カスピ海ヨーグルト(その弐)

 
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3−3.作り方

 さて、作り方です。
カスピ海ヨーグルトの種を譲ってもらった際に教えてもらった作り方は、

 1)種1に対して牛乳10の割合で容器に入れる
 2)1)をスプーン等で全体を軽くかき混ぜる
 3)容器に清潔なガーゼ等で蓋をする
 4)そのまま16時間ほど置いておく
 5)食べていて量が減ってきたら容器に牛乳を加えると、勝手に出来る

と、言う事でした。
作る時の注意点は、

 1)作業前に手をきちんと洗う。
 2)容器やスプーン等の道具は熱湯消毒(または熱湯をかける)する
 3)牛乳は、無調整乳(乳脂肪分3.7%以上)を使う
 4)容器の蓋に使うガーゼ等は清潔なものを使う
 5)醗酵は常温で行われるが、寒い時期は保温ポットや保温電気釜の近く等の暖かいところに置くと良い

と、言う事でした。
ここで言っている「種」とは「カスピ海ヨーグルト」そのものです。
なお、検索エンジンで見つけた幾つかのWebサイトに書いてあった作り方も似たようなものでした。
作り方を要約すると「カスピ海ヨーグルトと成分無調整の牛乳を1:10の割合で混ぜて常温醗酵させる」となります。
一番簡単な方法は「牛乳の入ったパックにそのまま種を入れる」と言うものです。
この場合は、手や使う器具だけでなく牛乳パックも開ける前に外側をアルコールを含ませた脱脂綿等で拭く等の消毒作業が必要でしょう。
また、醗酵中に発生するガスを抜く目的でガーゼ等で蓋をしますが、自然落下してくる雑菌の混入を出来る限り防ぐ為に紙等で作った帽子の様な物を乗せて、上部の通気を出来る限り防ぐ必要があります。
また、牛乳パックの底の方が取り出し難いです。
それに使用済パックを回収に出す際の洗浄もヨーグルトがこびりついていて面倒です。
実際に作るのであれば、ジャムやハチミツが入っているような蓋のある耐熱ガラス製広口瓶が適している様です。
当初は私も牛乳パックに種を入れて直接作っていましたが、その取り扱いに不満を感じて現在は、熱湯使用可能なプラスチック容器で作っています。
 ところで、話を聞いた後に乳脂肪分の少ない牛乳、いわゆる「『低脂肪乳』では出来ないのか?」と言う疑問が沸きました。
もちろん初めは、言われた手順や注意の通りに作っていました。
その時に使った牛乳の乳脂肪分は3.7〜8%をうたっているものです。
ものは試しに「低脂肪乳(乳脂肪分0.8%)」を使っても作ってみました。
種と低脂肪乳の割合は1:10程度にしておきました。
結果から言うと、ヨーグルトは出来上がりました。
カスピ海ヨーグルトの特徴の1つであるの粘りこそ少ないものの、色も味もそれほど変わらないものでした。
ただし完成には、16時間を超える時間を要しました。
また、低脂肪乳で作ったそれを種として新たにヨーグルトを作ってみると、低脂肪乳であれ成分無調整乳(乳脂肪分3.7〜8%)であれ、出来上がりまでに16時間を超える時間を要しました。
これは、ヨーグルト内に含まれる細菌数が少ない事によるものと考えられます。
また、乳脂肪分が3.5%程度の成分無調整乳でも低脂肪乳で作った時と似たような結果が出ました。
実験室での作業では無いので(寒天培地を使う等の実験を経ての)数値比較は出来ませんが、何度か作ってみた感じから、成分無調整乳でも乳脂肪分が3.6%未満の牛乳で作った場合にはゆるめの物が出来上がるようです。
粘りの少ないゆるめのヨーグルトが好みであれば、低脂肪乳や乳脂肪分が少ない牛乳を使用して作るのもいいかもしれません。
ただし、種は乳脂肪分3.7%以上の牛乳で作った方がいいでしょう。
特に低脂肪乳で作成したヨーグルトの場合、周囲の条件によっては雑菌による腐敗を短時間で起こしてしまう可能性があります。
 お断りしておきますが、飲用の牛乳としては乳脂肪分の低い牛乳が悪いと言う事ではありません。
乳脂肪分も味の要素の1つですから、好みの物を飲用すれば良いのです。
あくまでも「カスピ海ヨーグルトの材料」として「乳脂肪分が1つの目安」になる、と言う事です。
そこのところをくれぐれも勘違いされないようにお願い致します。

 
4.おわりに

4−1.自家製食品でありがちな問題

 カスピ海ヨーグルトに限った話ではありませんが、自家製食品に必ずつきまとう問題があります。
それは「作ったはいいが食べ切れない」と言う「製造量と消費量のバランス」の問題です。
梅干しや果実酒、サワードリンク等の様に長期保存可能な食品なら保存すればいいのですが、糠漬(漬けた野菜)やヨーグルトはそうは行きません。
家族や同居人が多い場合は毎日無理矢理にでも食卓に出せばそれなりに消費されます。
しかし、1人暮しや2〜3人と言った少人数では余ってしまう事も結構あります。
特にヨーグルトの場合、菌の死滅防止と言う理由もあって、作ったものは冷蔵庫に入れても4〜5日が限度でしょう。
私が試した限りでは、冷蔵庫に入れっぱなしで10日程度は若干酸味は増すものの食べられましたし、種としても使用可能でした。
これは冬場の話ですから、夏場では4〜5日が限度ではないかと思われます。
書籍やWebサイトでは、食べ頃は製造後2〜3日とうたっている事が多いようです。
実際に製造量が消費量を超えてカスピ海ヨーグルトを腐らせてしまい、作る事をやめてしまった人も何人もいるそうです。
管理栄養士の人に聞いた話ですが、余った分を「もったいない」と大量に摂取した事が原因でカロリーオーバーとなり生活習慣病になった事例があるそうです。
こうなると、笑い話では済まなくなりますが。

4−2.種のもたらされ方

 カスピ海ヨーグルトは元々、業者によって輸入され紹介されたものではありません。
そもそも日本への上陸は、医学博士の家森幸男(やもりゆきお)氏がWHO(世界保険機関)の協力の元で行った「食と長寿に関する研究」の際にグルジア共和国から持ち込んだのが最初とされています。
それ以前についての国内の存在は不明ですが、私の調べた限りではこれが記録として残っている最初のようです。
そして、この時の種を元に作った物を家森氏の家族が御近所に配った事が元となり「口コミ」で広まって行ったようです。
全てがこの種が元ではないかもしれませんが、「口コミ」と言う「人から人へ」と「手渡し」の格好で広まっていったのです。
ですから、身近でカスピ海ヨーグルトを作っている人がいない限り、種を簡単に入手する事は出来ません。
しかしながら現在では、包装代と送料程度で冷凍状態やフリーズドライにした種を配布している団体も存在しています。
身近に作っている人がいない場合はそう言った所を利用してみてはいかがでしょうか? これを書く前にそう言ったWebサイトを幾つか確認しましたが、特にココ!と言うサイトはあげません。
興味のある方は「カスピ海ヨーグルト」をキーワードに検索エンジンを利用してください。

4−3.ヨーグルトを身近な食べ物に

 日本人は他国(特に欧米諸国)の人と比べて乳製品の摂取量は少ないとされています。
そもそもパン食の習慣が無かったのでバターを使う機会はありませんでした。
また、明治以降までほとんどの国民が牛乳を飲む(はおろか目にする)機会もありませんでした。
明治以降まで庶民の多くは「牛乳の存在」すら知らなかった事でしょう。
そう言った外的な要因が理由の1つと言えます。
また、「『牛乳をそのまま飲むと下痢をする体質』の人が多い」と言う、内的な要因も理由の1つでしょう。
ちなみに、カスピ海ヨーグルトを含めたヨーグルト類は、牛乳を飲むと下痢をする人でも大丈夫な事が多いそうです。
これはヨーグルトとなる過程でその原因物質が分解されほとんど残っていないためです。
 昔から日本人は、多くの醗酵食品を利用してきました。
思いつくものをあげてみても、味噌や醤油と言った調味料、納豆、糠漬け等の漬物類、クサヤになれ寿司と今では地域の特産品みたいな物があります。
しかしながらこれらの多くは、保存食として作られていたものです。
「効能」の話は後から出てきたものです。
 食の西洋化と言う風潮から、醗酵食品の効能が色々と言われている昨今、西洋の醗酵食品の1つで、比較的食べやすい上に自分で作れるカスピ海ヨーグルトを食生活に取り入れるのもよいのではないでしょうか?

 
 最後に、カスピ海ヨーグルトの種を快く譲ってくれた、喫茶店「アミーゴ」(白楽駅下車徒歩数分)のママさんにこの場を借りて厚くお礼申し上げます。
このママさんは、カスピ海ヨーグルトの普及活動をしている人ではありません。
ですから、店の詳しい場所はこれ以上は述べません。
実は、お店の名前も許可無く勝手に出しています。
お店の場所が判明して訪れるのはかまわないのですが、「カスピ海ヨーグルトに関する問い合わせ」は絶対にヤメテください。
この喫茶店「アミーゴ」は、チャーミングなママさんの笑顔と声とジャズが店内に流れる喫茶店です。
コーヒーもさる事ながら美味しいお手製焼き菓子の数々も楽しむ事が出来ます。
「ジャズ」や美味しい「コーヒー」にお手製の「焼き菓子」を楽しみたいと言う方は、お店の場所が分かれば、ぜひ1度お立ち寄りください。
しかし、「カスピ海ヨーグルトに関する問い合わせ」は絶対にしないように。
お店ではあくまでも「ジャズ」と美味しい「コーヒー」とお手製の「焼き菓子」を楽しんでください。

 

(−了−)

 


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