思い出のパーソナルコンピュータ〜ダイナブックEZ486(株式会社東芝)
「付属のソフトが○○種類ついてお値段は……」量販店やテレビショッピングのパソコン販売に使われる宣伝文句の1つですが、最初から幾つものソフトがついた『オールインワンのパソコン』はいつごろからあるのだろうか?と記憶を辿って行くと、今から10年近く前に発売されたパソコンを思い出しました。
株式会社東芝が1993年に発売した、ダイナブックEZ486(型番EZ486001、以後EZ486と表記)です。
このEZ486は『電源を入れればワープロソフトと表計算ソフトが即使える』パソコンとして1992年に東芝が発売したダイナブックEZ(以後、初代EZと表記)の後継機種(2代目)でした。
ですから『オールインワンのパソコン』の草分け的存在とは言い難いかもしれませんが、私が「初めて購入したノート型パソコン」と言う事もあって深く記憶に残っています。
ただし、実際に購入したのは発売から1年以上経った1994年でしたが。
この初代EZとEZ486を比較する格好でその仕様を見てみると、まず、外観寸法はどちらもA4ジャストサイズでした。
外観から分かる装備も、3.5インチ3モードフロッピーディスクドライブ1基内蔵、キーボードはJ3100配列、オプションのハードディスクパックを内蔵可能で、インターフェースにはRS232Cポート、プリンタポート、マウスポートと言った当時のパソコンにおいて必須なものに加えて、独自コネクタ(ダイナブック用オプションの接続が可能、実はAT(ISA)バス互換配線)、また何故か外部ディスプレイ端子(VGA非対応)が装備されていて、どちらも全く同じでした。(ただし、外部ディスプレイ端子は購入当時ディスプレイを持っていなかったため私には無意味な存在でした)
ただし、PCカードスロットはどちらも未装備でした。
なお、外観で違う部分は、初代EZには解像度640×400ドットのモノクロ液晶が、EZ486には640×480ドットのVGAサイズのモノクロ液晶が使われている事位で、パッと見たところでは判別がヒジョーに困難でした。
また、内蔵ニッカドバッテリパックで2時間の連続使用(カタログ値)が可能でした。
中を見てみると、CPUにはi486SXが使われており初代EZのi386SXよりも処理が高速になっていました。(CPUはどちらもインテル製)
搭載メモリ容量はどちらも2MBで、ワープロソフトの一太郎dash(ジャストシステム製)、表計算ソフトのlotus1−2−3(ロータス(現在はIBMに吸収合併)製)がROMで搭載されていました。
また、付属アプリケーションソフトだけでなくOSの日本語MS−DOS3.1もROMで搭載(使用頻度の少ないコマンドを除く)されていました。
ですから、動作させるためにOSのインストールは不要でした。
このEZ486を購入した時点において既に東芝のパソコンラインナップはDOS/V専用機への移行がほぼ完了していました。
しかしながら仕事の関係で日本語MS−DOS3.1専用アプリケーションソフトを使用していた事もあり、単にワープロ&表計算ソフト実行機としてだけで無く色々な場面で使用しました。
出張等で本来なら大きなラップトップパソコンを使う場面にこのEZ486を持ち込んで済ませた事も何度もありました。
さて、前にも書いた通り初代EZとEZ486の違いの1つに搭載液晶ディスプレイがありますが、EZ486がVGAサイズと言う事でDOS/Vの導入や利用が容易に行えました。
初代EZも外部ディスプレイアダプタ+VGA対応ディスプレイを使ってDOS/Vの利用は可能でしたが、機動性の部分ではEZ486に分が有りました。
とは言え、当時使っていたアプリケーションソフトにはJ3100専用も多かったのですが、東芝が自社機種用に発売したDOS/V(東芝MS−DOS/V5.0)にはJ3100モード(エミュレーター)の機能があったので、必要に応じてモードを切り替えて使ったものでした。
まぁ、フリーウェアに関しては経済的負担もほとんど無かったのでそろえられる限り双方の対応品を用意しましたが。
(余談ですが、当時IBMが発売していたDOS/Vつまり後のPC−DOS/Vで動作機種として一部のJ3100シリーズも入っていたにもかかわらず、東芝側では「ハードメーカーとしての動作保証は出来ない」と言う意味のアナウンスをしていた事で、一部ユーザーから不満の声もあった)
ちなみに、EZ486で日本語MS−DOS3.1やJ3100モードを利用した場合、画面解像度は640×400ドットのみでの使用となった事で上下40ドット分が空白になりました。
ちなみにこの画面の状態は、ハイビジョン撮影の映像をハイビジョン非対応のテレビで見た感じに近いもの、と考えてください。
さて、パソコンの使用目的の1つに当時は「ゲームで遊ぶ」と言う要素がありました。
EZ486(を含めたJ3100シリーズ)はIBM−PC互換機ですから、基本的には日本語対応されていない外国版(英語版)のIBM−PC用ゲームで遊べる事になっていましたが、若干の問題が有りました。
この海外製ゲームの多くが日本語MS−DOS3.1では動作しないのです。
もちろんDOS/Vを導入すれば動作の問題は解決しますが。
EZ486発売時にDOS/Vは既に登場していましたが、その登場以前はどうだったかと言うと、原則として「英語版MS−DOSの導入」が必要でした。
実際に東芝でもオプションの1つとしれ英語版MS−DOS(Ver3.3)を発売していました。
ゲーム目的のユーザーであれば迷わずそれを導入するのでしょうが、私も含めた一般的なユーザーはそこまでしてゲームで遊ぼうとは思いません。
ところが「必要は発明の母」とでも言うべきか、ゲームに付属もしくは単体流通等の形でJ3100シリーズ用の英語MS−DOSエミュレーターがありました。
ですから、これを介して海外版ゲームを楽しんだユーザーも結構多かった事と思います。
実は私もDOS/V導入前には、このエミュレーターを介して海外版ゲームを遊んだものでした。
なお、このエミュレーターを介する事でゲーム以外の英語版アプリケーションソフトの利用も可能らしいのですが、どの位のそれが動作したのかは使う機会が無かったので未だに不明です。
また、使用していたエミュレーターでも全ての英語版ソフトの「動作保証」はしていませんでしたので、動作実績も未だに不明です。
このEZ486では、当時実際に行われていたいたパソコンの利用形態の幾つかを体験しています。
ワープロや表計算やPIMソフトそれにゲームと言ったアプリケーションソフトに利用を始め、ノートブックパソコンだから出来る電車等での移動中での使用、MODEMや携帯電話(PHS)を使用したパソコン通信やインターネットの活用と言ったものです。
特にパソコン通信については、東芝のパソコンショールーム(テクノセンター秋葉原)にホストマシンを置いて運用されていた無料会員制BBSのダイナブックネットにおいて、ユーザー同士のコミュニケーション(OFF会含)やフリーソフトの供給元等としてお世話になりました。
また、個人的な遊びとして「2台のノートパソコンをケーブルで接続して接続先のハードディスク内のゲームソフトを動作させる」と言ったクライアント&サーバーもどき(笑)もやりました。
EZ486はWindows95に非対応と言う正式アナウンスがあったお陰で、世間の主力がWindows95搭載機へと変わって行った中で取り残された存在になりました。
自己責任で導入したユーザーの動作報告もありましたが、後に発売されたWindows95用ソフトを見るとハードウェアの能力不足は、否めないところです。
また、その頃からインターネットの利用も進んだわけですが、Windows95で動かないソフト(日本語MS−DOS3.1専用アプリケーションソフト等)を常用していた事と、DOS/V用Webブラウザー&メーラーソフト(IBM製WebBoy)を利用していた事もあって「まだ使っているんですか?」と取引先の人等から言われる位になっても使用していました。
「引退」と言える格好になったのは2003年始めですから、購入から足かけ10年近く色々な場面で使用していた事になります。
長期間使用していた事で必要に応じて、増設メモリカード、ハードディスクパック、ACアダプタ(これは都合3台消耗)、テレビサウンドアダプタ(ビデオ及びVGA出力とFM音源とジョイスティックポートを1つにまとめたダイナブック専用オプション)と言った専用オプションに加えて、プリンタ、マウス、(プリンタポート接続式)CD−ROMドライブ、モデム、と言った汎用周辺機器も購入した事で、パソコンそのものの扱いも随分と学習した形になりました。
また、ソフトウェア、特にOSについてはROMで搭載されていた日本語MS−DOS3.1、東芝供給のMS−DOS/V5.0やMS−Windows3.1と言ったマイクロソフト製OSだけでなく、B−TRON仕様OSのパーソナルメディア製1B/V2(試用版)と1B/V3(製品版)も使う事が出来て結構重宝しました。
初めて所有したIBM−PC互換機と言う事で「IBM−PC互換機を知る手がかり」になった思い出深い機種でした。
最後にEZシリーズの変遷を簡単まとめておくと、初代EZの次の年にEZ486と同時に熱転写式プリンタ搭載のEZ486Pと言うワープロ専用機のような外観の機種が発売され、その次の年(1994年)にはEZ486同様A4ジャストサイズのまま(キーボード配列を一部変更)でOSをMS−DOS/V5.0、各アプリケーションをDOS/V用に変更したEZ425とEZ425にテレビサウンドアダプタの機能を内蔵したEZVisonの2機種が発売されました。
(了)
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