短波ラジオ使用記(前編)


 

1.はじめに

 1−1:海外情報入手の手段

 21世紀になってからというもの、アメリカ合衆国(以後米国と記述)本土への民間機利用のテロ攻撃に始まりアフガニスタンでの一連の軍事行動、朝鮮民主主義人民共和国の拉致事件を含めた一連の騒ぎ、米国のイラクでの軍事行動等の物騒な出来事が湯水のごとく吹き出している感じです。
それ以外にも一般には忘れ去れてしまったような小さな事件はいくつも起こっており、物騒な時代になったものだと感じます。
こうも物騒になると私なんぞ海外へ行くのもちゅうちょしてしまうところですが、仕事で海外出張や転勤と言った事情の方や、海外へ出て見聞を広めたいなんて好奇心旺盛な方はまだまだ多いと思います。
さて、仕事はともかくとしてもそれ以外で海外に出かける場合に事前の情報収集としては、以前からあるガイドブックに加えて最近はインターネット上の各種ホームページを利用する事も多いようです。
このホームページも各国の観光局の様な部署や団体で作成のものから旅行を趣味にしている個人のものまでたくさんありますし、その情報量もさることながら扱っている内容も多種多彩です。
しかしながら案外知られているようで知られていない情報源が、各国が国外向けに行っているラジオ放送です。
このラジオ放送は、国外にいる同胞(仕事や旅行、移民等のさまざまな理由で国外にいる人々)への情報提供だけでなく、他国に自国のさまざまな事を紹介する目的もあるため、自国の言語以外にも様々な言語による放送が行われています。
もちろん、日本向けに日本語による放送を行っている国もいくつか存在します。

 1−2:BCL

 外国向けに行っているラジオ放送と言うと、ある程度以上の年齢層の方が思い浮かべるのが『BCL』ではないでしょうか。
BCLと言うのは『BroadCasting Listener』の略で、日本語に直訳すると『放送聴取者』と言った少々堅苦しい言葉になりますが、要するにラジオやTV等の放送を受信する趣味の事を言います。
特に海外の放送(特に短波放送)を受信してその報告書(受信報告書)を放送局に送る行為を指す場合が多いです。
なお、送った受信報告書で受信された事が確認されればその放送局より受信証明証(ベリカードと呼ばれる)が返送されてきます。
この時、受信証明証と一緒に番組表やカレンダー等のおまけも送られてくることがあります。
ちなみに国内の放送局(ラジオやTV)でも多くの局でこの受信証明証が発行されています。
実を言うと私も、1985年につくばで行われた万博会場内に設置された放送局と1989年に横浜市で行われた博覧会(Yes’89)の会場内に設置された放送局の受信証明証を持っています。

 1−3:何故、短波ラジオ?

 自国外向けラジオ放送の多くは、短波と呼ばれる周波数帯(大体1.7MHz〜30MHzの間)を利用しています。
この短波は普通のAMラジオでは受信出来ません。
ですから、その放送を受信するには、短波の受信が可能なラジオ、いわゆる『短波ラジオ』が必要になります。
しかしながら現在、短波ラジオ(短波受信可能な俗に言う『受信機』は除く)を作っている国内メーカーは少なく、入手が容易なメーカーもソニー株式会社(以後ソニーと記述します)と松下電器産業株式会社(以後松下電器と記述します)2社です。
参考までに、ソニー(ICレコーダー/テープレコーダー/ラジオ/ラジオカセット総合カタログ2003.3より)より9機種、松下電器(ラジオ・レコーダー・トランシーバー総合カタログ2003/2−3より)より1機種がそれぞれ販売されています。
そんな中で短波ラジオとして今回使用した製品がソニーのICF−SW11(写真)です。
 

2.短波ラジオICF−SW11の紹介

 2−1:カタログスペック

 多くの短波ラジオが量販店においても取り寄せになる事が多いのですが、このICF−SW11は常時店頭在庫としている事が多いので比較的入手が容易です。
さて、そのスペックは、と言うと…。
 本体の形状は、幅162mm高さ93.8mm奥行き34.8mm(大体200ページ程度の新書版2冊重ねた程度)で重さが340gと片手で十分持てる大きさ、重さです。
 選局(チューニング)方式にはアナログチューニングを採用しており、昔からあるラジオの様にダイヤルを回して目盛盤に針を合わせて行います。
なお、選局を助ける機能として放送局を受信すると赤いランプが点灯して知らせるチューニングインジケーターを内蔵しています。
 スピーカーは、57mmのものが1つ内蔵されており全ての放送がモノラル出力となりますが、イヤホン端子にステレオミニプラグ用(ヘッドホンステレオ用ヘッドホンに使われているのものと同じもの)の物を使用しているので、これを利用すればFM放送についてはステレオで聞く事が出来ます。(他の放送では両耳でモノラル出力)
 電源には単3乾電池2本を使用し、アルカリ乾電池を使用すれば最大75時間の連続受信が可能です。
また、別売のACアダプタ(型番:AC−E30)を使用する事でAC電源も利用可能です。
 受信可能周波数は、次の通りです。
FMは、76〜108MHzで国内のFMラジオ放送に加えてTVの1〜3チャンネルの音声が受信可能です。
AM(中波、MWとも呼ばれる)は、525〜1620KHzで国内のAMラジオ局は全てカバーしています。
ちなみにFM、AMでカバーしている周波数から、日本国外でもラジオ放送も受信するのに使用可能です。
短波(SWとも呼ばれる)は、短波放送が多く行われている周波数帯(放送バンドと呼ばれる)毎に9つにチャンネル(バンド)分けして、受信出来るようにしています。
その内訳は、チャンネル1(SW1)が3750〜4010KHz、チャンネル2(SW2)が5850〜6300KHz、チャンネル3(SW3)が7050〜7500KHz、チャンネル4(SW4)が9400〜1010KHz、チャンネル5(SW5)が11550〜12400KHz、チャンネル7(SW7)が13450〜14100KHz、チャンネル8(SW8)が15050〜16000KHz、チャンネル8(SW8)が17400〜18150KHz、チャンネル9(SW9)が21350〜22150KHzと言った具合(全て目盛盤印刷値)です。
なお、この方式は俗にバンドプレス方式と呼ばれており、比較的古いBCL用のラジオではよく使われたものです。
短波ラジオでこのバンドプレス方式が採用される理由の1つには、短波帯全てにおいてラジオ放送が行われているわけでは無いので、放送が行われていない不要な周波数帯(業務無線等で使用)は受信できなくても問題が無いからと言うことがあります。
また、日本国内では放送に使用されておりませんが、長波(LW)の160〜270KHz(目盛盤印刷値)が受信可能です。(短波帯9チャンネルと長波、AM、FMが1チャンネルの計12チェンネル分の周波数帯を受信出来ることから本機は、12バンドラジオと言う呼ばれています)
 『長波(LW)』『AM(中波、MW)』『短波(SW)』『FM』の各ラジオ放送が受信可能であることから、このICF−SW11は日本国内外どちらでの使用にも十分耐えうる事が分かります。
 なお、短波放送(及びFM放送)受信に使用するアンテナとして、伸縮式のロッドアンテナ(実測で最小149mm最大627mmm)が装備されています。

 2−2:利点

 これを利点と言うべきかどうか悩むところですが、1つにはその価格があります。
現在の短波ラジオの多くが量販店の店頭価格でも1万円を超えており、『たかがラジオ』と思って値札を見ると購入に少々躊躇する金額が書いてあります。
しかしながらこのICF−SW11については、メーカー希望小売価格が7800円(税別)ですし、量販店においてはもう少し安い価格がつけられています。
またスペックにもあげましたが、連続受信時間の75時間(アルカリ乾電池使用時)と言う点はお手軽短波ラジオとして評価できます。
そして、本体サイズからして200ページ位の新書版書籍2冊程度の大きさですから、旅行鞄に入れてもさほど気にならない大きさです。
細かい点を少し言えば、本体にストラップがついていますから手に持つ時にも便利です。
それに本体裏にスタンドがついてますから、それを出せば机上でも目盛盤を見やすい格好に置く事が出来ます。
それから、目盛盤上に『NSB』と言うマークが記してありますが、その付近に針を合わせると『ラジオたんぱ』(日本で唯一の民間短波放送)の受信が簡単に出来ます。

 2−3:欠点

 このラジオは周波数カウンターを装備していないので、周波数を直接読むことは出来ません。
あくまで目盛盤とチューニングインジケーターを利用して目的の放送局を探す事になりますが、この目盛盤の周波数表示と実際に受信した周波数には若干のズレがありますので注意が必要です。
このズレ幅は個々の製品によって個体差があるので、具体的な数値は残念ながらここで述べる事はできません。
なお、アナログチューニング採用のラジオの機種では、まず、このズレが存在しますので異常や不良ではありません。
また、音質調整つまみ(及び切替スイッチ)がないので音質の点ではそれほど期待できるものではありません。
とは言え普通に放送を聞く分には問題無い音質(廉価なポケットラジオより上)ではありますが。
それから、電源スイッチのロック機能がついていないので、鞄の中に入れている時に勝手にスイッチが入ってしまう事もありますから持ち運びの際には注意が必要です。
 
(注:本文中のICF−SW11の写真は私が撮影したものです。いかなる理由であれ無断使用はお断りします。)
 
後編へ続く)
 

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