ボールPentel使用記(前編)

  1.はじめに
 1.1:ロングセラー私見
 最近、と言うか少し前からテレビやラジオそして雑誌で昔から(ほとんど)変わらぬ商品、いわゆる『ロングセラー商品』と呼ばれる物が取り上げられる事が結構目につきます。
ある時は製造現場や製造者のドキュメント的記事だったり、またある時は通信販売の目玉商品だったり、その形態もさまざまです。
ただ、紹介されている物の多くは「いかにも…」と言った感じのする値段の高額な商品です。
確かに、昔からほとんど変わらないで生産されていると言う事は凄い事ですが、この様な話ばかりを見聞きしていると『ロングセラー商品=高額な商品』と言うイメージが勝手に出来て上がってしまいそうです。
しかしながら、廉価な商品の中にもロングセラー商品は幾つも存在します。
普段から何気なく使っている廉価な商品の中には幾つもロングセラーと呼べる商品が幾つも存在するのです。
安全対策の面から若干のデザインや素材の変更があるものの、廉価なロングセラー商品はその値段をあまり変える事無く私たちの生活の中に見事に溶け込んでいます。
そんな数ある廉価なロングセラー商品より今回ぺんてる株式会社の『ボールPentel(ボールぺんてる)』を取り上げる事にしました。
なお、ボールPentelには幾つか種類がありますが、その中でも文房具店で見かける事の比較的多かった『ボールPentelB100』と言う製品を元に話を進めていきます。
ですから、文中に特に断りがない場合はボールPentelと表記されているものについてはボールPentelB100を指す事とします。
なお、この『ボールPentel』はところによっては『ボールぺんてる』と言う表記で紹介されている事もあるようですが、本文中では現有製品の軸にある商品表記の『ボールPentel』で統一する事にします。

 1.2:不思議な書き味
 そもそも私が初めてこのボールPentelを手にしたのはもう20年以上前の事になりますが、その頃の記憶をたぐってみると、樹脂製のペン先(チップ)と水性インキの使用、ボールペン(油性ボールペン)ともサインペンとも違う書き味に「一体これは何だ?」と正体不明の筆記具と感じたものがあります。
後になって使用した金属ペン先の水性ボールペンともまた違った書き味ですからそれこそ謎が謎を呼んだ感じでした。
それから10年以上経って文房具を扱った幾つかの書籍を目にした時に『ボールPentel』と言う『商品名』と、これが『水性ボールペン』である事を知りました。
『ボールペン=金属製ペン先』と言う先入観があった私には、これが『水性ボールペン』である事は衝撃的でした。
その正体が長い間分からなかった理由は、最大の特徴である『樹脂製ペン先』を採用していると言う他の水性ボールペンには一切無い特徴によるものでした。

 
  2.ボールPentelとは?
 2.1:ボールPentelの紹介
 ボールPentelは1972年(昭和47年)に発売された日本における、と言うよりも世界における(商品としての)水性ボールペンの草分け的存在です。
とは言うものの、樹脂製ペン先自体は、日本におけるボールペン開発者(現在の透明軸の単色油性ボールペンの原型である木軸の鉛筆型油性ボールペンの開発者)であるオートボールペン(現オート株式会社)創業者の故中田藤三郎氏が研究されていたものです。
また樹脂製ペン先を使用した水性ボールペンは、ボールPentel以前に『ローリングライター』と言う製品がぺんてる株式会社から発売されていますから、ボールPentelが『(製品としての)世界初の樹脂製ペン先使用の水性ボールペン』と言うわけではありませんが、発売当初の姿形をほとんど変えずに現在に至っています。
なお、ボールPentelは財団法人日本産業デザイン振興会のグッドデザイン賞、グリーン購入法適合商品(再生プラスチック使用率90%)、GPN(グリーン購入ネットワーク)データブック掲載、エコマーク認定、と言ったものを受けています。
 2.2:Made In Japanの舶来品
 日本という国は不思議な国で、独自に開発された技術及び機器が自国では認められず、海外(欧米)で認められてそれを逆輸入すると言うちょっと恥ずかしい格好での導入が多いようです。
1つ例を挙げれば、多くのアマチュア無線局やテレビ放送受信に利用されている魚の骨の様な八木アンテナがそうです。
ある意味、舶来品崇拝が強い国民性があるのかもしれません。
実はこのボールPentel(及び同等機構の商品)についても、最初に火がついたのは国内よりも海外(欧米)市場です。
実際に1979年(昭和54年)に開催された先進国首脳会議(東京サミット)では、このボールPentelと同様の機構を持つローリングライターが会議用筆記具として正式採用されたり、1982年(昭和57年)には英国のデイリーテレグラフ紙においてエリザベス女王とボールPentelが大きく取り上げられた事もある、と言った事からも、いかにこのボールPentel(及び同様機構の商品)が海外でヒット(普及)していたかと言う事が分かります。
 2.3:特徴(ペン先)
 さて、ボールPentelの最大の特徴と言えるものは、その樹脂製ペン先です。
現在販売されている油性ボールペン及び『中性ボールペン』と称されるゲル状インキ使用のボールペンには全く採用されていないこの樹脂製ペン先がボールPentelの特徴を作り出しています。
樹脂製ペン先採用の理由としては、当時の(今でも?)油性ボールペンの弱点である書き出しのカスレ、インキのボテ、書き味の重さ(最近はボールや使用インキ等の材質変更及び改良で随分と改善された)、筆跡の薄さ(特に筆圧が弱い人の筆跡はホントに薄い)、と言った事の改善と、油性ボールペンのインキと比較して粘度の低い水性インキとの相性の良さがあげられます。
現在では水性ボールペンにおいても金属性のペン先採用の物が多く販売されていますが、それらはこのボールPentelとはまたひと味違った書き味に仕上がっています。
 2.4:特徴(ボディカラー)
 ボールPentelのボディカラーは基本的にグリーンを採用しています。
ボールPentelの中ではグリーン以外のボディーカラーを採用した商品も文具店店頭で確認していますが、発売時から使用され続けているボディカラーはグリーンです。
このボディーカラーにグリーンを採用した事については、発売時に若者(Green Guy)の心をとらえる新しいペン、と言う事でグリーンに統一した事によるものです。 私としては文具店の筆記具売場で全身グリーンのペンを探せば自然にボールPentelが見つかるので発売時の思惑とはちょっと違った意味でこのボディーカラーは重宝します。
 2.5:ボールPentelのバリエーション
 ボールPentelにはB100以外にも幾つかバリエーションが存在します。
ぺんてる株式会社の2002年版総合カタログによると、使い切り型のボールPentelでは細字用のB100(ボール径0.6mm)と太字用のB50(ボール径0.8mm)の2種類、また同等の機構を利用したカートリッジ交換型のトラディオ・ボールぺんてる(Tradio・BallPentel)の計3種類が商品として存在してます。
なお、過去に販売されていた商品には使い切り型のボールPentelB104(ボール径0.4mm)B110(ボール径1.0mm)B76(ボール径0.7mm)と言ったものやカートリッジ交換型のローリングライター、エクスキャリバーローリングライター、ローリングライターデスクセット等と言った物があります。
また、ボールPentelと外観が同じものの、本体色をブルーとし、新たに金属製ペン先を採用したPentelSUPERBALL(ぺんてるスーパーボール)と言う商品も過去に販売されていました。
 
後編へ続く)


なんでも使用記トップへ戻る