「8年ぶり、かしら」

「・・・ああ、あの時とは立場が逆だけどな」

「そうね。・・・これは同情? それとも、あの時のお返し?」

「さあな。傷心のご婦人を放っておけるほど、俺は人間が冷たくはないさ。特に相手が魅力的な時はね」

「・・・その辺が軽いのよね。でも、ありがとう」

「いいさ。・・・すまなかった。俺がもう少し早く・・・」

「もういいわ。あれが母さんの望みだったのなら」

「そうか・・・」

「いつから知っていたの?」

「・・・初めて会った時の俺を呼ぶ口調、かな。それから調べだした」

「じゃあ、レイのことも知っているのね」

「彼女を造った本当の目的までは分からなかったけどね」

「知らない方がいいわ。長生きしたいのなら」

「知らなくても長生きできるとは限らないさ」

「・・・私も知らないのよ。本当のところは」

「それでいいのかい?」

「ええ、そう思っていたわ。・・・今まではね」





Mの肖像

〔第1話 初陣〕

Written by かつ丸




「眠っているの?」

第2ケイジ。

弐号機から出ているカプセルを覗き込みながら、葛城ミサトは尋ねた。

その中では銀髪の少年が、目をつぶったまま微笑んでいる。

「ええ、心拍数、脳波、血圧、いずれも正常値。眠っているとしかいいようがないわね」

傍らに立ち、同じように中を見ていた赤木リツコが答えた。

「どうして起こさないの? カプセルが開かないって事?」

「いえ、マヤが見つけた時に一度開けたんだけど、すぐに生命維持に支障がでたのよ」

その言葉に、怪訝そうにミサトが尋ねる。

「支障って・・・集中治療室とかに運ぶべきなんじゃないの?」

「たまたま司令がモニターしていて・・・戻すように指示したのよ。そうしたらまた回復したそうよ。LCLの成分はうちのと同じだったし」

「司令が? ・・・どういう事なの?」

顔を上げ、リツコが弐号機を見る。

「さあ、ただ私よりこれについては詳しいのかもしれないわね」

「・・・それで、彼はどうするの? このままにしておくつもり?」

「まあ、しょうがないでしょうね」

ミサトの顔が厳しくなる。

「生きているんでしょう。放っておいていいわけないじゃない。こんな子供を」

リツコが冷たく答える。

「出したら死ぬかもしれないのよ。そうなれば弐号機は使えなくなるわ」

「・・・どういう事よ?」

再び、カプセルの中に目をやり、リツコが言う。

「彼はファティマ。実際に弐号機を動かしていたのは彼よ」

「ファティマ? じゃ、じゃあ、レヰはなんなのよ!? ちゃんと説明しなさいよ!」

「彼女は・・・ただのパイロットよ。別にエヴァとシンクロができるわけじゃなかったみたいね」

ミサトがリツコを見る。

「じゃあ、チルドレンでもなんでも無かったってことなの。マルドゥック機関がちゃんと選定したんでしょ?」

「彼女は失踪したし、ドイツにも記録は残っていなかった。だから、その辺りの経緯は分からないわね。ただ一つだけ言えるのは、彼がいればだれでもエヴァを操縦できるわ。あなたでもね」 





保護者面談。

午後のホームルーム。

担任の教師からその日程を聞いた時、綾波レイは特に関心を持たなかった。

彼女の保護者として登録されているのは、かつてはリツコだった。今では同居人であるミサトだろうか。

どちらにしても、今後の進路などといったものにあまり意味はない。

だから、彼女にそれを伝えるつもりはなかった。


もう一人の同居人である、黒い髪の少年を見る。

彼女の斜め前、少し離れた場所。そこに彼、碇シンジの席がある。

前を向く彼の視界には入っていない。しかし、プリントを受け取り、うつむく少年の横顔はレイの位置からもよく見えた。

最近彼女には見せない、暗い表情をしている。彼と初めてあったころ、よく見た表情。

それに漠然とした不安を感じる。何を考えているのだろうか。

進路。将来。彼にとっては意味のあることなのかもしれない。

プリントに目を通すこともせず、ただ、レイは彼を見つめ続けていた。








「やはり問題はここね」

ディスプレイに映し出された回路図、その一点を見つめながらリツコが言った。

制御室。改装された青い色のエヴァ零号機。技術部総出で、起動試験が続いている。

パイロットは乗っていない。
アンビリカブルケーブルから送られる電力によって、エヴァの素体が持つ筋肉に直接信号とエネルギーを送ることで、稼働時に則した運動効率を測定する。そのための実験。

弐号機パイロットが不在の現在。ネルフの技術部門を総括するリツコにとって、一度は半壊した零号機を実戦配備可能な状態にすること、それが急務だった。

先の作戦で、レイが弐号機に搭乗し、使徒を殲滅した。しかし、S2機関をはじめ、未知の領域が多すぎるその機体は、メインとして運用するにはあまりにもリスクが大きい。

一刻の遅延も許されない。この部屋も緊張感で包まれている筈だったが、彼女の問いかけにいらえは無かった。

「・・・・・マヤ?」

傍らの女性を見る。

端末をチェックしている筈の彼女、伊吹マヤは、リツコの問いかけも聞こえない様に、ぼんやりと零号機を見ていた。

「マ・ヤ・!」 

リツコの怒鳴り声が響く。

その言葉にビクリとし、慌てて端末に目を戻したマヤが、キーボードを叩きながらリツコに答える。

「・・・・えっと、問題・・ですよね? ・・・ここかな、ここの変換効率・・・ですよね」

リツコが顔をしかめる。

「・・・まあいいわ。もう一度同じ設定で、相互分子変換を0.1だけ下げて」

マヤの方を見て妖しく微笑む。

「再起動実験始めて。マヤ、今度ぼうっとしてたら・・分かってるわね?」

「は・・・はい」

リツコの言葉に、青くなって下を向いたマヤだけでなく、その場にいた全員が、部屋の空気が冷えるのを感じていた。





ネルフのエレベーターは長い。

途中に止まる所が少ないことから、感覚的にもそれは強く感じられる。

大深度施設のため、やむを得ないのだが、ミサトは今、それをいまいましく思っていた。

「こんちまた、ご機嫌ななめだね」

その原因となっている男、加持リョウジが能天気にミサトに話しかける。

「あんたの顔見たからよ」

顔をそむけて答える。加持が苦笑する。

二人きりのエレベーター。到着するのはまだまだ先だった。






受話器を置いてシンジが振り向く。

暗い顔。

訝しげに見つめるレイの視線に気づいたのか。無理に微笑みながら彼は答えた。

「ミサトさんに言えって。・・・忙しいんだってさ」

「・・・そう」

それはそうだろうとレイも思う。

国連特務機関ネルフ、その全てを握る独裁者。一国の宰相ほどの権力を持ち、様々な政務を抱えている彼の父親には、子供の進路指導などにかかずらわっている時間などあるはずがない。

それが理解できないわけでもあるまい。

横に並び、ネルフへの道を歩きながら、黙ってしまった彼の様子を伺う。

何か考えているのか。黒い瞳の奥は窺い知れない。

ただ、俯きがちな彼の横顔をみていると、なぜか胸が苦しくなる。

寄り添ってシンジの腕をそっと握る。驚いたシンジがレイの方を向く。やがて瞳の陰りが薄まる。

いつもの微笑み。

そしてレイの手が握り返される。あたたかい。

「ありがとう。・・・でも、そう言えばなんだか変だったんだ。電話の切れ方」





「やはり故意かね」

「はい、正、副、予備の三系統が同時にストップしています。確率的に事故はありえません」

発令所。明りは全て消えている。

停電。
ごく一部を除き、電気回線がすべてとめられていた。

科学技術の粋を極めたここネルフで、起こってはならない事態。しかし、ゲンドウにも副司令の冬月にも、特に慌てた様子はない。

「目的は回線の調査だろう」

「復旧ルートを探るということか」

「ダミーのプログラムを走らせます。全体把握は難しくなるでしょうから」

「たのむ」

踵を返したリツコの背中を見ながら、冬月が呟く。

「本部初の被害が、使徒ではなく人間にやられたものとはな」

「所詮、人間の敵は人間だよ」





「・・・ただいま、正体不明の物体が本地点に対し移動中です。住民の皆さまは速やかに指定のシェルターへ避難して下さい・・・・」

上空を飛ぶセスナ機。遅番で出勤し、閉ざされた本部へのドアの前で立ち往生していた日向マコトは、その放送の意味するところを知って青くなった。


そのころ、クモのように長大な4本の足を持つ使徒が。ゆっくりと第三新東京市へと向かっていた。





「こっちよ」

暗い通路。非常灯のうっすらとした光だけが辺りをほのかに照らしている。

シンジを従えるように、レイが歩いていく。

本部とは連絡がつかなかった。その場合、第1種配備の発令とみなすよう、緊急時のマニュアルには書かれていた。

レイも道を知っているわけではない。しかし、ここは彼女が生まれた場所だ。だから、なんとなくわかる。

もうどれだけ進んだだろう。普段、歩いてここを移動することなどない。

途中何カ所かあった電動ドアは、非常用の開閉装置でシンジが開いた。

普段ほとんど使わないため錆びついたハンドル。それを動かすのはかなり力が必要だっただろう。

手伝おうとするレイを制し、開けきった時のどこか誇らしげな顔。けして逞しいとはいえない、だから、そんな姿も、頼もしいというよりはむしろほほえましい。

浅間山に行ったあの日から何日たったろう。なんだか久しぶりに二人きりになっているような気がする。

学校でもネルフでも、そして家でも、いままでそうなる機会はなかった。

同居のことはクラスの誰にも話していない。
そのため、通学は相変わらず別々だったし、教室ではほとんど話さない。

ネルフに行く時は一緒だといっても、全く人目がない訳ではない。

そして家にはミサトとペンペンがいた。

不満なわけではない。一日、何度か交わすキス。それで絆は確かめあえる。

しかし、今の二人が求めているのはそれだけではないのかもしれない。

彼も気がついているのだろうか。顔が少し赤いようだ。多分、レイも同じなのだろう。

いつしか、お互いに言葉を無くしていた。


ゆっくりと下っていく。周りの様子はよくわからない。

ゆるやかな階段。非常用なのか、これまでの通路よりも狭い。シンジの息づかいを感じる。非常灯の明りもここまでは届かない。


暗闇。

まるであの時のような。


一瞬、気を抜いたせいか、レイが躓いた。

倒れかける。気づいたシンジがレイを受けとめる。

そのとき、なにかが弾けた。

シンジがレイを抱き寄せる。いつもより力強い気がする。

本来なら、ここもモニターされているはずだ。しかし、この状態ではその心配はないだろう。

それを自分への言い訳にしたのか。レイも抵抗しなかった。






エレベーターの中。非常灯だけがともっている。

閉じ込められてもうどれくらいたったろうか。空調も止まっている。

「アレに乗るつもりなんだろう?」

暑さのため、胸元を少し開いているミサトの方を見ずに、加持が尋ねる。

「・・・・ええ。でも、なんであんたが知ってるのよ」

「りっちゃんから聞いたのさ。セカンドチルドレンの監督は、こないだまで俺の任務だったしね」

ミサトが加持を睨む。

「あの娘の行き先に心あたりがあるの?」

軽く加持が肩をすくめる。

「まあ、いいわ。・・・シンジくんやレイにばかり、子供たちばかり戦わせられないじゃない。大人が戦えるなら、それにこしたことはないわ」

「それだけじゃないだろう?」

ミサトが自分の胸のペンダントを掴む。

「・・・あなたも知ってる通りよ。私は倒したいの。自分自身の手で」






遠くで声がした。

思わず身体が強張る。

彼女を抱きすくめている少年にも聞こえたのだろう。動きが止まっていた。

声が近づく。エンジン音。すぐ近くに道路があったようだ。

スピーカー。叫んでいる声に聞き覚えがある。オペレーターの誰かだっただろうか。

通りすぎる。その時確かに聞こえた。

使徒接近と。






突然、車が飛び込んできた。街宣車。

車のまどから身を乗り出し、マイクを握りしめた日向が叫んだ。

「現在、使徒接近中! 直ちにエヴァ、発進の要ありと認む!」

その言葉にゲンドウが反応する。

「冬月、後を頼む」

「碇?」

「ケイジでエヴァの発進準備を進めておく」

「手動でか?」

「緊急用のディーゼルがある」

司令席から下に向かって叫ぶ。

「弐号機の準備を先行して進めろ!」

ゲンドウの指示に作業員たちが動く。彼自身も発令所の下段に降りる。

「弐号機パイロットの選定を頼む」

近づいてきたリツコにそう囁くと、ゲンドウはケイジに向かった。

ゲンドウの言葉に一瞬固まっていたリツコだが、やがて少し微笑むと、後ろを振り向いた。





地上。

誰も乗っていない車が、ドアを開けたまま何台も道路に放置されている。

無人の街。

そこを使徒が歩いていく。何かを探すように。

やがて使徒の動きが止まる。そこは、ネルフ本部の直上だった。






ダクトの向こう側から人の声が聞こえる。

切れ目を蹴るようにして破壊し、そこからレイが下に降りる。シンジも後に続く。着地には失敗したが。

リツコが驚いたように二人を見る。

「あんたたち・・・よく来たわ。早速搭乗の準備をして。弐号機はもう出るから」

シンジが弐号機を見る。金色の機体。すでに動きだしている。

「ナイトオブゴールド、あの人が帰って来たんだ・・・。でも、どうやって、何も動かないのに」

「司令のアイディアよ。人の手でね」

リツコが視線で示した。そこには汗だくになりながら、作業員たちともにロープを引いているゲンドウの姿があった。

「・・・さあ、急ぎなさい。弐号機パイロットだけじゃ不安だから」






匍匐前進で、初号機と零号機が通路を進む。少し前には弐号機の姿。

それぞれ非常用バッテリーを積んでいる。しかし、それほどの長時間起動はできない。

突然、叫び声。

弐号機が縦坑から落ちたようだ。ゆっくりと近づく。

上から何か液体が落ちてくる。下からは何かが焼ける様な音。シンジが恐る恐る下を見る。

弐号機が縦坑の床に倒れている。液体がかかったところから煙が出ている。

周囲の床や壁も溶けている。

溶解液。

隠れるようにして上を見る。使徒が腹部からそれを出している。

これでは上にはあがれない。


レイがシンジに言う。

「碇君、私が盾になるから。溶解液が途切れた瞬間、ライフルで使徒を撃って」 

「うん、・・・確かにその方法しかないよね。でも、綾波を盾になんかできないよ」

「でも・・・」

初号機がライフルを床に置く。

「僕の方が前にいるから当たり前だよ。それに早くしないと弐号機がもたないし」

弐号機については必ずしもシンジの本音では無かったのだが、レイは渋々納得したようだ。

「じゃあいくよ、綾波」

その声を合図に、初号機が飛び上がる。縦穴の四方に手足をかけ踏ん張り、盾をつくる。

胸部に溶解液がかかる。焼けるような痛み。おもわず叫びが出る。

零号機の機体が横穴から出る。壁につかまり、ライフルを構え、上を見上げる。

「ぐうっ、・・・まだだよ!」

自分の胸が溶かされる感覚に耐えながら、シンジが叫ぶ。

「碇君!」

レイがシンジの名を呼ぶ。 

ひたすら落下する液体が初号機にふりそそぐ。

何かを焼くような音。うめき声。

「どいて! 碇君!」

悲鳴のように叫ぶレイの声も、まるで聞こえないかのように初号機は動かない。

そして霞みかけたシンジの目に、一瞬、液の落下が止まるのが見えた。

「今だ!!」

そう言って身を避ける。零号機が使徒に向かってライフルを撃つ。

近距離から打ち出されたそれは、使徒の腹部にいくつもの穴を開け、やがて使徒は、がっくりとその身体を地面に落とし、動きを止めた。

「碇君!碇君!」

落下してきた初号機を受けとめ、画面の向こうで痛みに顔をしかめているシンジにレイが叫ぶ。

それにゆっくりと微笑みをかえして、シンジはそのまま気を失った。





ようやく回線が回復し、通信設備が動きだした発令所から、リツコが呼びかける。

「何をしてたの弐号機パイロット。結局何の役にも立っていないじゃないの」

モニターの向こう側からは涙声で答えがあった。

「ひ、ひどいです先輩。こんなのいきなり乗れなんて言われて、戦えるわけないじゃないですか!」

「でも、シンジくんのときもそうだったんだから。それにあなた戦闘訓練は受けたんでしょう?」

金色のプラグスーツに身を包んだ、マヤが答える。

「使徒と戦う訓練なんて受けてません。それにどうして私なんですか!青葉さんだって、日向さんだって・・・」

「まあ、いいじゃないの。あなた、あの子にご執心だったみたいだから。どう?一つになった感想は」

リツコがいたずらっぽく微笑む。



そのころ、ミサトと加持は、エレベーターからの脱出をようやく果たしていた。事態を何も知らないままで。

「ふー、ひどい目にあった。結局なんだったのかしら」

「さあね。・・・でもいいのか? トイレだったんじゃないのか?」

「あっ!!」

その言葉に思い出したようにミサトが駆けていく。その姿を加持がうれしそうに眺めていた。








自分は弱くなったのかもしれない。


教室。

クラスメートたちと、楽しそうに話しているシンジを見つめながら、レイはそう思った。 


シンクロの結果による痛みで、実際に身体が溶けたわけではない。だからもうなんともないのだろう。レイの視線に気づかず、彼は屈託の無い顔をしている。

しかし、レイの心は晴れなかった。

シンジが気を失ってから、再び目を開けるまでの長い時間。いや、それは一瞬だったのかもしれない。だが、ひたすら彼の名を呼ぶしかなかったレイには、まるで永遠のように感じられた。


あの時の気持ちはなんだったのだろう。


自分にはなにもないと思っていた。

エヴァに乗ること、命令に従うこと、それだけが自分の絆なのだと。

水槽に漂う自分と同じ顔をしたモノたち。

人の心を持たない自分はアレと同じだと思い、それが露顕することに恐怖していた。 

だから消えてしまいたかった。彼に会うまでは。


あの日。

セカンドチルドレンが言った言葉。

人ではない。

それを最もよく知っているのはレイ自身だった。


けれども、彼は受け入れてくれた。

彼がくれた絆、彼のぬくもり。痛み。歓び。


・・・人になれるのかもしれない。


自分のような存在であっても。

彼がいてくれる限りは。


そのことを、あの人が認めるかどうか分からない。


しかし、それを自分はずっと望んでいたはずだ。人になりたいと。


黒い瞳を持つ少年を見ながら思う。

彼がレイを変えていく。彼女が望んでいた通りに。


彼のもとにはレイの居場所がある。

だから、彼といると、とても安らかな気持ちになれる。それは本当だ。


しかし、それとは別に、もっと違った感情がある。こうして彼を見ていると胸の奥からわき上がってくる。

それが何なのか。レイにはわからない。マグマの中で、そして昨日、使徒と戦って、その時生まれた気持ち。

これも人の心の一つなのだろうか。


なぜか逃げ出したくなる。

シンジから、ネルフから、全てから。

足元が崩れ落ちるような感覚。まるで自分が壊れていくようだ。


昔はこんなことはなかった。

彼と出会ってから生まれた気持ち。


これが代償なら、本当に自分は耐えられるのだろうか。




人になることに・・・。









〜つづく〜








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katu@osaka.104.net


解説:

「へっぽこマヤ」三部作、第一話です。(笑)
この話の時点でマヤがパイロットに選ばれたのは必然でしょう。
ミサトがいれば当然自分が乗って、バスターランチャーを使徒に向けて発射・・・第三新東京市壊滅・・・という事態になっていたでしょうが(^^;;
何故か彼女はエレベーターの中にいましたから(笑)
マヤはあまり違和感無いでしょうけど、ミサトのプラグスーツ姿も見てみたい気もしますね。案外似合うかも(^^
リツコは・・・・なんか「ふーぞく」のようになってしまう(爆)

別に弐号機には誰でも乗れますから、マコリンやシゲルン、それこそゲンドウでも良かったんですが(^^;
男・・・嫌いだから(笑)

と、いうわけでこの話の主人公はミサトとマヤとレイです。
シンジは添え物なの。


この三部作では意識的にレイの視点中心で書いてます。
多分に実験的な意味合いもあったので、分かりにくいところ等あればご指摘ください。





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