なにもわからない。



これからどうなるのか。



どうすればいいのか。



けれど今は信じよう。




自分が持っている・・・・今まで紡いできた絆を。




SR −the destiny−

〔第8話 誕生〕

Written by かつ丸



第2ケイジ。

いつもはつなぎ止められているはずの金色の機体はそこには無かった。

使徒の戦いで両腕と頭部を切断された弐号機は、再生のために巨大水槽へと移されているのだ。

主のいないケイジ、作業員すら通らないそこに、一つの人影があった。その近くには円筒状のカプセル。

思いつめた表情でカプセルの覗き窓から中を見ている女性は、憔悴しきった顔をしていた。ずっと眠っていないのかもしれない。

「・・・・・ごめんね。ずっと顔も出さないで」

ささやくように語りかける。返事は無い。

「仕事が忙しかったから・・・・・ふふ、言い訳だよね。・・・・良かった、元気そうで」

カプセルの中の少年はいつもと変わらない。笑顔のまま目をつぶっている。しかしマヤは確かに聞いたのだ、この少年の悲鳴を。

エヴァにシンクロしているのは彼だ。両腕と頭部が切断されたあの時、彼にどれほどの痛みが伝わったのか想像もつかない。

比較的シンクロ率の低いレイですら左腕切断時には気絶し、先の戦いでは爆発の衝撃で一週間以上入院したのだ。彼に何かあったらと今まで怖くてここに来れなかったのだが、何事も無かったように、この少年が笑顔で眠っていられるのがマヤには不思議だった。

「ねえ・・・・私の声が聞こえてる?・・・・だったら・・・・返事をしてよ・・・何か話してよ」

あの時は悲鳴だった。しかし彼の声を聞いたことに違いは無い。つまり意識があるはずなのだ、今は眠っているとしても。

「先輩も、葛城さんも、レイちゃんも、なにも言わないけど・・・・私が・・・私さえしっかりしてたら・・・シンジくんはあんなことにならなかったのに・・・」

何もできなかったふがいない自分。その思いは確実にマヤを追い詰めていた。

「・・・・だめなの。私なんかじゃ・・・最初っから無理だったのよ・・・」

涙をこぼしながら少年に訴えかける。端から見れば異常にしか見えないかもしれない。しかしマヤがすがれる相手は彼しかいなかった。

弐号機に乗る時に感じられる一体感、つつまれる感触。彼ならばマヤの迷いも憂いもすべて受けとめてくれる。そんな気がした。






「あまりいい傾向じゃないわね」

制御室。モニターに写るマヤの様子を眺めながらミサトが呟いた。

「・・・あれであの子の平衡が保たれるというなら。放っておくしかないわ」

諦めたようにリツコが言う。そして別のモニターに写るもう一つの人影に視線を移すと小さな溜め息をついた。

「・・・・とりあえず問題はあっちでしょう。失敗すればどうなるか、想像もつかないわ」

「・・・・・サルベージ。いよいよ明日なのね」

「できるだけの準備はしたわ。シミュレーション上では可能性は五分五分・・・・あとは信じるしかないわね、シンジくんを」

深刻な表情で答えながらもモニターから視線を移さないリツコに頷きかけ、ミサトも同じモニターを見る。

そこには、口をつぐんだまま初号機を見上げている、蒼い髪の少女の姿があった。








あたたかい。

それが最初に思ったことだった。

内分電源が切れ絶望的な状況の中、鼓動とともにエヴァが動きだしたあの時、朦朧とした感覚の中で何かに抱かれるような気がした。

安堵感とともに聞こえたのは誰かの言葉。

『もう、いいの?』

その声はとても懐かしい響きをしていた。

引き込まれるようにそのままシンジの意識は遠くなったのだ。


そして?


気がつけばやはりここにいた。エントリープラグの中。

誰もいないLCLだけが詰まったプラグ。それを見ている筈の自分の姿すらどこにもない。


・・・・・いったいどうしてなんだろう?


疑問を持つ自分、その存在は確かにある。夢を見ているのかもしれない。しかし夢に良くある非現実感は無かった。今ここにいる事実、それは現実としてあるのだ。

実体としての自分がいないだけ。

けれども切迫感も恐怖も無い。

ここにいることは気持ちよかった。エヴァが守ってくれるからだろうか。


何か忘れているような気がする。


それが何なのかは思いだせない。感覚や記憶がマヒしているのかもしれない。


いや、気にするのはやめよう。もう、いいのだ。ここにいれば怖い思いをすることはない。


大きなものに包まれる安心感とともに、シンジは深いまどろみのなかにいた。




声が聞こえる。懐かしい声。


『ここにいればいいのよ・・・』

・・・・でも、僕はいらない子供なんじゃなかったの?






「来い」

ゲンドウの手紙に書かれたその言葉が全ての始まり。

別に無視することも出来たはずだ。だが自分はこの街へ来た。最初は、そう最初はゲンドウに会うためだった。

自分を呼んだのは必要だからだろう、用がなければ放っておいたはずだ。それでもいい、もう、いらない子供ではなくなる。手紙を見た時はそう思った。


駅のホームに迎えに来たミサトの姿に、少し落胆していた。使徒の出現で気持ちが混乱していたあの時、ゲンドウが目の前にあらわれたら泣きだしていたかもしれない。

恐怖と、そして安心感から。

だが彼はシンジがすがりつけるような、そんな相手ではないのだろう。

ケイジで3年ぶりに会った父の姿は、やはり突き放されるような印象しか無かった。


「乗るのなら早く乗れ。でなければ帰れ」


そして初めての戦い。エヴァに乗れば父は自分を捨てることは無い。だからあれに乗った。

ケガで苦しむレイの為などではなかった。今ならばそれがわかる。


病院で彼女を見舞う父の姿に自分は嫉妬していたのだから。あきらかに自分より重い傷を負っていた彼女に対して。

ゲンドウが自分を軽く考えている。あの少女よりも。その思いは彼への反発を生み。だから必要ないと言ったのだ、彼と一緒に暮らすことを。


それより先に自分を突き放していたゲンドウに拗ねていただけと言われれば、きっとそうなのだろう。


そんなシンジをミサトは放っておけなかったのか、よほど哀れな姿に写ったのだろうとも思う。

だがそれでも良かった。独り捨てられるよりは。


がさつで無神経な女性。それが彼女の印象。

一緒に暮らしてみてもその評価は変わらなかった。

ただ自分を励まそうとしていることはわかった。


「これが・・・・あなたが守った街」

「おかえりなさい」

「あなたは人に誉められる立派なことをしたのよ」


自分がエヴァのパイロットでなければ、彼女は自分に構うことはなかったろう。

道具として利用している。その思いが優しさとなってあらわれたのか、時に怒りとなって。



「そんな気持ちでエヴァに乗ってたら死ぬわよ!」

「人のことなんか関係ないでしょ!! いやならここから出て行きなさい!!」


不器用な形でしか他人と接することができないのはシンジもミサトも同じだろう。自分を叱ってくれる。それだけでも彼女のことは信じられるような気がした。

彼女の思惑がどこにあろうと。


二人だけの暮らし、偽りの家族。


それはいつまでも続くことは決してない、うたかたの夢のような生活。

ミサトにだれか恋人が出来れば、シンジが成長し大人になれば、自然と失われてしまうのだ。

たとえ使徒が永遠に来つづけたとしても。


そして使徒が来なくなれば、すぐにでもなくなってしまう。


落ち着かなかった。もっと確かなものが欲しかった。

自分が必要とされる確信が。



あのままの状態が続けば、自分はミサトを求めていたろう。

二人きりでいれば。

そして拒否され、壊れていたかもしれない。



綾波レイ・・・・彼女がいなければ。



最初は近寄りがたい存在だった。

シンジを拒否するような冷たい瞳。それは皆にむけられたものだったのだろう。ゲンドウ以外の。

ケイジで見た二人の姿。

微笑みあうように話す。シンジには見せない表情。レイも・・・・そしてゲンドウも。


「自分のお父さんの仕事が信じられないの?」


自分の代りに父から話しかけられる彼女に、憎しみさえ持っていたのかもしれない。あの頃は。

父を奪った存在として。


しかしそうではなかった。


「さよなら」

「絆だから・・・・・私には、他に何も無いもの」


拒絶。そして孤独。

ゲンドウからの愛情を受けて生きてきたのなら、ああいったことを言うはずが無い。

いまならば分かる。


「あなたは死なないわ・・・・・・私が守るもの」


決意のこもった瞳でそう言った彼女は、あの時死を覚悟していたのかもしれない。

それくらいレイは自分の生命を軽く考えている、それがわかったから駆け寄ったのだ。彼女のエントリープラグへ。


「何、泣いてるの?」

「こんな時、どんな顔すればいいかわからないの」


感情が無いわけではない。ただあらわし方を知らないだけ。

シンジに見せたぎこちない微笑み。そこには確かに彼女の心が見えた。


あの時から自分は彼女に魅せられたのだろう。

もっと彼女を知りたい、彼女の心が見たい・・・・その思いとともに。







「エントリープラグへの配線接続終了・・・・・準備完了しました」

「マギシステム異常無し」

「・・・・初号機パイロットのサルベージを開始します」







幻を見ていた。この街に来る前。この街に来てから。みんなの、そして自分の姿。

現実感はない。映画を見るような感覚。

ここにいれば怖い眼にあうことはないのだから。

そうしているうちに、長い時間が経ったような気がする。
なつかしい安らぎにつつまれたままで。


けれど、遠くから突然声がした。

自分を呼ぶ声が。


「碇君・・・・」


ああ、呼んでいるのは彼女だ。

僕は・・・・行かなければならない。




その時世界が反転した。まるで押し止めるように。




立ちふさがるゲンドウ。

「ダミーシステムが完成した。もうお前がエヴァに乗る必要はない」

・・・・・僕は自分の手で綾波を守らなきゃいけない。だから僕はエヴァに乗るよ。父さんが何と言っても。



腕を組んだ姿勢で、突き放すように言うミサト。

「ここをを出て行きたかったらそれでもいいわ。どうするの、シンジくん?」

・・・・・僕は綾波のそばにいたい。だから僕はこの街からでません。



バカにしたように笑うケンスケ。

「そんなにエヴァのパイロットを続けたいのか。結局お前も俺と同じじゃないか」

・・・・・そう思うならそれでもいいさ。僕はエヴァから降りない、そう決めたんだ。



顔を赤くして怒るヒカリ。

「鈴原にあんな酷いことしておいて。のこのこと私たちの前に顔を出すつもり?」

・・・・・綾波がそこにいるなら、僕はクラスのみんなに何を言われても学校に行くよ。



片足を失い、松葉杖で立つトウジ。彼の声もまた冷たい。

「お前は喜んでるんやろ。ワシがもうエヴァには乗られへんから。綾波の近くにいるのは自分だけでええと思ってるんやろ」

・・・・・そうかもしれない。

「世界を救うとかサードインパクトとかお前は考えてへんやないか。そんなに綾波がええんか。お前のはただのエゴじゃ。それでワシの足を奪ったんや」

・・・・・そうかもしれない。

「お前に何の力もあるかい。お前の優柔不断のせいでワシはこんな目におうたんや。お前がへたれやからワシの妹は大怪我したんや。なんでそんなお前に綾波が守れんねん」

・・・・・そうかもしれない。でも僕は、僕は・・・

「お前がおらんかてなんとかなるんとちゃうんか。ほかにもパイロットの候補はおんねんからそいつらのほうが上手かもしれんやないか。別にお前や無くてもええやないか」

・・・・・でも、僕は・・・

「シンジ、ええからお前はそこにおれや。そしたらワシとも顔をあわさんでもすむやないか。お互い気分悪い思いせんでもええんや。ずっとそこにおったらええねん」

・・・・・ごめん、トウジ・・・・それでも、僕は・・・綾波のそばにいたいんだ。




「そう・・・」

最後に立っていたのは哀しそうな顔をしたレイだった。

「ありがとう、碇君・・・・・でも、私はいつか行かなくてはならない時が来る」

・・・・・綾波!?

「司令が死ねと言えば、私は死ななければならない。私はそのために生まれたのだから」

・・・・・何言ってるんだよ綾波、おかしいよ、そんなの。

「私は作られた生命しか持っていない。私の生に価値など無いの。私の生命は羽虫よりも軽いわ」

・・・・・そんなことない、そんなことないよ。だって綾波はちゃんと生きてるじゃないか。僕と何も変わらないじゃないか。

「そう見えるだけ・・・・あなたが知らないだけ・・・・だからいいのよ碇君。私は別にいいの。あなたにとってそこにいるのが幸せなら、帰って来なくてもいいわ」

・・・・・そんな、そんな哀しいこというなよ。綾波が何かなんて関係ないって何度も言ったじゃないか。幸せだって綾波も言ってたじゃないか。

「別に帰ってきてもいいわ。でも、私はあなたを選べない。所詮私が司令に呼ばれるその時まで。その時がくれば去らねばならない。それでもいいの、碇君? 目の前で私を連れ去られることがあなたに耐えられるの?」

・・・・・綾波は、君は僕が守る。父さんになんて渡さない。渡すもんか!!

「無理よ。あなたはまだ子供だもの。司令に頼んでエヴァに乗せてもらってるだけ。本当の力なんて持っていない。それはあなたが一番よく知っているはずよ」

・・・・・でも、でも。


レイの姿が消え、再びゲンドウがあらわれる。

「ダミーシステムが完成した。もうお前がエヴァに乗る必要はない」

・・・・・うるさい!! うるさい!! うるさいぃ!!!




制御室。警報が鳴り響き、マヤが悲鳴のような声をあげる。

「だめです。パルスがループ状に固定されています」

「・・・発信信号がクライン空間にとらわれているの?」

「どういうことよ」

「つまりは・・・・失敗」

リツコの言葉にミサトの目は大きく見開かれた。

それはシンジの死を意味するのだ。

モニターを注視するオペレーターの動きが急に慌ただしくなった。

「干渉中止して」

「はい!!」

「旧エリアにデストルド反応、パターンセピア!」

「コアパルスにも変化が見られます。プラス0.3を確認!」

「現状維持を最優先! 逆流を防いで!!」

「はい!・・・・変です、せき止められません」

もはや制御は不能になっている。最悪の事態にリツコにすら為す術はない。

「帰りたくないの、シンジくん? それとも帰さないつもりなの、彼女は」

そう呟く間にも状況は悪化していく。マヤが涙声で叫んだ。

「だめです、プラグが排出されます!!」

「シンジくん!!」

ミサトの呼ぶ声も虚しく、エントリープラグの口は開き、そこから大量のLCLが溢れ出ていく。

しかしシンジの身体はどこにも無かった。






ここはあたたかい。そして気持ちがいい。

懐かしい場所。懐かしい鼓動。

におい、ひとの匂いがする。

「綾波? ミサトさん?」

いや、違う。

「母さん・・・・・」


赤ん坊のころの記憶。

浮かび上がるビジョン。

そこには確かに父と、そして母がいた。


「セカンドインパクトの後に生きていくのか、この子は、この地獄に」

「あら、生きて行こうと思えは、どこだって天国になるわよ。・・・・だって生きているんですもの。幸せになるチャンスはどこにでもあるわ」

「・・・ああ、そうだったな」


父と母の会話。微かに覚えている。


「決めてくれた?」

「男だったらシンジ。女だったらレイと名付ける」

「・・・シンジ・・・・レイ・・・・フフフ」


シンジが生まれる前だろうか。幸せそうな二人。

自分は決していらない子供ではなかったのか。

今もユイはシンジの幸せを祈っているのだろうか。だからここで生きていけというのか。

外敵も恐怖も死すらも存在しないこの場所で。



・・・・でも、母さん。


シンジは独白する。見えないユイの姿に向かって。


・・・・僕は綾波のそばにいたいんだ。

・・・・僕が祝福されて生まれてきたのと同じように、彼女も祝福してあげたいんだ。

・・・・生きているなら幸せになるチャンスはあるって。母さんの言葉を彼女にも伝えてあげたいんだ。

・・・・別に彼女のためなんかじゃない。僕のために。

・・・・ただのエゴかもしれない。綾波にも別に望まれていないのかもしれない。それでもいいんだ。

・・・・僕には必要なんだ、彼女が。

・・・・彼女が微笑んでくれたら、それだけで僕は幸せになれるんだよ。

・・・・彼女に、彼女に会いたいんだ。

・・・・他にはなにも、なにもいらないから。


声が届いたのだろうか。

再びシンジを光が包んだ。

薄れゆく意識の中で、シンジはユイの微笑む顔を見たような、そんな気がした。








「それで、シンジくんは今どうしてるんだ?」

「まだ入院中よ、レイが張りついてるわ、私は用なしってわけ」

場末のラブホテル。気だるい声で返事をしながらミサトは煙草に火を点けた。ゆっくりと紫煙を吐き出す。

「・・・・LCLがエジェクトされて、よく復活できたもんだな」

「コアから出てくるなんてね。いったいどんな仕組みなんだか」

呆れたような口調で言う加持にミサトが同意する。お互い何も身につけていない。シーツだけがその身体を隠している。

情事の後。 

お互いに未練が残っていたということか、それとも利用しあっているのか。シンジがいない家に帰りたくなかったというのが、ミサトの本音だったのかもしれない。

一度そうなってしまうと、かつてともに暮らした相手だ、馴染むのも早かった。8年間のブランクは長いようで短く、だが互いに溺れあうほどには若くはない。

先が見えないからだろうか、どこか醒めている。

「・・・・ねえ、エヴァとここの秘密、知ってるんでしょう? 人類補完計画、どこまで進んでるの?」

「・・・それが知りたくて俺と会ってるのか?」

「それもあるわ、正直ね」

いくぶん蓮っ葉にミサトが言う。加持は苦笑するしかない。

「ご婦人に利用されるのは光栄だけど・・・・こんなところじゃ話せないよ」

「今は私の希望が伝わればいいわ・・・ネルフの、碇司令の本当の目的は何?」

「こっちが知りたいさ」

そう言うと加持はミサトを抱き寄せた。軽い抵抗をみせるミサトに構わず、再び組み敷く。


部屋に響くミサトの声。そしてベッドの軋む音。


どれほどの時間がたったろう。口づけと共に加持はミサトの口に何かを含ませた。怪訝そうなミサトがつまみ出したのは小さなカプセル。

それを見つめる加持の眼差しに、ミサトはそれが彼女の望むものであると直観した。今、それを渡そうとする加持への、漠然とした不安と共に。




ネルフ本部某所。

そこにはシーツに寝ころがるリツコの姿があった。

先程まで彼女を抱いていたゲンドウの姿はもう無い。彼が朝まで共に過ごしてくれることなどついぞ無かった。

余韻に浸りながら、リツコは思う。ゲンドウのこと、そして初号機のことを。

シンジが帰ってきたことをゲンドウは喜んでいるようだ。やはり彼も人の親ということか。

だが、彼女にも引っかかっていることはあった。ずっと訊けなかったことが。

参号機が使徒に乗っ取られた時、指示があれば初号機ごと撃てとの命令をマヤは受けたという。リツコ自身はその場にいなかったが、それは明らかにおかしかった。

なぜならあの中にはユイがいるからだ。

シンジよりもむしろそちらを守りそうな気がしたのに、初号機を平気で捨てるような真似をするとは。

なにか自分の知らない秘密があるのかもしれない。

母、ナオコの時のように。


今回あれほどシンジの分離にこだわったのもそれに関係があるのだろうか。


何も分からない。だが調べなければならないと思う。

ゲンドウへの想い。それだけが今の自分の全てなのだから。







〜つづく〜









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katu@osaka.104.net



解説:


第8話、これで二十話まで終了

全体の流れからするとこれで3分の1ってところかな
三部作の法則(笑)からすると第一部完ってことで
当分休もうかしら(^^;

話的には区切りがあるような無いようなところだけどね。

前回とちがって今回は題名(の元ネタ)と内容のシンクロ率が高い。
そのまんまという説もあるが、テーマが同じだから当然か。




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