● はじめての… ●
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どれだけの時間が経ったんだろうか。
隣に座っていたタケルくんが立ち上がった。
僕も、つられて立ち上がった。

「さ、丈さん行こう!」
「う…うん」

って、一体どこに行こうというのだろうか。
タケルくんは微笑み乍ら僕の腕をひいた。






ゆりかもめに乗って、着いた場所は日の出駅。
こんな何もない場所に来て、一体どうするんだろうか。
まさか水上バスに乗るワケじゃないよね?
そう思っていたのに、
タケルくんは僕の手をひいたまま、水上バス乗り場へと向かった。

「ちょっと、タケルくん?」
「丈さん、早く早く!」

促されるままに乗り込んだ水上バスは、お台場に向けて出港した。








ザザンと音をたて、東京湾を割って進む水上バスの甲板の上で、僕とタケルくんは、たゆたう水面をぼんやりと眺めていた。

タケルくんの考えている事が分からない。

好きだと言われた。
付合ってくれと言われた。
デートに誘われた。

どうしてタケルくんは、僕なんかが好きなんだろう。
どうしてタケルくんは、僕と付合いたいんだろう。
どうしてタケルくんは、僕とデートしたかったんだろう。

そして、どうして二人きりになったのに、今、僕達は黙りこくっているんだろう。



水上バスが、レインボーブリッジの下に差し掛かかろうとしたその時、タケルくんがゆっくりと口を開いた。

「ぼく、丈さんの事が、好きなんです」
「………」

それは(何だかおかしな言い回しだけれど)知っている。

「本当に、ぼくは丈さんの事が好きなんです」

タケルくんは、自分の言っている言葉を、自分自信で確認するかのように、ゆっくり、じっくりと、声を少し落として、もう一度口に出して言った。
僕は、容易に言葉を返せずに、タケルくんを見つめた。
タケルくんの目が、まっすぐ僕を見据えている。

「デジタルワールドで、お兄ちゃんはぼくを守ろうと一生懸命だった。
 太一さんは、ぼくを一人前にあつかってくれた。
 そして、丈さんは、そのどちらでもなかった」

そう言って、タケルくんは小さく微笑んだ。

「ここで丈さんは、泳げないぼくを助けてくれたよね?」

霧の結界に覆われたお台場へと向かった、あの時の事か。
あの時、メガシードラモンのサンダージャベリンを受けて、僕達は海に放り出され、溺れてしまったタケルくんを、僕が助けた、あの出来事を言っているのか。
しかし、その件があったから、僕の事を好きだと言うのは、違うんじゃないか?

「お兄ちゃんは、端からぼくの事を守るべき対象としていたよね。
 でも、丈さんは違う。ぼくの事を、ちゃんと一人前に認めていてくれて、その上で、ぼくを助けてくれた。
 デジタマモンのレストランでも、ベジーモンにつかまったぼくを助けてくれたよね、」
「タケルくん、それは…」

危機に面した時の、切迫した動悸を、取違えているのではないか?
そう言いたいのに、何と言って良いかよく分からない。
そんな僕の心を察したのか、タケルくんは笑い乍ら言った。

「勘違いとかじゃないよ?」
「!」

タケルくんの蒼い瞳から、僕は目を逸らす事ができない。
真剣な、その眼差しに、僕の胸は、跳ね上がるような感覚を覚えた。


続く言葉が出てこない。


何処か不安定な気持ちのまま、僕は…僕達を乗せた水上バスは、もうすぐお台場に到着する。

潮風がざわりと頬を撫でた。

















続く




わーん、まだ終わりません〜手直しにばっか時間くって、
ダメダメっぷり本領発揮といったカンジです(爆)
日本語難しい〜〜



2000.04.10. 草ムラうさぎ

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