「お兄ちゃん……僕ね、好きな人ができたの」
弟である高石タケルに、電話で突然そんな報告を受けたオレは、何だか複雑な気持ちになった。
タケルは小学2年生。そんな色恋沙汰なんて、まだまだ先の事だと思っていたからだ。
「あのね、僕、その人の事を考えると、胸がぎゅーってしめつけられるようなかんじになっちゃうの。そうしたらヒカリちゃんが、「それはその人の事が凄く好きだからよ」って…」
……タケル…そんなにまでその子のことが好きなのか………ん?てコトはヒカリじゃないのか?相手は…
「だから僕、言っちゃったんだ。好きですって」
え?もう告白済み!?
「…それで?相手は何だって?」
「「僕をからかっているのかい?」って… 僕は本気なのに…」
そうか…それは辛いな………って、え!?『僕』?
それって……ひょっとして…相手は男ってコトか!?
「…僕は本気で丈さんの事が好きなのに……ねぇ、お兄ちゃん…どうしたら良いと思う?」

丈?…丈かぁ………あはははは

乾いた笑い声が、オレの心の中でこだました。







● はじめての… ●
<1>




「で、何だい?ヤマト。急に呼び出したりして…」
タケルからのあの電話の後、オレは丈のアポをとり、こうしてとあるファーストフード店にて二人向かい合っている。
「いや…実はさ、タケルのコトなんだけど…」
「タケルくんがどうかしたのかい?」
どうかしたのかい…って、ウチの可愛い弟から告白されたクセに、それはねーだろ…
「タケルが…丈のコトをさ…」
「?………あ!」
やっと思い当たったらしい丈は、みるみる顔を赤らめていく。
「あのさ、ヤマト…タケルくん何か悪い物でも食べちゃった?」
「いいや…別に変なモンなんか食べてない。そうじゃなくて、丈…どうやらタケルは本気だ……」
「えぇっ!?」
あまりの事に、丈は目を白黒させている。オレだってそうだ。こんなコト、冗談だろうと笑い飛ばしてやりたい。
「いいか、丈。断れ…断るんだ!オレは大事な大事な可愛い弟をホモなんかにするワケにはいかないんだ!」
「そっ…そりゃ僕だって断りたいさ… でもタケルくん…「僕の事嫌いなの?」って、目をうるうるさせるんだよ!?調子狂っちゃってさ…」
その気持ちは痛い程よく分かる。
「……丈は、タケルのコトどう思ってるんだ?」
「そりゃ…『仲間』というか…『弟』みたいというか……嫌いではないよ、勿論。でも恋愛の対象としてみたことなんて無いから、突然こんな事言われても困るよ…」
「まぁ、そうだろうな」
どう考えてもタケルの初恋はお先真っ暗だ。いや、この場合明るくても困るんだけど。

「兎に角、頼むよ丈。何とかタケルを傷つけることなく上手く断ってくれ!」
「う…うん。頑張ってみるよ……」
手を取り合って励まし合い乍ら、オレ達はこれからの事を考えて少しへこんだ。










そして数日後の土曜日、丈からオレに電話がかかってきた。
「あのさ…ヤマト。実は明日タケルくんにデートに誘われたんだけど、どうしたらいいと思う?」
オレは危うく電話の前の壁に頭を打ち付けるところだった。
「どう…って、断れよ!」
「だってヤマトがタケルくんの事傷つけるなっていったんじゃないか…だから僕は悩んでるんだよ?」
「うっ…」
確かににべもなく断ったりしたらタケルが傷付くかもしれない…
だからといって、そんな男同士でデートなんて間違ってる!!
デートなんて ………ん?
「ちょっと待て、丈。タケルのヤツ、ただ「一緒にどこかに行きませんか?」とか言ったんじゃないのか?それだったらデートなんて概念を捨てリゃ、普通の友達の付き合いってコトで…」いいんじゃないか?と続けようとしたオレの言葉に、ストップがかかる。
「違うんだ、ヤマト。タケルくん「僕とデートしませんか?」って言ったから…僕も悩んでるんだよ。普通に一緒に遊ぼうとかだったら「じゃぁ皆も誘おう」とか逃げ道を作れたんだけどさ」
うーん……タケルの方が一枚上手なのか?
「取りあえず、キャッチが入ったから電話掛け直すって言って切ったんだけど…ねぇ、僕どうしたらいい?」
「どうしたらって…そうだなぁ…」
タケルをホモなんかにはしたくないんだけど、タケルの悲しむ顔も見たくない。一番良い解決法なんてあるのか!?

考え悩む事数十分。

「す…………」
「す?」
「すまん!丈!! タケルとデートしてやってくれ!!」
…………………………
「えええええぇっ!?」
丈の叫び声がオレの耳を劈いた。






続く



イキナリ続き物でゴメンナサイ〜(>◇<)
何だか予定より長くなったので…ムムム。
次はタケルと丈(+ヤマト/苦笑)の初デートからです(オイ)
明日にはUPできるとイイなぁ。
もともと絵描きなんで、文章は本当に苦手なのです。

2000.10.12. 草ムラうさぎ

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