姉妹生活   たっちゃんさん


あれ?
ここ……なんだかとっても懐かしい。
そうか……私、トーティスに帰って来たんだ。
だって、ゴーリのおじさんやマリアさんやミゲールさんが……ううん、村のみんながいるんだもの。
でも……この違和感は何?
何故だか、あまり嬉しくないのはどうして?
ううん……きっと気のせい。
気のせいだよきっと。

「おい君」

みんなの元へと歩き出した私。
しかし、突然背後から聞こえた声に驚き、振り替える。
するとそこには変な刺青を全身にいれ、鳴子を沢山付けたおじさんが立っていた。

「貴方は誰ですか?……私に何か用ですか?」

明らかに怪しいおじさんに、私は警戒心むき出しで言いました。

「私の名はクラース。だが、私の正体は今の所どうでも良い事だ」

クラース?
う〜ん……私の知り合いにはいない名前だね。

「で、何か用か?……と聞いたな。ま、簡単に言うと君を呼び止める為に声をかけた……と言っておこうか」
「……ナンパですか?」
「ち、違うっ!断じて違うぞっ!」

クラースさんの言った事に対して、つい思った事を口に出してしまった。
よくよく考えれば凄く失礼な事何だけど、そう思っても仕方が無いよね。
で、案の定、クラースさんは必死になって否定している。
もしかしたら、案外面白い人なのかもしれない。

「その……ここは簡単に言えば、『あの世の入口』なんだ。君が見ている風景は、死者の魂がが少しでも安らげる様に配慮された幻なんだよ」

え……あの世の入口?
私、どうしてそんな所にいるの?

「で、あそこに行ってしまうともう二度と帰っては来れない。だから、君を引き止めにきたのだよ」

引き止めに来た?
と言うことは、今の私って一体何なの?

「君は……まだこっちに来るべきじゃない……だから、戻るんだ」

私の中にある疑問が全然解決されないまま、トーティスの村は段々遠ざかっていく。
そして、クラースさんの姿ももう見えなくなっていた。

「アーチェとチェスターの事……よろしく頼むよ、お嬢ちゃん」

最後に、クラースさんはすごく優しい声で話し掛けて来て……そして私の意識は途絶えた。
次に目を開けた時……私の目の前にあったのは、半泣きのアーチェお姉ちゃんの顔だった。


2・新しい暮らし、新しい家族


あの日以来、たとえどんな事があろうとも料理は私が作っていた。
私が体調を崩した時や、忙しくて暇が無い時でもだ。
そう……お姉ちゃんの料理を食べて、臨死体験をしたあの日から。

仮死状態から目覚めた私は、何故だかだるくて何もする気がおきなかった。
お姉ちゃんの話だと、暫く体が休眠状態だったから、そうなるのも仕方が無いって事らしいけど。
だから、私はおとなしく寝ていることにした。
だけど、寝ているだけでもお腹はへっちゃうものらしく、ぐーぐー鳴ってて恥ずかしかった。

「あ、お腹すいたんだね。じゃあ、ほんのちょっとだけ待っててね」

お腹の音を聞いて、お姉ちゃんはちょっとだけ笑いながら部屋から出ていった 。
はっきり言って、すごく恥ずかしかった。
そして待つこと十数分……お姉ちゃんは小さなお鍋を持って帰って来た。
見ると、お鍋の中にはおいしそうなおじやが。

「はいはい……熱いから気を付けて食べてね」

そう言って、布団のうえに鍋しきと鍋を置く。

「うん。じゃあいただきます」

お腹がすいていた私は、熱いおじやをじゅうぶんに冷ましてから口の中に入れた。
そこで私の意識は途絶え、例の臨死体験をする羽目になってしまった。

臨死体験の後、二日ほど私は寝込んでいた。
精神的にも肉体的にもかなりのダメージをくらったからだ。
その間、お姉ちゃんはつきっきりで看病してくれた。
そして、色々なお話をしてくれた。

まず最初に話してくれたのは、トーティスの村が教われた時の事。

「実はね……あの時アミィちゃんが出会った黒い鎧って、アタシだったんだよね 」
「え……じょ、冗談ですよね」
「ううん、本当だよ。実はあの時、ちょっと個人的な事情があってああせざるを得なかったんだよね」
「はぁ……でも、どうして?」
「えっとね……何て言うか……アミィちゃんを死なせたくはなかった……だけど、アミィちゃんが死んだことにしなくちゃいけなかった……だから、ちょっと黒鎧を借りて一芝居うったって訳なんだよね」
「つまり……あの時の光は……私を仮死状態にさせる為の?」
「うんまぁそゆこと。後は、仮死状態になったアミィちゃんが埋葬されるのを見届けて、でその後気付かれない様に掘り起こしたって訳」
「何で?……どうしてそんな回りくどいことする必要があったんですか?」
「まぁ……それは後々話すよ」

次に、お姉ちゃん自身のこと。
クレスさん達と一緒に、時を超えた大冒険をしたこと。
大冒険の後、元の時代に帰ってから今まで過ごしてきた事。
その他、ちょっとした雑談とか……本当に色々なお話をしてくれた。
そして、それらの話しを聞いて私は何となく気付いてしまった。
お姉ちゃんの想いに。

「お兄ちゃんの事……好きなんですね」

実際、お姉ちゃんがお兄ちゃんの事を語る時は、ほとんど小ばかにしたような言い方をしている。
だけど、それはどこか素直になれない気持ちからくるもので、本当はお兄ちゃんを大切に思っている事が解る。
それに口でどうこう言っていても、自然にこぼれる笑顔がその想いの強さを語っていた。
だから、私もつられて笑顔になってしまう。
するとお姉ちゃんは顔を真っ赤にして黙り込んでしまう。
そして少しの間を置いて、こくこくと頷く。

「えっと……あ、あの馬鹿には内緒だからね……女の約束よ」

真っ赤な顔のまま、お姉ちゃんはそう言った。

「うん……約束するよ。そのかわり……お姉ちゃんって呼んでも良いかな?」
「えっ!?……いや、その……お姉ちゃんはちょっと」
「……じゃあ……お兄ちゃんに言いますね」
「うわぁっ!!わ、解ったわよ。お姉ちゃんって呼んでも良いから……だからアイツにだけは!」

慌てふためくお姉ちゃんが妙に可愛らしかった。
そして、その日から私とお姉ちゃんの新しい暮らしが始まった。


「お姉ちゃ〜ん!ご飯だよ〜!」

あの日以来、私はお姉ちゃんと一緒に暮らしている。
別に、すぐにお兄ちゃん達に会いに行っても良いんだけれど……でも、その前にやらなくちゃいけないことがあるから、まだ会えないんです。
ま、それはおいおい話すとして。

「はいは〜い♪お、今日は久々にマーボカレーだね。やったぁ♪」

嬉しそうにはしゃぐお姉ちゃん。
こうしてみると、本当に百年以上生きているのか疑問に感じちゃうけど……ま、お姉ちゃんらしいから良いや。

「それで、デザートはお姉ちゃんにこの前教えてもらった桃のケーキだよ」

そう。
お姉ちゃんは、ほとんどの料理が駄目なんだけど、何故かデザート系だけは私以上の知識と腕を持っているんです。
だから、休日は私とお姉ちゃんで色々教えあいしながら、楽しく過ごしています。
そのおかげか、最近お姉ちゃんは料理の腕が上がりました。

とりあえず……お兄ちゃんに会う頃までに、大体の料理を作れるようにするつもりです。


まぁ、たまに喧嘩とかもするけれど、楽しく共同生活してます。



次回予告(何?)
お姉ちゃんと一緒にユークリッドへお買い物に行った私は、ミントさんと言う優しいお姉さんに会いました。
丁度お姉ちゃんと別行動をとっていた私は、ミントさんと暫くお話をすることに。
お兄ちゃんとクレスさんが元気だと言うことを知って一安心する私。
でも、ミントさんが恋のライバルだと知ってショックを受ける私。
そして、それを遠目に見ていたお姉ちゃん。
ただの買い物のはずだったのに、どうしてこんな事になっちゃうのかなぁ。

次回『ショッピングの一時に』

ミントさんには負けないんだからっ!



あとがき
すず「えっと……馬鹿ですか?」
たつ「否定はしない」
すず「前回を書いて、次の日に二話目……何事ですか、まったく」
たつ「いや、ネタがある内に頑張ってみようかな……なんて思ったりしてさ。つい」
すず「……ふぅ……だったら、マヅポ書いた方が良いと思うのですが」
たつ「マヅポ……ふ……知らんな」
すず「……斬りますよ?(にこっ&怒)」
たつ「……冗談だよ……冗談ですってば」
すず「……次は……容赦しませんよ?(にこっ)」
たつ(涙)


アミ「それで、次回はミントさんと会っちゃうわけなんだね」
たつ「ま、次回予告からするとそうなるね」
アミ「しかも、恋のライバルって事になっちゃってるし……勝ち目ないよ」
たつ「頑張れ……と言っても、僕はクレミン派だが」
アミ「…………」
たつ「いや、クレアミも好きだけど……その、あんまメジャーじゃないしさ。何より、年齢的にはんざ」
アミ「死天滅殺弓っ!」
たつ「おヴェラばっ!そ、そりは……チェルシーたんのっ!!?」
アミ「一応……お兄ちゃんの妹ですから(にこっ)」
たつ「ぐ……む、無念」
アミ「いや……死んじゃ駄目ですよ」
たつ「ま……次回は修羅場だから絶対必見だと言うことですな」
アミ「いや……違うと思いますし……日本語変ですし……なにより復活早すぎですし……もうどうでもいいです」

……作者……情緒不安定?(マテ)



林檎通信