FM文字放送(その壱)

 
1.はじめに

 これから、FM文字多重放送に関しての話を始めます。
まず最初に言いわけがましい話をしますが、これに関しての調査をしている間に対応機器の入手がほとんど不可能と言う状況となってしまいました(2005年2月時点で)。
対応受信機を発売していた幾つかのメーカーのカタログから姿を消してしまったのです。
現状では「店頭在庫や中古品でも手に入れば幸運」と言うところでしょうか。
ですから、以下に書いてある事は「そんなものがあるのかぁ」程度に思ってください。
利用者の1人としては、現在使っている「受信機が壊れる」のが先か、それとも「放送の休止」が先か、と困っているところです。

 
2.ラジオ放送における問題点

 AM、短波、FMと国内で聞く事に出来る放送はこの3つにわけられます。
技術的な事柄等の話をすると話がややこしくなるので、新聞の番組欄や一般的な扱われ方として、この3つに大きくわけられている、とします。
ラジオ放送に共通している事は、放送されてる番組がアナウンサーやディスクジョッキーもしくはパーソナリティと言った人たちのお話やおしゃべり、それと色々なジャンルの音楽です。
いわゆる「音」です。
これに比べてテレビ放送は「音」に加えて静止画や動画と言ったいわゆる「絵(画像)」も同時に放送されてきます。
 さて、「音」のみの放送であるラジオでも特にFM放送はAM放送やテレビ放送よりも「音楽」を多く放送しています。
AM放送に比べて音質で優るFM放送は「おしゃべりよりも音楽を多く流す」事でその存在をアピールしています。
ラジオ放送が日常生活のBGMとしての使われている中で、FM放送はくつろぎの空間で流される事が多くなっています。
ただ、音楽が多く流れるFM放送を聞いていると、少しばかり困る事がありました。
それは「流れている音楽(楽曲)の曲名と歌手を聞き逃してしまい分からなくなる」と言う事です。
その昔、放送で流れる楽曲をカセットテープに録音して個人の音楽ライブラリとする「エアチェック」と言う行為が行われていました。
ヒットしている曲や何度も流される曲ならともかく、初めて流れた曲とか普段は流れない曲、スタジオライブやコンサートの録音放送等でその時しか流れなかった曲の場合はタイトルの確認が大変でした。
こんな時はFM放送の番組表等を載せた「FM情報誌」(今あるテレビ番組表を載せた雑誌のFM放送版)を片手にタイトルをチェックしたり、同好の友人知人と情報交換と言う事もよくありました。
レコードやCDを有料で貸し出す、いわゆる「レンタルショップ(貸しレコード屋)」が出現してから「エアチェック」はさほど行われなくなった様ですが、FM放送で「耳にした曲をレンタルショップで借りる」のにも歌手名や曲名を聞き逃してアタフタする事はありました。
そんな問題点の解消手段と言う振れ込みで登場したのが「FM文字放送」です。
正式には「FM文字多重放送」と呼ばれますが、ここでは宣伝等で使われている「FM文字放送」と言う呼称で話を進めていきます。
また、私の住居地域の関係で実際に利用ている首都圏の実施放送局の話で終始してしまう事をあらかじめお断りしておきます。

2−1.文字情報の発信

 FM文字放送を大々的に宣伝したのはTOKYO−FMです。
いわゆる「見えるラジオ」です。
また、J−WAVEもほぼ同時に「アラジン」と言う名称で開始しました。
そして、NHK−FMでも幾つかの局で開始しました。

2−2.文字が「見える」ラジオ

 「『見えるラジオ』と言うがラジオ(ラジオ受信機)は目の前に見えるじゃないか」と言う冗談もあったようですが、開始当初のFM文字放送の特徴は2つほどあげられます。
1つは発信される文字情報の内容(表示情報)についてです。
細かい話は後に述べますが、大きく分けると放送(音声放送)中の番組名と担当パーソナリティと出演ゲストの名前、流れている曲名や受付FAX番号と言った情報を流す番組連動チャンネル(コンテンツ)とニュースや天気予報、交通情報等を流す非番組連動チャンネルの2種類が存在しました。
もう1つは、文字情報の表示についてです。
1行が最大で全角30文字の横書きの2行表示、つまり60文字の横書き表示が情報1つあたりの単位となっています。
ただし、実際に漢字と平仮名以外のアルファベットや記号に数字と言った文字は半角文字の使用も可能でした。
ですから実質的には文字数が60文字を超える事もありました。
情報量が60文字未満の場合でも文字の足りない部分に空欄が出来るとか、1行で済むところを記号で装飾して2行で表示する様な工夫がなされています。
また、ニュース等でこの単位に納まらない場合は2行目の文末に矢印のような記号を表示して次に続く事を示しています。
FM文字放送対応受信機もこの単位(30文字×2行)の表示が最低限可能となっています。
また、発信情報を実際に読む際にはこの単位毎にスクロールが行われます。

 
3.チャンネル(コンテンツ)の話

 FM文字放送開始当時と現在のチャンネル(コンテンツ)は違います。
実は、全国全ての実施局を受信して確認したわけではありません。
勝手ながら、実際に受信して確認した首都圏の実施3局の現在の状況について話をしていきます。

3−1.TOKYO−FM(JFN)

 「見えるラジオ」と言う名称で開始の数ヶ月前から市販第1号機の宣伝も兼ねたアナウンスを随分と流していました。
現在は「番組情報」「ニュース&天気」「交通情報」「データ&ネタ」「その他(特集チャンネル?)」の5つのチャンネルに大きく区分けされています。
なお、それぞれのチャンネルの中でさらに内容によって区分けがなされています。
この区分けは開始当初からあまり変化が有りません。
 1:番組情報
 番組連動で番組名やパーソナリティ、かかっている楽曲、参加型番組の場合は受付FAX番号やe−mailアドレス、と言った番組に関する話題が登場します。
 2:ニュース&天気
 番組非連動で、ニュース、スポーツニュース、ビジネストレンド、FX(株価)、天気、天気生活、6個のチャンネルをチャンネルを持っています。
ニュースは、その名の通り一般のニュースを、スポーツニュースは、プロ野球やサッカーの試合の途中経過にゴルフや大相撲の結果等のいわゆるスポーツニュースを流しています。
ビジネストレンドは、その日の過去の出来事(今日は○○の日とか)、巷で噂になっている物、新製品発売のトピックス等を1日に2回更新で伝えています。
いわゆるトレンド情報(流行情報)でしょうか。
FX(株価)はその名の通り株や為替の情報を流しています。
天気は、受信エリアの天気予報を、天気情報は観光地や行楽地の天気予報を流しています。
 3:交通情報
 番組非連動で、首都高速、一般高速、一般道路の3つのチャンネルを持ち、それぞれの渋滞や事故等の情報を10分単位で更新しています。
 4:データ&ネタ
 番組非連動で、うわさのパラダイス、ミエラジ占い、ランキング情報の3つのチャンネルを持っています。
うわさのパラダイスは芸能人のスキャンダルやいわゆるB級ニュースを、ミエラジ占いは12星座の星占いを毎日伝えています。
ランキング情報は日替わりでレコードやDVD等の売上や映画の入場者数等のランキングを伝えています。
 5:その他(特集チャンネル?)
 このチャンネルはいつも使われているわけではありません。
自然災害や何かが有った時にこのチャンネルがよく開設されます。
ちなみに、これを書いている時点では各地のスキー場の積雪情報や滑走の可不可の情報を伝えていました。

3−2.J−WAVE

 「アラジン」と言う名称でTOKYO−FMでのFM文字放送の開始と同時に始まりました。
当初はTOKYO−FMの様に幾つものチャンネルがあったのですが、現在は番組中の流されている楽曲情報をリアルタイムで流す「オンエア情報」と過去の時間に坂上って流された楽曲を伝える「SONG LIST」の2つのチャンネルのみです。

3−3.NHK−FM

 ここで話すのは東京局から提供されているサービスです。
NHK−FMは、全て非連動チャンネルです。
スポーツニュースを含めたニュース全般を伝える「ニュース・スポーツ情報」、全国各地の天気予報を伝える「全国天気」、「全国各地の7日間の天気予報を伝える「週間天気」、全国で起こった有感地震の情報を伝える「地震情報」、津波の情報を伝える「津波情報」の5つのチャンネルをもっています。

へ続く)
 

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