韓国国籍法改正と在日への影響

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韓国国籍法新旧対照表

改正前 改正後(1998年6月14日施行)
父系血統主義(2条1項1号)

父母両系血統主義(2条1項1号)

→同法施行前に生まれた子どもへの経過規定

非嫡出子の国籍

国籍選択制度の創設(12条1項)
韓国人男性と結婚した外国人女性は、自動的に韓国国籍を取得した(3条1号) 韓国人男性と結婚した外国人女性も、韓国国籍を取得するには帰化手続きが必要(6条2項)
外国人が韓国国籍を取得したときは、6ヶ月以内に外国国籍を失わなければ、自動的に韓国国籍を失う(12条7号) 外国国籍の喪失が困難である場合、猶予期間を延長(15条2項)
かつて韓国国籍を有していた者は、法務部長官の許可があれば、国籍回復できる。(14条) 国籍回復の要件を詳しく定めた(9条)
子は父の姓および本を継いで、父の家に入籍する(民法781条第1項) 父が外国人であるときは、母の姓および本を継ぐことができ、母の家に入籍する。(付則8条により、民法781条第1項に但し書きを設ける)

参考文献

渉外戸籍・国籍法勉強会

届出・申請の手続き

 

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父母両系血統主義

従前の韓国国籍法では、出生のときに父が韓国の国民である場合のみ、韓国国籍を取得した。

これが、今回の国籍法の改正で、「出生のときに、父または母が大韓民国の国民であるもの」と改められた。

これは、出生と同時に韓国国籍を取得するもので、戸籍に名前が載ったときではない。

たとえば、日本で出生し、韓国本国には届出がなされてなかったとしても、父または母が韓国人であれば、その子は当然に韓国国籍を取得しているのである。

 

日本人と韓国人の間に生まれた場合、日本の国籍法は父母両系主義なので、従来は父が韓国人である場合は、韓日二重国籍となり、母が韓国人の場合は、日本国籍のみを取得していた。

これが、1998年6月14日以後に生まれた子どもは、父母のどちらが韓国人であっても、子は韓日双方の国籍を取得し、二重国籍者となるということになった。

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経過規定

改正国籍法が適用になるのは、法の施行以後(1998年6月14日以後)に生まれた子どもである。

だが、それ以前に生まれ、母が韓国人であったが父が外国人であるため、韓国国籍を取得できなかった子どもについても、経過規定が設けられ、韓国国籍取得への道が開かれている。

具体的には、改正法施行前10年の間(1988年6月14日から1998年6月13日まで)に韓国人母親から生まれた子どもは、同法の施行から3年のうち(1998年6月14日から2001年6月13日まで)に法務部長官に届け出れば、韓国国籍を取得できる。

 

注意しなければならないのは、この届出をした子どもは、韓国国籍を取得するが、日本国籍を失うことである。

これは、日本の国籍法に「自己の志望によって外国の国籍を取得したものは、日本国籍を失う」旨の規定があるためである。

法改正後に生まれた子どもが二重国籍になるのと大きな違いがあるので、混同しないようにしたい。

 

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非嫡出子の国籍

韓国人男性と、日本人女性の非嫡出子は、父親が認知しなければ韓国国籍を取得しないが、韓国人女性と日本人男性の非嫡出子は、出生によって当然に韓国国籍を取得する。

子どもが韓国人男性の認知によって韓国国籍を取得するには、二つの方法があるが、これもまた結果に大きな違いをもたらすので注意したい。

 

まず、出生前に認知すると(胎児認知)、出生のときに法律上の韓国人の父親がいたことになるので、子どもは自動的に韓国国籍を取得し、母親の日本国籍も取得して、二重国籍となる。

ところが、出生後、子どもが未成年の間に、韓国人父親が認知をして、法務部長官に届け出ると、韓国国籍を取得することができるが、日本国籍を失ってしまう

 

一方、韓国人女性の非嫡出子は、前述のように韓国国籍を取得するが、日本人男性が胎児認知をすると、子どもは日本国籍を取得する。この場合、6ヶ月のうちに法務部長官に韓国国籍の保有届をしなければ、韓国国籍を失う可能性がある。(これについては、はっきりした見解が韓国法務部からも出ていないようである)

 

また、出生後に日本人父親が認知をしても、子どもは日本国籍を取得しないが、その後両親が法律的に結婚すると、20歳未満の間に法務大臣に届ければ、子どもは日本国籍を取得することができる。しかし、この場合は、韓国国籍は失われる

 

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国籍選択制度

両親が韓国人と日本人の子どもは、二重国籍になるが、この場合22歳になるまでに、どちらかの国籍を選択しなければならない。

日本の国籍法では、22歳までに選択しないものには催告をする制度があるが、韓国国籍法にはそれがなく、期限までに選択しなければ、自動的に韓国国籍を失ってしまう。

また、日本国籍法では、日本国籍を選択した後、外国国籍を離脱する努力義務があるだけだが、韓国国籍法では、まず外国法により現実に外国国籍を失う手続きをした後、法務部長官に届け出ることによって韓国国籍選択がなされる。

日本国籍との二重国籍者であれば、あらかじめ日本国籍の離脱届をしたあとでなければ、韓国国籍を選択することができない

 

注意が必要なのは、改正国籍法の施行前、日本の国籍法が父母両系主義になった時点(1985年1月1日)以降に、韓国人父と日本人母の間に生まれた子どもである。

この子どももまた、国籍選択義務を負っているので、韓国国籍を保持したい場合は、22歳までに日本国籍の離脱届を出し、韓国国籍の選択届をする必要がある。

期限までになにもしなければ、自動的に日本国籍のみが残る。

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国籍回復の要件

上で述べたようなさまざまな理由や、外国への帰化によって、韓国国籍を失った場合、国籍回復の手続きによって、韓国国籍を回復することができる。

これには、韓国に何年居住している、という居住要件がないので、在日の場合、日本に住んだままでも韓国国籍を回復できる。

ただ、韓国国籍を回復すれば、日本国籍を失うのは、いままで見てきたとおりである。

 

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父が外国人であるとき

韓国では、結婚してもそれぞれの姓に変動はないが、子どもが生まれると、原則として、父親の姓と「本」(本貫。祖先の出身地の地名で、戸籍に記載されている。日本の本籍と違い、変更することはできない)を継ぐ。

韓国人女性が外国人と結婚した場合、単独の新戸籍が編成されるが、生まれた子どもは、その戸籍に記載される。

そして、

 

なお、出生届と戸籍に記載される父親の国籍と姓名は、ハングルのみで表記するが、子どもが外国人父の姓を使用するときは、ハングルのみか、漢字がある場合は、漢字とハングルの併記によって表記される。

 

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参考文献

『在日のための韓国国籍法入門』

奥田安弘 岡克彦 著

明石書店 1999年7月30日初版

定価 2500円+税

ISBN4-7503-1189-8

 

韓国国籍法の改正後初めて出版された、一般向けの本格的解説書。

内容は、第1章 改正の概要、第2章 改正の経緯、第3章 逐条解説。

資料として、新旧国籍法全文の対照表などを収録。

 

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渉外戸籍・国籍法勉強会

 

上記『在日のための韓国国籍法入門』の共著者、奥田安弘先生を講師に迎え、東京と大阪で、渉外戸籍・国籍法に関する勉強会が開かれている。

次回は、1月15日(土・祝日ではないので注意)に東京、1月16日に大阪で開催される予定。

詳しい内容、申し込みは、こちらにアクセスしてください。

 

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届出・申請の手続き

日本国内の大使館・領事館で届出ができます。

日本語のできる職員がいるので、まずは電話でお問い合わせを。

 

韓国大使館 東京都港区南麻布1丁目2−5 03-3452-7611
札幌韓国領事館 札幌市中央区北3条西21丁目 011-621-0288
仙台韓国領事館 仙台市青葉区上杉5丁目5−22 022-221-2751
新潟韓国領事館 新潟市白山浦2-1-13 025-230-3411
名古屋韓国領事館 名古屋市中村区名駅南1-19-12 052-586-9221
神戸韓国領事館 神戸市中央区中山手通2-21-5 078-221-4853
大阪韓国領事館 大阪市中央区西心斎橋2-3-4 06-6213-1401
福岡韓国領事館 福岡市中央区地行浜1-1-3 092-771-0461

 

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