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 連載リレー小説「ヒロとスズ」そのとおのここのつ
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 テイル >

 「なら早くいきましょうよ!! 先生!!」
  ヒロはスズの居場所がわかっただけでうれしかった。
 「そうだな。でも敵がいるのは確かだろう。万が一のために応援を呼んでおく」
  そういうと壬生は携帯をとりだした。
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 遼来来 > 

 「敵――!?」
  信号待ちの隣りの車内で、運転席の壬生が電話しているのを横目で見て、ヒロはつぶやいた。
  その壬生の後部座席で、親友の三木が(頼むさかい、そっちの車と替わってえな)と、合図で
 必死に哀願しているのは、あえて無視して。
 「敵がいるってことは……スズは――?」
 「敵の真っ只中。状況からして、攫われたらしいのだから、当然だな」
 しれっと言う如月。
 「そ、そんな――」
 「ただ、向こうは、その娘を殺さずに、吸血鬼にしようとした。そして、攫って行こうとも。
  ということは、なにかの理由で連中には、その娘が必要だ、ということだ。まだ、殺されては
 いないだろう」
 「まだ、って――」
  安心していいのかどうか、複雑な表情で、ヒロはシートに深く座り直した。
  合図がジェスチャーになり、それがどんどん大げさになっていく、三木の行動は無視して。 
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 ツヴァイ >  

 「応援……ねェ……」
  来須はふん、と鼻で笑った。
  壬生は横目で来須を見たが、すぐに前に向き直ってアクセルを踏んだ。
 「甘ちゃんだな。お前には、意地ってのがないのか?この程度の事で」
  その「スカした」と表現できる壬生の横顔に、来須の嘲笑が向けられた。
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 teiru > 

 「この程度!? 俺にとってはすごい一大事だ!」
  ヒロは大声で来須に言った。
 「そのこの程度でてこずっているあなたにいわれたくない!」
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 ツヴァイ >  

 「吠えるな。」
  激昂するヒロだが、来須は冷たい嘲笑を浴びせた。
 「一大事?一つだけ教えてやる。それだけ一大事だと思うんならな、激昂する前に熟考しろ。
 この中で、お前は戦力になりゃしないんだからな。そのお前が、なんだってここにいるかってな」
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 コペ > 

 「……スズが攫われたからに決まってるだろ!」
 「答えになってないな」
  一拍置いてのヒロの叫びに、如月がツッコミとも思える言葉を吐く。
 「十年以上もいっしょにいる幼馴染みが攫われたんだッ。これ以上、他に考え付く理由があるか
 ッ、って待てコラッ!」
  さらなる叫びが終わる前に、信号が青に変わり、ワンテンポ早く発進しした来須達の車は、ち
 ょっと遠ざかってしまった。
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 遼来来 >

   如月も、それに続くべくアクセルを踏もうとした、その時。
 「ダメ! 発進しないで!」
  葵の鋭い叫び声と同時に、横合いから突然現れた暴走車が、ヒロたちの車に突っ込んで来た!
 「ちっ!」
  ブレーキは間に合わないと見た如月は、アクセルを踏みこみ、ハンドルを廻す。
  ミラーが激しくぶつかり、砕け散ったが、正面衝突はかろうじて避けた。
  しかし、その回避運動で横道に入ってしまい、来須たちの車とは離れてしまった。
 「分断作戦か……」
  如月が、冷静につぶやく。
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 ツヴァイ >  

 「随分と、あの少年を気にしているようですね」
  壬生が皮肉まじりにそう言った。
  来須は横目で壬生の横顔を見、しばらく沈黙した。
  そして口を開く――。
 「俺は、何度もああいう奴を見ている。家族、親、恋人、子供……そんな奴らが関わっててな。
 だが、大抵の奴らは、ただの足手まといだ。その『愛するモノ』って奴が関わって、湯の沸いた
 ような頭でな。ただの我が侭で、そいつは心中ってわけだ」
  嘲笑。
 「……ただの我が侭だ」
  今度は、自嘲。
 「その『我が侭』は、来須さんの?」
  その壬生の言葉に、来須が身体を起こす。
 「あなたの話を聞いていると、犠牲者を増やしたくない、とも聞こえますよ」
 「ケッ。」
  来須は吐き捨てた。
 「そう聞こえるんなら、急げ」
 「わかってます」
  背後で如月達がどうなったかは、壬生も来須も知っていた。が、壬生は車を転換させなかった。
  一路、敵地へと向かう。 
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