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遼来来 >
「せ、せんせ!?」
その体が、微かな青い光に包まれ、嵌められた指輪が緑の閃光を放っている。
そんな「葵せんせ」を、びっくり目で見つめるヒロ。なにが起きたやらさっぱりわからない、
という表情だ。
だが美里の方には、それを説明している余裕はなかった。
「お願い、浅葱さん! 目を、覚まして!」
必死の説得を続ける美里。
しかし、白目を剥き、カギ状に指を曲げ、襲いかかる「浅葱」には、とても「人間の部分」が
残っているようには見えなかった。
そして、開いた口の中には――、
(――牙!?)
ヒロは、スズの口の中に見たのと同じ、非人間的なモノがそこに生えているのを見つけた。
(この人も、スズと同じ――。もしかして、この事件は……、スズだけの――僕たちだけの問題
じゃ……ない――!?)
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ツヴァイ >
そのヒロの思考を中断させたのは、軽い爆音だった。
パン、パン、パン、と三度、その軽い音が響くと、死体が三つ、できていた。
「!」
ヒロは顔を背けた。頭の破裂した死体など、小説の中でしか見た事がなかった。吐き気がした。
「大丈夫?」
ヒロの頭上で声がした。
ヒロが顔を上げると、前髪を視線を隠すように鼻の頭まで伸ばし、黒いコートを着た女がいた。
手首、肘、足首といった関節には突起の付いたリングを填めている。
声と体付きから女だと言う事は判ったが、吸血鬼とは別の意味で人間とは思えなかった。
「あ、あ……」
ヒロは声が出なかった。あまりに唐突な出来事のためだ。
女の方は、それが吸血鬼を見た恐怖のためと勘違いしたらしい。
「吸血鬼なら、もう死んで――元々、死んでるから、死んだとは言えないかもね。まぁ、とにか
く安心――!」
言葉が最後まで終わらないうちに、女は振り返り様に銃を向けた。
如月が、刀を向けていた。
「――吸血鬼……とは気配も力も違うわね。何かしら? オカマみたいな髪型の人」
「そんなコトよりも、説明を求めたいな」
「説明? そこで転がってる吸血鬼の事?」
「まだ、助かる可能性があったと思うが?」
「……だから、それを考慮しろ? 一つだけ言うと、ヴァンパイアハンターっていうのはね、人
助けが仕事じゃないの」
女の顔に嘲笑が浮かぶ。
「吸血鬼を狩る事が、仕事なのよ。特に、私みたいに頭の壊れた特務13課なんかは。」
女は銃口を如月に向けたまま、スーッと横へ移動する。
「来須の下手くその援護に行かなきゃならないんで、この辺で失礼するわ」
その時、ビルの谷間から中型のバイクが疾走してきた。
女がその後ろに飛び乗った。
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