幸せってなんだろう。
形など無い。ただそう感じられることができれば、そこにあるのだろう。
それは突然奪われるもの。
いつか消えてしまうかもしれないもの。
だからこそ大事にしたい。
二人だけの時を。今、幸せを感じていることを。
SR −the destiny−
〔第9話 遍路〕
Written by かつ丸
「最後の仕事か・・・」
そう言って加持は公衆電話を見つめた。
受話器をとり、カードを入れる。一瞬躊躇して番号を押した彼の目は、いつになく真剣な光を帯びていた。
ネルフ本部、中央病棟。
ただ一つの名札が掛けられた病室を前に、シンジは佇んでいた。
隣にはレイの姿。心配そうな顔でシンジを見ている。
長い間そうしていた後、意を決したようにくちびるを噛むと、シンジは病室の扉を開いた。中にはイスに座った少女。そしてベッドに寝ている少年。
「碇くん・・・・」
今日は土曜日だ。授業はない日だったのだろうか。
いつも見舞いに来ているのだろう。トウジの寝顔を見ていたヒカリは、振り返りシンジの姿を見て驚いているようだ。
一カ月以上学校には行っていない。レイも事態を説明などしていないだろうから、怪我でもしたと思われていたのだろうか。だがシンジの身体はどこにも異常はなかった。
「・・・今頃、何しに来たのよ?」
その問いかけは決して理不尽なものではないだろう。トウジがこうなった責任がシンジにあるかどうかはともかく、もっと早い時期に一度くらい顔を出してもよかったのではないのか、その思いを彼女が持つのは自然な感情だ。
いくらシンジがそれが可能な状態になかったと知らなかったとしても。
「・・・・ごめん」
なにも言い返さずにシンジが謝る。その様子をレイは後ろから見つめていた。彼女が口をだすことをシンジが望んでいないと、きっとわかっているのだろう。
「別に私に謝られてもしょうがないけど・・・・・どうしてもっと早く来てくれなかったの?」
シンジを見るヒカリの目は厳しい。なにを言ってもきっと言い訳にしか聞いてはくれないだろう。しかし俯くこともせず、シンジはそれに耐えていた。
「・・・・シンジか?」
ベッドの上の少年、トウジの声。目が覚めたのか、ゆっくりと上半身を起こす。
「・・・・・トウジ」
「・・・ああ、・・よう来てくれたな」
穏やかな声。シンジに笑いかけるその顔には屈託など無いように見えた。
「・・・トウジ・・・・僕は・・・・僕のせいで・・・・」
「気にすんな・・・・別にお前のせいやないよ」
「でも・・・・僕が、僕がもっとうまくやってれば・・・・あんなことにはならなかったんだ」
「・・・・それは・・・・そうやったんかもしれへん。ワシはよく覚えてへんけど」
俯くシンジにトウジが言う。それは慰めているようでもあり、突き放しているようにも聞こえた。
「・・・・・碇君だけの責任じゃない」
「いいんだ、綾波」
思わず口を挟んだレイをシンジが止める。構わずにトウジは言葉を続けた。
「そやけど、アレに乗っ取られたんはワシや。それはシンジのせいやないよ」
「・・・・・鈴原」
「ワシはもうエヴァに乗ることはないやろ。結局何の役にもたたへんかったな」
自嘲気味に言い、少し目を伏せた後、もう一度トウジはシンジを見つめた。
「なあ、これからもシンジと綾波に苦労かけなあかんけど・・・・ワシのかわりに・・・・みんなを頼むな。・・・もうワシにはなんもでけへんから」
その言葉に、シンジはただ頷くことしか出来なかった。
「拉致? 副司令が? あんたたちいったい何やってたのよ」
「内通者がいました。加持リョウジ、この事件の首謀者と思われる人物です」
突然の諜報部からの呼び出し。そこに加持の名を聞いた時にミサトは全てを悟った。
「それで私のところに来たわけ? まあ私たちの経歴を考えれば当然でしょうね」
いいながら拳銃とセキュリティカードを懐から取り出し、前に置く。
「ご協力感謝します。・・・・・お連れしろ」
黒づくめの男たちがミサトの周りを固める。促されるままに立ち上がる。
おそらく独房へと続く道すがら、ミサトは自分のことではなく、自分を巻き込んだ加持のことを考えつづけていた。
「・・・・・・あのバカ」
「・・・・大丈夫?」
ミサトの家の前、これから鍵を開けようとしているシンジに、レイは声をかけた。
一月エヴァに取り込まれその後1週間以上の入院。この家に帰ってくるのは久し振りのはずだ。彼の顔色は決してよくない。それは体調のせいなのか、さきほどのトウジとの会話が原因なのかはわからないが。
「うん・・・・・平気だから・・・・ありがとう」
微笑むその顔も無理をしているように見える。やはり放っておいてはいけないだろう。
「部屋の掃除、私も手伝うわ」
「えっ、いいの?」
「ええ。・・・・ずっとこっちには来なかったから」
シンジのいない間。食事はマヤの家でとっていた。シンジの手料理でも無いのにミサトの家に行く理由は無いからだ。その間この家がどんな状況になっていたかはレイにも想像できなかった。
シンジの顔に今までと違った意味での深刻さが加わる。
「一カ月半か・・・・・ミサトさん、少しは片付けとかしてくれてたかな」
冷汗をかいたまま呟く彼にレイは肯定も否定もしなかった。知らなかったから。
荷物を持ったままシンジの身体はドアの前で固まっている。きっと開けるのが怖いのだろう。現実を見ることが。
苦笑しながらレイはシンジの腕を掴んだ。
「・・・・綾波?」
「とりあえず私の部屋にいきましょう。まだ碇君は疲れてるもの・・・」
マヤの家はきちんと掃除してある。レイの部屋もだ。しばらく休んでから帰ればいい。退院していきなり重労働をするのはやはり酷だろう。
「・・・そ、そうかな?」
シンジは少し戸惑っているようだ。別にレイの部屋に来ることが初めてなわけでもない。それに今は昼間だ、マヤはまだ職場にいる。当分帰ってくることはないのだから。
そこまで考えて、レイはシンジの戸惑いの理由が思い当たった。
思わず頬が赤くなる。そう、彼が部屋に来るのは一カ月半ぶりなのだ。
シンジの腕を掴んだまま考えた。果たしてミサトの家の掃除とどちらが重労働になるのだろうか?
「お久し振りです、キール議長。いささか手荒な歓迎ですな」
暗い部屋の中心。後ろ手に括られて冬月はイスに座らされている。本部内で突然誰かに襲われ意識を失い、気がつけばここにいた。
いずことも知れぬ場所。だが彼の周りを取り囲むモノリスのホログラフが全てを物語っていた。
全ての黒幕がついに動きだしたのだ。
「君とゆっくり話をするためには当然の処置だ」
「議題としていることが急務なのでね、分かってくれたまえ」
七つ目の顔とナンバーだけが描かれた黒いモノリス。そこからは声しか聞こえて来ない。なじみのあるキール・ローレンツ以外の者たちについては、それが誰かは冬月にも分からない。
分かる必要などないのだろう。
ゼーレ。
セカンドインパクトを起こし、今またサードインパクトを画策する者たち。
裏死海文書を教義とし、その遂行のためならいかなる手段も厭わない集団。
かつて碇ユイが所属していた団体。
そう、すべての始まりは彼女だった。ゲンドウすらも巻き込まれただけにすぎない。そのことはゲンドウ自身よりも冬月の方がよく理解しているだろう。
「S2機関をその中に取り込み、エヴァンゲリオン初号機は無敵の存在となった」
「我々は新たな神をつくる気はない」
周りを取り巻くモノリスが話しかけてくる。全部でいくつあるのか。
ここから帰れるかどうかもわからない状況のはずだが、冬月は不思議と落ち着いている自分を感じていた。
「具象化された神など不要なのだ」
「あの男に神など渡すわけにはいかんよ」
「冬月先生、碇ゲンドウとは、信用に足る人物ですかな?」
その質問には苦笑するしかないだろう。ゲンドウへの第一印象などろくなものではなかったのだから。
まだこの国に四季があったころ、あのころは世紀末の不安すらも、みなただのイベントのようにしか考えていなかったような気がする。
本当に未曾有のカタストロフィが起こるなど、誰が本気で思っていただろうか。
最初に会った時、冬月は一介の助教授で、ゲンドウはただの大学講師に過ぎなかった。世界の秘密など知る場所にはいず、いささか変わり者と呼ばれながらも普通の生活を送る市井の者でしかなかった。
全てを知っていたのは碇ユイだけ。だから彼女に惹かれたのかもしれない。なにものをも見通すかのような深い色をしたその瞳に。
「ゼーレがとうとう動きだしたのね。どうするの? これから」
黄色い瞳の少女が問いかけた。司令席に座るゲンドウは何事も無いように白い手袋をつけたその腕を組んでいる。赤いサングラスを掛けたその顔は前を向いたままだ。
「こちらはまだ何もしていない。掴める尻尾などありはしないさ」
「冬月先生がなにか言うとも思えないしね・・・・・・でも帰してくれるのかしら?」
「・・・・・わからん」
珍しく口ごもる。初号機がS2機関を取り込んだことから、ゼーレが動くこと自体は予想していた。しかし冬月を直接拉致する、それほどの強行手段にでることまでは考えていなかったのだ。
「加持くんにも困ったものだけど・・・ミサトちゃんを拘束する必要は無いんじゃないの?」
「・・・・葛城三佐の処置は止むを得んさ。放っておいたら彼女自身が動くだろう、それでは混乱するだけだ」
その言葉にレヰが微かに笑う。
「まあそう簡単に飼い馴らせる子たちじゃないものね。・・・・・でも、加持くんは少し急ぎすぎたみたいね。これじゃ帰ってこれないわ」
「承知の上だろう。あいつ自身がまいたタネだ。いちいち気にしてはおれんよ」
「あなたにとってはそうでしょうね。・・・・まあいいわ。どうせしばらくは様子を見るしかないんでしょ?」
含んだ物言いをするレヰにゲンドウが訝しげな顔をする。
「・・・何をする気だ?」
「別に・・・・・ただあの子には貸しがあるから、消えるなら返してからにして貰おうと思って」
「好きにすればいいさ」
呆れたように嘆息したゲンドウに、レヰは妖しげな微笑みを見せた。
横たわる少女の肌に手をはわせる。陶器のような色。産毛すらもほとんど生えていないような気がする。すべらかな感触。そっと手を離した。
もう落ち着いたのだろうか、レイの息遣いはすでに静かになっていた。頬の赤みだけが先程までの痴態の名残を見せている。
ベッドの上で半身を起こし、シンジはレイのことを見つめていた。
シーツにくるまるようにして寝ころがる蒼い髪の少女。その目はまどろむように薄く開かれている。焦点はあっていないようだ。だが眠っているわけではない。
分厚いカーテンが下界とここを遮断している。窓の外に射す鋭い日差しも、うっすらとしか届いて来なかった。
帰ってきたという感慨はあまりない。エヴァの中では時の流れを感じることは無かった。
しかし彼女にとっては長い時間だったのだろう。
シンジの腕の中で快感を貪りながら、レイはずっと涙を流していた。確かめたかったのだろうか、シンジの肌には彼女の爪痕やキスマーク、そして歯形すら残っている。
それを責めるつもりはない。そこまで感情をさらしてくれる彼女のことが、むしろ嬉しくシンジには思えた。
レイがいるから・・・・シンジはここに戻って来れたのだから。
少女の瞼が少しずつ開き、紅い瞳がシンジの方をむいた。
「・・・・何見てるの?」
シーツを胸元にたぐりよせるようにしながら、レイが恥ずかしそうな顔をする。
シンジは何も答えず、ただ微笑んでみせた。片手を胸元に置いたまま、レイがシンジにもう一方の手を差し出し、その胸に触れる。
筋肉も脂肪もあまりついていない、華奢な身体。浮きでた肋骨を確かめるようにレイの指がなぞる。シンジはただされるがままになっていた。少しこそばゆい。
「ちゃんといる・・・・」
「うん・・・・僕はここにいるよ」
苦笑するシンジに、レイが真剣な目をする。
「・・・どこにも行かない?」
「どこにも行かない。綾波のそばにいるよ」
それは誓い。シンジの真摯な口調がレイにも届いたのだろう。和んだ表情をすると、彼女はシンジの腕をとり引き寄せた。
再び抱き合い、深い口づけをかわす。やがて二人のくちびるが離れた時、ささやくようにシンジが言った。
「今日はありがとう」
意味が分からずレイが怪訝な顔をする。
「トウジに・・・・・トウジに謝ることができたのは・・・・綾波がいてくれたからだから・・・」
「私はなにもしてない・・・」
「本当は許して貰えないかもしれないって思ってたんだ。でも、綾波がついててくれたから、トウジやみんなに嫌われても憎まれても、僕は綾波さえいてくれればいいって思ったから・・・」
「碇君・・・・」
「だから、今日もトウジのところへ行けたんだ。僕は、狡くて、卑怯で・・・・でも、綾波にだけは、君にだけは嫌われたくないから」
シンジが一瞬口ごもり、しかしすぐに顔をあげた。逃げては行けない、きちんと伝えなくてはいけない、その思いを胸に。
「あの時、僕は逃げてた。父さんにエヴァに乗らなくていいって言われて、それに抵抗もせずに従って・・・・そして君に酷いことを言った。最低だったと思う」
「もう、いいの」
「・・・怖かったんだ。居場所が無くなるんじゃないかって。綾波も最後は父さんの所に行っちゃうんじゃないかって」
ゲンドウの名が出たことに、レイの顔色が変わる。構わずにシンジは続けた。
「でも、それでも、僕はもう逃げないから。たとえ父さんが何を考えていても、何をしようとしていても、僕は、僕は綾波のそばにいるよ」
「碇君・・・・・・」
「もしかしたら、それは君を苦しめることになるのかもしれない。それでも・・・・僕は、それを止めない。父さんにだって渡さない。そう決めたんだ」
不安げな色をしているレイの瞳を見つめる。胸に彼女への想いがわき上がってくる。思わずシンジは彼女のくちびるに貪りついていた。
「・・・・・・んっ・・・」
きつく抱きしめた彼女の身体は、シンジの腕の中でそのまま消えてしまいそうなくらいか細い。
誰にも渡さない。
たとえエゴだとそしられてもかまわない。
ゆっくりとくちびるを離し、シンジはもう一度レイを見つめた。
腕の力をゆるめる。息がつけたのかその顔がは少しだけ安堵の表情をみせた。
「ごめん・・・・・・」
呟くシンジの言葉、それは何に対して謝ったのだろうか。蒼い髪の少女は微笑んで首を振った。
「いいの・・・・・・・・ありがとう」
そしてシンジの胸元に顔を寄せる。応えるようにレイを抱きしめ、シンジは遠い目をした。
・・・・・・僕は帰ってきた、彼女の元に・・・これでいいんだよね。母さん。
・・・・本当にこれでよかったのかね、ユイくん。
初めての接触実験で、エヴァの中に消えた彼女への問いかけ。彼女がそれを望んでいたことをあらかじめ知っていたのは冬月だけだろう。
ゲンドウはもちろんのこと、今、冬月の周囲で口々に質問するゼーレの者たちでさえ、それは知らなかったに違いない。
サードインパクトを超えて、人の記憶を残す方舟。仮に使徒が勝ったとしても初号機さえあれば人の生きた証は消えない。たとえ全ての人がリリスに帰ったとしても、人の心を持つ存在として生きていくことはできる。
たとえ一人でも。
死海文書の記載にもない。それはゼーレの計画とは別の、ユイただ独りの願い。
彼女は知っていたのだ。どうあがこうと人の滅びが避けられないことを。
ならばどうして冬月に彼女を止められるだろうか。
ゲンドウが知っていれば止めたかもしれない。だから彼には告げられなかったのかもしれない。ユイが消えてからゲンドウがみせた動揺は、冬月に密かな優越感を持たせていた。
彼女を得たはずの彼が、結局は捨てられたことに。真実を知らされていたのが彼でなく自分だったことに。
一週間の失踪の後、息子すらも手放し全てのしがらみを断ち切ったゲンドウは、まさに羅刹となっていた。彼の頭の中にはユイと再び会う、そのことしかないようだった。
滅びの近づくこの星で、ユイの望みさえも無視して彼女をとりもどそうとあがき続けている。
それすらも、彼女は知っていたのだろうか。ゲンドウが、どこまでも彼女を求めることを。
「冬月先生、答えていただけませんか? 碇が、あの男がいったい何を考えているのか」
モノリスの一つが訊く。くり返される同じ質問。
真実を告げれば彼らはどう思うだろう。ゲンドウも、そして自分も、ユイにもう一度会う、それ以外何も考えてはいないと。
「・・・・さて、これからどうするかな」
さほど深刻な様子も無く、加持はつぶやいた。
第三新東京市を見おろす公園。
冬月をゼーレに引き渡した後、もう一度だけとここに戻ってきた。この先くることは無いだろうから。
煙草に火をつけてしばし街を眺める。余裕があるわけではない。監察部や諜報部に知れたら標的になる、実際、彼らは加持を追っているだろう。
だが冬月をさらって1日も経っていない今なら、まだ彼らの指揮系統は混乱しているはずだ。ここで5分や10分過ごすくらいは問題ないだろう。
ビルが立ち並ぶ街。数カ月しか過ごしていないが、不思議に懐かしい匂いがする。
ミサトともう一度会えた街だからだろうか。
伝えられるだけの情報は渡した。だが、結果的に彼女を裏切ったことになるのだろう。しかしゼーレの意を受けて自分はここにいる以上、指示を拒否することは出来なかった。
それはすなわち死を意味する。
冬月の拉致が成功したことで、加持の仕事は終わった。もうネルフに戻ることはできまい。
ゼーレからも好きにしろと言われている。用なしということだろう。
今分かっている情報を持って政府に行く。それだけで取り敢えずの保身は図れるはずだ。
だが、加持の中でなにかがくすぶっていた。
あまりにもあっさりと自分を自由にしたゼーレ。知りすぎたものは消される、それがこの世界のルールのはずだ。
そして冬月の態度、達観しているだけではない、彼が加持を見る目はどこか哀れんでいるようにも見えた。
それが示すことはただ一つ。
自分は利用されているだけだということ。
その認識は愉快だとは言えなかった。8年間忘れられなかった想いと引き換えにしても、自分はたどりつけなかったのだろうか。真実の切れ端にしか。
立ちのぼる紫煙を見る。
・・・・まだ、間に合うのかもしれない。
生き延びられるかはわからない。だが、このまま冬月がネルフに帰ることがなければ、ミサトは自分を許してはくれないだろう。
ミサトともう一度会うためには、他に道は無いのではないか?
「ここにいたのね?」
突然、背中から声が掛かる。思わず背広の内ポケットに手を伸ばしかけ、声の主に気づいた。ゆっくりと後ろを向く。
そこにはやはり蒼い髪の少女がいた。
「迂闊よ、加持くん。マギの探査能力をなめてはいけないわ」
妖艶な笑顔とともにレヰが言う。
加持はただ黙ってその顔を見つめていた。
〜つづく〜
かつ丸にメールを送る
katu@osaka.104.net
解説:
2週間ぶりの第9話です。
一応第2部開始という形にはなりますが、区切り的にはそんなにちゃんとしてませんね。
全体としては3部構成というより前後編の形のほうがしっくりくるかも
とりあえず第二十一話、結構残りは少ないようで多いな。
第10話へ
SSインデックスへ
トップページへ