スーパーカブ使用記(2/3)


 

3.スーパーカブに乗ってみて

3−1)その使用感

 オートバイと無縁な人からすればホラに聞こえるかもしれませんが、1000ccを超える様な排気量のオートバイに常に乗っている人や、長年オートバイに乗っている人の中で「スーパーカブだけは勘弁…」と言う人がたまにいます。
理由としてはその人の持っている美学に反すると言う気分的な問題もありますが、スーパーカブ独特の癖も理由にある様です。
そんなスーパーカブ独特の癖の話を少ししてみます。

3−2)癖の1(方向指示機)

 最近のスクーターや多くのオートバイにおいて方向指示機(ウインカー)のスイッチはハンドルの左グリップ側にあります。
そして、横スライドで左−OFF−右となっています。
しかしながら、スーパーカブのそれはハンドルの右グリップ側に、しかも縦スライド操作用でついています。
なお、これは本田技研の他の一部のオートバイでも採用しています。
実は、私自身も自動二輪の教習中によく間違えて教習車両のウインカーを出すつもりでちょうど同じような位置にあるセルスターターボタンを走行中にをよく押したりした(教官にその事を話したら驚かれる始末)ので、慣れないととまどう部分かもしれません。

3−3)癖の2(変速機&遠心クラッチ)

 スーパーカブの変速機(ギア)については、3速までのチェンジが可能です。
カタログ表記では「常時噛合式3速リターン」と言う名称になっていますが、「リターン式」を採用しているオートバイのギアチェンジのパターンは、普通「1番下まで踏み込んで1速→引き上げてニュートラル(クラッチが繋がっていない状態)→引き上げて2速→引き上げて3速…)となっているのに対して、スーパーカブの場合は「前に踏み込む事でニュートラル→1速→2速→3速(後ろに踏み込むと3→2→1→ニュートラルと下方向に)」とギアチェンジされるので、他のオートバイや自動車のようにギアの入れ間違いはほとんど起こりません。
この違いは元々スーパーカブが「ロータリー式」と呼ばれる変速の方式を採用しており、それに改良を加えた格好になっているために、このようなパターンになったようです。
では、従来のロータリー式と何処が違うのか? 普通のロータリー式の場合、踏み込んで3速まで行くと次はニュートラルになりまた1速…踏み込む度に延々とギアチェンジが行なわれたのですが、これは場合によっては危険となる可能性がある(特に走行中アクセルを吹かした状態で3速→ニュートラル→1速となると機構を痛める上、場合によっては運転者が前方に投げ出される可能性も)ため、最近のモデルでは走行中は3速に入った状態でギアペダルを踏んでもそれ以上変速がなされない仕様になっています。
ただし、停止中は3速に入ったの状態で前に踏み込むとロータリー式と同様にニュートラルにギアチェンジが行われますしそのまま踏み込み続ければ1→2→3…とギアが変わっていきます。
なお、後ろに踏んでいった場合には走行中でも停止中でもニュートラルまでギアダウンしますし、そのまま踏み続ければ3→2→1…とギアが変わっていきます。
ただし、新聞配達用途目的で発売されているプレスカブの場合、発進停止を繰り返すと言う業務上の関係なのか、踏み込むだけでギアチェンジ操作が行えるロータリー式が採用されています。(プレスカブのみ3速時の指示ランプをスピードメーターに装備)
 ギアチェンジ(シフトチェンジ)の際にはエンジンと変速機の接続を切り離しギア変更後に再接続をする、いわゆる「クラッチの入り切り」の操作が発生します。
そのため、マニュアルと呼ばれる手動変速機付の自動車には「クラッチペダル」が、多くの変速機付のオートバイにはハンドルの左手側に「クラッチレバー」がついています。
しかし、スーパーカブには「クラッチレバー」が存在しません。
ですからハンドルの左手側にはレバーがありません。
ではどのようにギアチェンジが行われるのか、と言う事になりますが、そこにスーパーカブ独特のとも言える機構が存在します。
「自動遠心クラッチ」と呼ばれる機構です。
詳しい話は省略しますが、このおかげでスーパーカブはギアペダルのみでのギアチェンジが可能です。
しかしながら、この遠心クラッチ採用によりギアチェンジの際にクラッチレバーを使用する操作に比べて大きな衝撃(と言っても微々たるもの)と「カツン!」と言う音が発生するので、それが気になって仕方が無いと言う事で敬遠されるようです。
なお、現在発売されている50ccの国産スクーターではギアが無い(ベルトドライブ採用のVマチック無段変速式)にもかかわらずハンドルの左右にレバーがついていますが、これは右側が前ブレーキ、左側が後ろブレーキの操作用で、自転車と同じ操作を提供している格好になります。

3−4)乗り心地

 実際に運転してみて、ギアチェンジの際の衝撃や音も慣れてしまえば可愛いもので、気になるものではありません。
まぁ、機構上どーしても発生するものですから無くす事も出来ませんが。
ハンドルの位置やシートの座り心地も運転時に無理な姿勢を強いるものではなく、連続して1時間近く乗り続けてもそれほど疲れる事は有りません。
ただし、50スタンダードより90デラックスの方が全高で5mmほど高くなっている事で乗り換えてから走行距離30km位までは重心の位置の違いや微妙な視界の違いにとまどったりしました。
なお、アンダーカウルの採用で走行中の風による足(特に膝)への負担が普通のオートバイに比べると少なくて、特に寒い時期には有りがたいものです。
また、アンダーカウルの内側につける物入れ(メッシュインナーラック)がオプションとして存在しますが、そこまでしなくても物置代わりにも便利です。
以前50スタンダードで福島県の方に出掛けた際には、パンク修理剤とスペアの電球をガムテープで貼りつけておいたものです。
50スタンダードと90デラックスを車体の乗り心地と言う点を比較してもそれほど変わらないと感じるのですが、排気量の違いでその出力や法律による原付(50cc)での制限(片側3車線以上の交差点における2段階右折と法定速度時速30km以下)が変更(2段階右折は不要、法定速度が時速50km以下)された事で90デラックスの方が快適な走行が可能です。
 ただ、90デラックスにも不満点があって、現在市販されている全てのオートバイで前照灯と尾灯が(エンジンがかかっている限り)常時点灯となっているおかげで、交差点等で停止中に前照灯を減光したり消す事が出来ないのがちょっとねぇ。
せめて旧来のポジションランプと切り替えるなんてのは駄目なの?

3−5)走行中の注意点?

 スーパーカブはガソリンタンクがシートの下にあることから、ハンドルとシートの間にまたぐ事が可能な隙間があります。
ですから、スクーターの様にまたいで乗る事が出来るのですが、この点から「二ーグリップが出来ない」と言う声を聞く事が有ります。
ニーグリップとは、走行中に車体を安定させる目的でオートバイのガソリンタンク辺りを内股から膝の部分で挟むようにする事で、特に膝で挟むように見えるところからその名がついているようです。
これは自動2輪の乗車姿勢の基本で、教習所では必ず1度は教官から注意される点です。
スクーターやスーパーカブの場合、普通のオートバイとガソリンタンクの場所(スーパーカブではシートの下に存在)が違いますからニーグリップをそのまま出来なくて当然です。
これを無理にでもやろうとするなら、荷台に腰をおろしてシートの辺りを太股から膝を使って挟むと言った格好になります。
しかしながら、スーパーカブではニーグリップに近い姿勢をとる事は可能です。
スクーターと違いエンジン部分(胴体)にまたがって乗車している事で、そのエンジン部分(胴体)を足〜足首の内側の部分で挟む事が出来ます。
これが理屈の上ではニーグリップに近いものになります。
個人的にはこれを『フットグリップ』と呼んでいますが、このフットグリップを行う事で走行中に曲り角等で若干傾けすぎても転倒する事が少なくなりました。
とは言うものの、転倒する位まで傾けて曲がるのはレース場位でしょうが。
なお、フットグリップを行う事で乗車姿勢が自然に教本等で言うところの正しい乗車姿勢に近い格好になっている事もつけ加えておきます。
ただし、このフットグリップは私の経験上の産物であってこれを行って安全が保てるか等の保証は出来ませんし、いかなる事象が発生しても一切責任を負いません。

3−6)荷台

 私が感じるスーパーカブの魅力の1つに「荷台の頑丈さ」があります。
使用目的の1つに「手に持ちきれない荷物の輸送」がある事で、走行性能と同様に荷台の頑丈さは私にとって重要な点です。
スクーター等によく見られる太目の針金を取ってつけたような荷台と違って板金を加工して作ってあるこの荷台には、重量物を運ぶ事に対する安心を感じます。
ちなみにこの荷台は排気量の違いに関係なく幅300mm長さ340mmとなっています。
頑丈さについては信頼出来るものの、若干の不満が有りました。
それは、もう少し大きくしたいと言うものです。
理由としては、以前にデスクトップパソコン一式(本体、CRT、キーボード)を積んだ際に荷台からはみ出て不安定になった事と、荷物固定用に使用している市販のゴム製ネットが荷台よりも大きいので荷物未搭載時に収まりが悪い事です。
90デラックス購入の際に新聞配達仕様の荷台を特注で取り付けてもらおうかと思っていたのですが、純正オプションとして荷台を大きくするパーツがあり、取り付けました。
スーパーカブの荷台に関するオプションは2種類ありますが、取り付けたのは大型リアオーバーキャリア(幅350mm長さ525mm)で、幅が50mm長さが185mm長くなりました。
おかげで荷物非搭載時でもゴム製ネットの収まりがよくなりましたがその反面、ヘルメットホルダーの使い勝手が少々悪くなりました。
そこで降車時にヘルメットを荷台にくくりつけるための用具が別途必要になりました。
 
3/3へ続く)
 

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