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 連載リレー小説「ヒロとスズ」そのとおのに
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 遼来来 > 

 「とっつぁん! 葵せんせ、居る?」
  ヒロは、勢いこんで訊いた。
 「お前に敬語は期待せんが――<とっつぁん>はよせ、と言ってる。
  ……まあいい。美里先生はまだ来てない。これも、珍しいことだが」
 「何時頃、来る?」
 「知るか。もうすぐ来るだろう。少なくとも、HRまでには」
  ……ち。舌打ちを隠して、ヒロは教室へと向かった。HRを待つしかない。
  そんなヒロの後姿を、犬神はひどく気掛かりな目で見つめていたが、何も言わずに職員室に
 入っていった。 
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 ツヴァイ >  

 「なんだよ……たくッ」
  ヒロがフン、と鼻を鳴らした。
  HR前だからか、廊下には誰もいない。外はさんさんと太陽が輝いている。
  その日の光は暖かいのだろうが、この日光、既にスズを蝕むものになっているのかもしれない
 ……。
 「すまない、職員室はどこだ?」
  唐突にヒロの背後から声が掛かった。
  振り返ると、黒いコートにサングラスの男の顔があった。
 「ああ、職員室は、三つ向こうの部屋ですけど・・・」
 「そうか」
  コートの男はヒロの横をすり抜け、職員室の方へと歩いていく。
  と、何か思い出したようにもう一度振り返り、
 「そうだった。美里葵は、二年の受け持ちだったか?」
 「!」
  ヒロがビクッと身体を震わせた。
 「あんた、センセを知ってんの!?」
 「・・・知り合いだ。それより、僕の質問に答えてくれないか?」
 「美里センセは僕のクラスの担任だ。でも、まだ来てない」
 「そうか・・・。まぁ、少し待てばいいか」
  男はまた向きを変え、職員室の方へと歩き始めた。
 「待てよ!アンタ、一体誰なんだよ!?」
 「壬生紅葉」
  振り返りもせずに、男――壬生は名乗った。  


 「連れて行くだけ無駄だよ」
  職員室の中で、先ほどの男と、そして美里が話をしている。
  職員室のドアをそーっと開け、ヒロは中の様子をうかがっていた。
  暫く待ち伏せしていたのだが、美里は考え事をしながらだったのか、ヒロのことなど気付かず
 に職員室へ入ってしまったのだ。
  ヒロは入ろうかと考えたが、すぐに壬生が話し始めたのでタイミングを逸してしまった。
  そして、こうして覗いているわけだ。
 「院長先生でも、ダメなの・・・?」
 「僕も、来須さんから聞いただけだからね。詳細は分かってないけど、吸血鬼化を治癒する方法
 というのは、見つかっていないんだ。正直、手を出さない方が無難だよ。院長先生も、二年くら
 い前に痛い目を見ているらしい。『止める』方法はあっても、『治す』方法はない。止めたとこ
 ろで、また発病する」
  壬生の言葉など、ヒロは途中から耳に入っていなかった。
  ただ、出てきた人物の名前、「来須」だけが入った。
  ――あの壬生って人、来須を知ってる? 
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 テイル > 

 「どういう繋がりなんだ・・・・・・ん? 今治んないって・・・」
  ヒロは職員室のドアを乱暴に開けた!
 「治んないってどういう事だ!!」 
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