前頁戻る次頁


 連載リレー小説「ヒロとスズ」そのにじゅうさん
 --------------------------------------------------------------------------------
 teiru >
 
  そうして10分ほど時間がたった。
 「うん。なんとか走れるな」
  如月はそういうと美里の後ろとなりまで来て……
 「美里さん。君はここに残るかい?」
 (如月さん!?)
  ヒロがそう思って如月を見た。
 --------------------------------------------------------------------------------
 ツヴァイ > 

  誰もが、誰の心も理解できていなかった。
  それぞれがそれぞれの「想い」を引きずる中、迷っていなかったのは、吸血鬼とは別の意味で
 「ヒトではない」三人の男女だった。
 「……おい、後ろからバイクが飛ばしてきてるぞ。気をつけろ。事故られでもしたらたまらん」
  来須は愛用の銃に確認するように弾丸を装填しながら、ミラーに映っているバイクに視線を向
 けていた。
 「あまり大きなバイクではないですね……。暴走族か? 中型でこんなスピードとは……無茶を
 する」
  壬生もルームミラーで確認した。赤一色のバイク。中型だ。その壬生が「無茶」というスピー
 ドで追いかけてくる。大きさに対してオーバースピードと言うことだ。
 「アホかい。あれはドゥカティやろ。リッターバイクやで」
  気になって後ろを見た三木が鼻で笑った。
  ドゥカティ911。
  中型クラスのボディだが、持っているパワーは計り知れない化け物。
  そのドゥカティが壬生達の車と併走する。
 「BANG!」
  ドゥカティの後ろに乗っているノーヘルの女が、壬生達に向かって鉄砲の形にした左手を向け
 た。
 「……チッ!」
  来須が舌打ちする。
 「……知り合いですか?」
 「この仕事するなら、覚えとけ。女の方は凶手、野郎の方は魔剣士ってあだ名が付いてる奴だ。
 上は俺たちだけじゃ信用できねェのか、13課の奴らにも命令したようだな。」
  来須が僅かに歯軋りした。
  13課とM+M機関は同じ目的を持つが、歴史の浅いM+M機関は2千年という長い時を闘っ
 てきている13課とは、「良好な関係」とは言い難い。
 「お〜い、下手くそ〜♪」
 「シェラ、挑発するな。後が鬱陶しい」
  フィルが背後のシェラに注意を促した。
 「わかったわ――フィル!」
  その表情が一瞬にして真剣なモノに変わる。
  ドゥカティは急ブレーキを掛け、目の前に現れた男をかわした。
  それは壬生達も同じだった。
  ガランとした道のど真ん中に、古めかしい鎧姿の男が立っていたのだ。
 「……あいつ……!」
  フィルがヘルメットのバイザーを上げながら、バイクから降りた。
  ヘルメットを脱ぎ、フィルが腰から剣を抜く。柄には光を受けて様々な色に輝く賢者の石――。
 「出てきたようですね」
 「ああ
  ただならぬ《力》を感じ、壬生と来須も車から降りようとする。が――、
 「来須、お前は降りてくるな。シェラを連れて先に行け」
  フィルが視線すら向けずにそう言った。言いながら、剣を水平に構えながら、男と対峙する。
 「一人で、大丈夫?」
 「三十分くらいは稼げる」
  シェラにそう言うと、フィルは地面を蹴った!
 「ホラ。さっさと行きましょ」
  後部座席のドアを開けて乗り込み、シェラは壬生にそう言った。
 「あ、あの白いヒト、一人で大丈夫かいな?」
  三木が不安げに、視線をシェラとフィルの間に行ったり来たりさせる。
 「まぁ、本人が大丈夫って言うんだから、いいんじゃない」
  シェラはそう言った。
  再び、壬生達は車をスタートさせる。
  その排気音を背後に聞きながら、フィルは口を開いた。
 「失敗したな、フリッツ。いくらお前でも、車にゃ追いつけない」
  男――フリッツに皮肉な笑みを投げかけた。
  その男こそ、重鎮、フリッツ・ハールマンだった。
  フリッツは黙ったまま、静かに剣を抜いた。全長180センチは越えるツヴァイハンダー。
 「貴様が、その乗り物を残していっただろう」
  フリッツは刀身越しにフィルを見た。  
 --------------------------------------------------------------------------------

前頁戻る次頁

感想(そして参加)はコチラ↓
談話室



戻る