プロローグ |
『先生の大事な本って何ですか?わたしの大事な本は・・・』 そのファンレターは質問から始まっていた。 パーティ会場へ行く準備も終わり出発するまでに出来たちょっとした時間。 あたしは今まで忙しくって 読むことの出来なかったファンレターを、一通一通読んでいた。 その中での一通。 その些細な質問の後、あたしのコミックが宝物ですとか書いてあるけど、 その些細な質問であたしは読むのが止まる。 あたしの大事な本。 真っ先に思いつくのは5冊あった。 一つはあたしが始めて作った同人誌。 南さんが買ってくれた物だけど、今はあたしの手に戻ってきている。 一つはあたしが初心に戻って作った同人誌。 この同人誌があったから、今のあたしが居る。 一つはあたしの漫画が始めて載った雑誌。 仕事としての漫画が辛くて楽しいことと始めて知った。 一つは始めて出たあたしのコミック。 これが本屋さんで売れるのを見たとき、あたしは感動で泣いた。 最後の一冊。 これだけはあたしが描いた物じゃなかった。 でも、大切な、本当に大切な本。 あたしは大事にしまってあるその本を取り出す。 何度も何度も読んで端の方はもうボロボロだけど、 あたしはこの本をまだ何度も何度も読んでいく。 だって、あいつに憧れることになった同人誌だったから。 |
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