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山椒亭Gまる >
――おねがい、おいてかないでよぅ……
ひとりにしないで……
少女の、泣き声が聞こえる。
声がする方を、僕は見た。
こわいよ……
おうちにかえりたいよぉ……
そこには、震える少女がいる。
その手は、紅く濡れていた。
少女は、自分自身に怯えているようだった。
幼いその姿には、あまりにも不釣合いな朱の化粧。
でも、僕は、怖いとは思わなかった。
そして、その少女の手をぎゅっと握る。
この僕の手は小さいけど、両手を使って、その手をしっかりと包む。
理由はないけど、どうしても、そうしたかった。
一瞬、驚いたような顔をした後、少女は僕を見て微笑んだ。
そして、やっぱり小さな手で、僕の手をぎゅっと握り返す。
ねぇ、て、はなさないでね。
やくそくだよ……
そうだ、僕はこの手を離しちゃいけないんだ。
この少女のためにも――僕自身のためにも。
「やくそくするよ」
僕は、少女に言い返す。
そうだ、僕はこの手を離しちゃいけないんだ。
少女が自分自身に打ち勝つためにも――僕が僕自身に打ち勝つためにも。
今僕らの目の前に広がる闇に負けないためにも――。
「ぜったいはなさないよ。やくそく」
そう、約束。
「ぼく、ぜったいにまもるから。――すーちゃんのこと、まもるから――!!」
僕が、護るから。
だから、もう泣かないで――。
――うん。スズのこと、まもってね。
ぜったい、まもってね。
――やくそくだよ――
――やくそくだよ、ひーちゃん――
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