我が国の兵器や装備品には、明治の帝國陸海軍の建軍以来現在の陸海空自衛隊まで主に「○○式」という名称が付けられています。この読み方は基本的には文字をそのまま発音し、「三十年式」は「さんじゅうねんしき」、「九九式」は「きゅうきゅうしき」と読み、「さんまるねんしき」や「きゅうじゅうきゅうしき」とは読みません。この数字は兵器や装備品が正式に開発あるいは採用された年の下2桁がつけられますが、初期の頃は元号(我が国の元号で明治、大正、昭和、等)からつけられ、次に紀元(我が国の始まりから数えた年数。皇紀)の下2桁となり、現在は西暦の下2桁を用いています。
例 元号
三十年式歩兵銃・・・・・明治三十年
一〇式艦上戦闘機・・・・大正十年
例 紀元
九三式魚雷・・・・・紀元2593年
四式戦闘機・・・・・紀元2604年
例 西暦
八八式地対艦誘導弾・・・・・西暦1988年
九〇式戦車・・・・・西暦1990年
また、新しい命名法が制定された場合、その時点で配備中のものに付いては旧来の名称から新しい命名法にしたがって改称されたため、なかには採用時と読み方が変わったものもあります。
例
採用時・十年式(じゅうねんしき)艦上戦闘機
改変後・一〇式(ひとまるしき)艦上戦闘機
なお、紀元2600年(つまり下2桁がゼロの年)採用のものに関しては、陸軍では「百式(ひゃくしき)」、海軍では「零式(れいしき)」としました。
例
陸軍・百式機関短銃
海軍・零式艦上戦闘機
ただし、採用年号と名称が合わないものもあります。例えば、完成時の年式ではなく開発時の年式で、正式採用が採用決定・配備より後年となった場合でも採用決定・配備の年式で、採用予定年にすでに同名称あるいは似通った名称の物がある場合は前後の年式で、正式採用がすでに決定しているためそれより完成・配備の年が早くても採用予定年式で、それぞれ命名される場合等もありました。
例
三八式歩兵銃・・・実採用・配備 明治三十九年
九三式魚雷・・・実採用・配備 紀元2596年
三式弾・・・実採用・配備 紀元2602年
また、小改造を行っている場合に○○式「○号」や○○式「○型」という場合がありますが、これは小改造あるいは用途別の型の違いをあらわし、型の違いが増えればこの数字が大きくなります。この数字が二桁の場合がありますが、例えば「二一型」は21番目の型と言う事ではなく、通常「○○型」は「○号○型」といい、略す場合は○○式同様基本的には文字をそのまま発音します。さらに甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)、等とついている場合がありますが、これはさらに細部の違いを表しています。種類によっては大きく「改」とつける場合もありました。
現在はこの「○○式」と共に「アルファベット記号」と「数字」の名称もあり、例えば「F1」は「えふいち」と読みます。この後に「A」等とつく場合がありますが、これは「○型」等と同様に型の違いをあらわします。もっとも、こういった改良等は主に戦時においてその必要に応じて行われることが多いため、現在の自衛隊ではひとつの装備品で多くの改良等をしているものは少なく、名称も「○○式」でその後ろに改造や型の違い等を示す「○型」あるいは「A」などのアルファベット記号がついているものは少ないようです。また、国産の兵器や装備であっても「○○式」とつかずに、例えば昭和十六年採用の「夜光秒時計一型」や陸上自衛隊の「高機動車」のように種別を示す名称がすぐについているものもあります。