前頁戻る次頁


 連載リレー小説「ヒロとスズ」そのにじゅう
 --------------------------------------------------------------------------------
 teiru > 

 「あの……わいはどうすれば……」
  三木はまったく身動きできないままだった……。
 --------------------------------------------------------------------------------
 山椒亭Gまる >

  と、突然車が角をまがった。急いでいるのか、壬生の運転はかなり荒っぽく、顔色一つ変えず
 見事にバランスを取っている二人の後ろで、三木は思いっきり窓ガラスに即頭部をぶつけていた。
 ついでに、座席からカバンも転げ落ち、床に荷物が散らばった。
  その荷物のうちの一つが、シートの下を通って来須の足元まで転がって行く。それは、長さ15
 cmほどの、古びた金属の箱だった。
 「っつ〜。あったく、もうチョイ愛情込めて運転できひんのかいな……」
  頭をさすりつつ、小さく口の中で呟く三木。しかし、すぐに散らばった荷物に気がついて声を
 あげる。
 「うわ、ヤバイ! 箱、箱!! 商品無くしたらオヤジに殺される〜!!」
  慌てて荷物をかき集め始める三木。しかし、目的のものは見つけられなかったようである。
 「うああ〜、どないしよ〜」と唸りつつ頭を抱える三木。
  そして、彼の探し物は、現在来須の手の中にあった。
 「……護符、か?」
  重厚な装飾の施された箱を(所有者には無断で)開いた来須の目に飛び込んできたものは、ペン
 ダントの形をとった装飾品であった。
 「かすかに魔力を感じるな……。おい、小僧、これはどうしたんだ?」
 「あ、それそれ、早う返してーな……って、なんやオッサン、かってに人の荷物開けよってから
 に」
  三木の文句は無視して来須はもう一度同じ質問をする。
 「さっさと答えろ。なんでこんなモンを持ってるんだ?」
 「……何って、オヤジがヨーロッパ帰りの客から買ったペンダントやねんけど……。なんや、そ
 の客、高い金出して美術商からそのペンダントを買ったのに、それから不幸続きとかいうて、二
 束三文の値段でウチに売りに来たんやて。で、そういうモンなら如月骨董品店で見てもらうのが
 ええて、取引ついでに持たされとったねん」
  三木の今日の本来の目的は、そのペンダントを如月に鑑定してもらうことだった。しかし、学
 校に着いてすぐに父から荷物の引取りを言いつけられ、そのまま手伝いにヒロを連れ出し、そし
 て現在がこの状況である。
 (……持ち主が不幸になるって、マジかも知れへんなァ……)
  目の前の剣呑な来須の顔をうかがいつつ、三木は小さくため息をついた。
 --------------------------------------------------------------------------------
 teiru >
 
  一方――。
 「うわ! あぶないなぁ! 先生! 如月さん! 大丈夫ですか!?」
 「ええ……」
  幸いみんな無事だったのでほっとする一行。
 「みんな大丈夫みたいだな。しかし……車はもう無理だな」
 --------------------------------------------------------------------------------
 遼来来 >

  如月は、ガタガタと揺れる車を走らせることをあきらめ、道の端に止めた。
  クルマを降りて、フロントの様子を確認する。
 「ふむ。フェンダーが曲がって、タイヤに当たっているだけか。直すのは難しくはないが……」
 「なら、早く直しましょう! 手伝いますよっ」
  焦るヒロ。
 「うん。だが、お客さんが来ているからね……そっちの応対が済んでからかな」
 「お客さん……?」
  ヒロは、やっと気がついた。
  周りに、車も、人通りも、まったくないことに。
  東京の真ん中、平日の昼間。交通事故の直後。異常この上なかった。
 「結界だよ」
 「結界?」
 「僕たちから周りが、周りから僕たちが、見えないように、無意識に避けるように。そういう、
 暗示がかかる領域」
 「なんでそんなモノが……?」
 「それは、『中』での出来事を、他人に知られたくないからさ。――こんなふうにね」
  如月が手を振ると、まるでそれが合図であったかのように、突然、三っつの人影が現れた。
  年かさの男がふたり、若い女がひとり。
  みなうつむいて、なにやら唸り声を上げているのが、異様だ。
  異様と言えば、肌の色も尋常でない。白いのを通り越して、蒼黒い。
 「!」
  その若い女の方を見て、葵の顔が青ざめた。――真神学園の制服を着ているではないか! 
 --------------------------------------------------------------------------------
 コペ > 

 「あれって……、何日か前から行方知れずになってるっていう、二年の浅葱(あさぎ)っていう
 女子じゃ……」
  ヒロの言葉に、青ざめた顔をした美里が頷いた。
 「術でも施されたのか、それとも、『なれの果て』なのか……。どの道、話の通じる相手ではな
 さそうだね」
  如月が懐に手をいれる。と、それに反応したかのように、三人が跳びかかってきた。人間離れ
 した跳躍力で、如月に二人、ヒロに一人――浅葱が襲いかかる。 
 --------------------------------------------------------------------------------
 teiru > 

 「う、うわあ!」
 「ヒロ君!! 体もたぬ精霊の燃える盾よ私達に守護を!!」
 そう美里が唱えた瞬間、透明な緑の盾がヒロ達を包んだ。
 --------------------------------------------------------------------------------

前頁戻る次頁

感想(そして参加)はコチラ↓
談話室



戻る