて、思い出すように語り始めた。
アミィ「昔は、結んだりしてなかったんだけど、周りのお友達がお母さんとかに可愛らしい髪型にしてもらってたんですよね。
私、まだちっちゃかったから、それが羨ましくってお兄ちゃんに『みんなみたいに可愛い髪形にして!』ってよく駄々をこねて・・・。でも、お兄ちゃん、そういうのよくわからなくて、それでも一生懸命考えてこの髪型にしてくれたんです・・・。だから私、この髪型が一番好き。」
アーチェ「へぇ・・・。アタシも今度その髪型にしてみようかな・・・。」
アミィ「想い出を汚さないで下さい。」
アーチェ「な、なんで・・・?」


>もうすぐ夏
からんから〜ん☆
買い物を終え、食材屋から出るアミィとアーチェ
アーチェ「いや〜、たくさんサービスしてもらちゃったね〜♪やっぱアタシの魅力が効いたかなっ?」
アミィ「もの欲しそうに見ていたからじゃないですか?」
アーチェ「そ、そんな・・;;でも、ちょっと多いかな?こりゃ・・・」
アミィ「荷物重い・・・」
二人の手にある紙袋。その中はいっぱいの野菜と果物だ。
アミィ「これじゃ傘させないです。」
アーチェ「たしかに・・・。あれ?でも、結構雨の降りは弱くなってきてない?」
アミィ「え・・・?」
食材屋の軒先から空を見上げるアミィ
たしかに先程までとは違って、雨粒も小さくなり、雲の間からかすかに光が差し込んできている。
アーチェ「てるてるぼうずの効果てきめん!」
アミィ「まさか〜・・・」
アーチェを見上げるアミィ。
アーチェは自信満々といった表情で、空を見上げていた。
アミィ「・・・本当に?」

チェスター「おーい、アミィ!アーチェ!」
こちらを呼ぶ声に気がつき、二人が同時に顔をむけると向こう側にチェスターの姿が。
アーチェ「チェスター!」
アミィ「あ!お兄ちゃん!!」
こちらにやってくるチェスター
アミィ「用事終わったの?」
チェスター「ああ。なんだそっちは二人で買い物か?」
アミィ「ううん、買い物は私。アーチェさんは荷物持ち。」
アーチェ「そういう風に言われると身もふたもないわね・・・」
チェスター「けどよ、荷物いっぱいじゃねえか。ほら、貸してみろよ。俺が持ってやるから。」
チェスターはアーチェとアミィの荷物を受け取る。
アーチェ「ありがと♪チェスター」
チェスター「どうってことねえって。」
アミィ「それじゃお兄ちゃん、私がお兄ちゃんに傘さしてあげるね♪」
アーチェ「いやいや、アミィちゃんじゃ背が足りないだろうから、アタシがチェスターに傘さしてあげるってば。」
アミィとアーチェはそれぞれチェスターと相合傘をしようとする。
アミィ「む!アーチェさんは一人で傘させばいいじゃないですか!」
アーチェ「気にしない、気にしない〜」
アミィ「気にします!!お兄ちゃん、私と一緒がいいよね!!」
アーチェ「チェスター!アタシだよね!!」
チェスター「お、俺は・・・」
アミィ&アーチェ『俺は?』
チェスター「走る!!!」
ダーーーーー!!!
家路に一直線!チェスターは荷物を持って走り出す!!
アミィ「お、お兄ちゃん待ってよー!!」
アーチェ「こらー!チェスター、待ちなさいー!!」
その後を追いかけるアミィとアーチェ・・・


雲にだんだん切れ間が出てきた・・・
その間から差し込む日の光
するとトーティス村の空に不意に描き出される七色の掛け橋
梅雨ももうすぐ終わり
ばーくらいとさんちにも夏の足音が近づいてきそうですね・・・

                         おしまい



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