航空機の名称

 我が国の航空機の名称は帝国陸海軍および陸海空自衛隊、あるいは時代によって変化していますが、基本的に帝国陸海軍では○○式を、陸海空自衛隊はアルファベット記号を用いています。帝国陸海軍共にその創設期には輸入機あるいはそのライセンス生産機が多く、例えば「モーリスファルマン式飛行機」や「カーチス式水上機」「横廠(横須賀工廠)式水上機」等、開発メーカーの名前を用いて名称としており、機種が増えるに従い「ビ式(ビッカース社)」「モ式(モーリスファルマン社)」等となり、大正半ば頃には陸軍では甲、乙、丙、丁、等、海軍ではイ、ロ、ハ、ニ等で類別となり、本格的な国産機が開発される頃になると陸海軍共に採用年を用い「○○式」となりました。現在の陸海空自衛隊ではライセンス生産機は例えば「F15戦闘機」のようにもとの名称を、国産機には「F1支援戦闘機」のようにアルファベットと番号と機種名を組み合わせて名称としています。

 帝国陸軍航空隊では、機種別におよそ「戦闘機」「爆撃機」「襲撃機」「偵察機」「輸送機」「練習機」等があり、「○○式」と「機種名」を組み合わせて名称としています。昭和十六年以降にはそれぞれ愛称がつけられる場合もありました(例、一式戦闘機「隼(はやぶさ)」、四式重爆撃機「飛龍(ひりゅう)」等)。ただし、海軍のような命名基準は特に無く、正式名称ではなくて愛称として用いられました。これらの名称のうち「○○式」あるいは「機種名」に続いて「○型」と付いているものがありますが、これは改造を行った結果、元の機体から数えて何番目にあたる型であるかを示しています。例えば「一式二型戦闘機」は、「一式」は採用年紀元2601年から、「二型」は一式戦闘機が採用されてから改造が行われて2つ目の型(もとの型が一型となります)である事を、「戦闘機」は機種を示します。また、陸軍では比較的大きな改造を行った場合は「○型」とせず、新しく正式名で「○○式」とつける場合もありました(例、「三式戦闘機」を液冷式の発動機から空冷式の発動機に変更しこれに伴う各部を変更後、「五式戦闘機」として採用、等)。また、試作段階では開発メーカーに関わらずに、機体は「キ」、発動機は「ハ」という具合にカタカナにそれぞれ通し番号を組み合わせて用いています。

 帝国海軍航空隊では、まず大きくわけて艦上機、水上機、陸上機とあり、艦上機は航空母艦での運用を前提とした機体、水上機はフロートあるいは艇体を持ち水上で離発着できる機体、陸上機は陸上の基地での運用を前提とした機体となります。種別は主に「戦闘機」「爆撃機」「攻撃機」「偵察機」「観測機」「練習機」等があり、「戦闘機」は搭載兵器を用い敵の攻撃・妨害を排除し制空権を確保する機種で、航空母艦上で運用する「艦上戦闘機」と陸上基地での運用を行う「局地戦闘機」、水上での離発着を前提とした「水上戦闘機」等があります。「爆撃機」とは海軍では急降下爆撃あるいは水平爆撃を行う事を前提とした機体で、「艦上爆撃機」「陸上爆撃機」があります。「攻撃機」は雷撃可能な爆撃機をしめし、水平爆撃や雷撃を行う機種で「艦上攻撃機」と「陸上攻撃機」と、名前どおり特別な用途に用いられる「特殊攻撃機」と「特別攻撃機」があります。「偵察機」は敵状の偵察や索敵を行う事を目的とした機種で「艦上偵察機」「水上偵察機」「陸上偵察機」があります。「観測機」は砲撃の際に弾着確認やそれにしたがって弾着修正等、文字通り観測を行うための機種です。そして「○○式」と「機種」を組み合わせて正式名称としています。また、○○式あるいは機種名の後ろに「○号」や「○○型」とつく場合があります。これは小改造を行った際等につけられ、「○号」は一号機、二号機と言う事ではなく、型の違いを示します。「○○型」は正式には「○号○型」となり、はじめの○号が機体の、後ろの○型が発動機の改造を意味します。さらに「甲」「乙」「丙」「丁」とつく場合は搭載兵装の変更を意味します。例えば「零式艦上戦闘機五二型乙」は「零式」は紀元2600年から、「艦上」は航空母艦での運用を前提としたもの、「戦闘機」は機種、「五二型」は「五号二型」つまり機体の改造が行われて五つ目の型、発動機の改造が行われて二つ目の型、「乙」は武装の変更が行われて二つ目の型という具合(元の型が一号一型あるいは甲)になります。昭和十八年以降はこのうち「○○式」を辞め、機種別の「名称」をつけるようになりました。艦上戦闘機は「風」、艦上・陸上攻撃機は「山」、等とつけました。また、試作機には元号と機種名を組み合わせて名称としました。

 陸海空自衛隊の航空隊ではこれまでの「固定翼機」に加え「回転翼機」つまりヘリコプターも含め、輸入機あるいはライセンス生産機は元の名称を、国産機は基本的にアルファベット記号と機種毎の通し番号を組み合わせて名称としており、これに愛称がつく事もあります。運用機種は主に「戦闘機」「支援戦闘機」「輸送機」「救難機」「哨戒機」「警戒機」「偵察機」「練習機」等があり、「戦闘機種」は「F」、「輸送機種」は「C」、「練習機種」は「T」、「ヘリコプター」には「H」等のように、陸海空で基本的には同一の命名方式を用いています。これに続く数字はその機種の何番目かを示し、次に機種名がつきます。通番の後ろにアルファベットがつく場合がありますがこれはその機体の細部の違いを示しており、例えば「F2A支援戦闘機」の「F」は「戦闘機種」、「2」は機種毎の通し番号(つまりここでは「F」で始まる機種の二番目)、「A」は機体の違い(F2Aは単座、F2Bは複座)を、「支援戦闘機」は機種を示しています。また、輸入機あるいはライセンス生産機で後ろに「J」と付いているものがありますが、これはAから始まって10番目の改造を施した機体と言う意味ではなく、「日本向け」あるいは「日本製」等の意味があり、我が国で運用を行う事を前提とした改造・改良が施された機体である事を示しています(例、F4EJ戦闘機、F15J戦闘機、ナイキJ対空誘導弾、等)。この「J」は元の型では可能な核搭載兵装等を取り外している型である事を示していると言われています。通常は輸入機あるいはライセンス生産機で改造・改良を行っていても特に「J」等の記号はついていないようです。また、機体や搭載装備の近代改装等の大きな改造・改良を行った場合には、名称に「改」とつく場合もあります(「F4EJ改」あるいは「ファントム改」等)。

陸軍機の命名方

海軍機の命名方

陸海空自衛隊機の命名方