砂原の大口さん
あ゛つ゛い゛〜。
はい、今回も登場、新米ハンターのサーラ・ユウです。
前回お伝えした通り、今回は砂原の大口ことハブルポッカ退治に来ています。
…え? 違う? ハプルポッカ? ハプルボッカ(←正解)? うんもう、大口でいいや。
それにしても暑いよう。まだ「炎熱地帯」には入っていないにもかかわらず、汗がだらだら流れてくるんですけど。帰ったらまた温泉に入らないと。
しかも、目標の「大口」さんは、クーラードリンクなしではマジに体力減るほど暑い、その炎熱地帯に潜むというから困りますね。とっとと片づけて、温泉の待つ村に帰りましょー。
炎熱地帯は、要するに砂漠です。一面、砂だらけです。熱い風が吹きすさんでいます。砂の中からぴょんぴょん跳ねてるでっかい魚が見えますが、もちろん小型モンスター扱いです。普通のお魚さんは砂を泳いだりしません。
さて、砂漠と言っても、まっ平らなわけじゃないんですよねー。うねるような砂の山が、あちこちに盛り上がっています。「大口」さんは、あの中のどれかに擬態している…って言うか、潜って隠れていることが多いらしいですね。探すところから始めないと。
まずは手近な、山ってほどには大きくない、ちょうど大型モンスターが砂かぶっていそうな大きさの砂コブに、そろりそろりと近づいて…試しに、無限に撃てる上にとてもやっすいLv1通常弾を一発、撃ちこんでみる。えいっ。
ぶふもああああああ!
突然、背後の方、少し離れたところの砂中から、雄叫びとともに何か巨大なモノが飛び出してきて、心臓が止まりそうになる。
もちろんそれは、探していた大口さんでした。
私の撃った弾丸とはまったく無関係に、単にこちらを見つけたから、威嚇に飛び出した…というところみたい。まあ、見つけたからいいか……。
おあいこ
ええっと、出てきた大口さんは、おっきいサンショウウオみたいな姿で、背中側が固い、甲羅みたいな皮膚で覆われています。そして、水面を泳ぐ魚竜みたいに、砂に半分潜り、砂の上にその背中側だけを見せて、ゆっくりこちらに近づいてきます。
私は、とりあえずLv2通常弾に切り替えたボウガンを構えながら、大口さんの正面を避けて、距離をとりつつ周りを回ろうと試みますが…。
がおおおおおおお!
そんな私の意図を悟ってかどうだか、大口さんは砂から飛び出して、おっきい体をひねりつつ、通称通りの私の背丈ほどもある「大口」を開けて、私の方に飛び掛かって来ました。
そこで見えた体の「裏側」は、貝殻の裏側みたいにビカビカ光る、目が痛くなりそうな色合いの青で、フチとかはピンクやらなにやらも混ざった、すっごく気色悪いモノでした。
いや、モノがモノならキラキラして綺麗なのかもしれないけど、コイツに貼り付いていると、すっごく悪趣味に見える。
って、そんなこと言ってる場合ではありません。避けるの、避けるの! コロリンと転がって襲撃をいなすと、たたたっと走って距離を取り、振り向きざまに弾を何発かぶち込みます。
でも悲鳴ひとつあげやがらない大口さんは、ずざざざーーっと私から距離を取ると、半分砂に潜ったままで、大きく口を開けたまま、こちらに向けて突進してきました。
「おっとととと……」
その速度と迫力に思わず声をあげながら、突進の軸線から離れようとすると、当然というか、避けた方に曲がって突っ込んで来て、目の前まで来ると、飛び出して来て丸飲みしようとしてきます。コロリン避け〜。
距離を取ると、突進してくるのか? と考えた私は、敢えて誘うように距離を取り、あるものを用意しました。
なんでも、ソレを使うと、お魚のように大口さんを「釣り上げられる」のだそうなのです。
ソレは……タル爆弾。
コレを突進する大口さんの軌道上に置き、飲み込ませると、おなかの中でボカーンと爆発して、「棒立ち」状態になるから、針を引っ掛けて釣り上げられる…とのことなんですが。
うーん、うーん、タル爆弾重い。それ以上に、抱えると目の前が見えなくなるくらいおっきいので、視界が……んん? 大口さん、キタ?
ひょい、と軽く置いて、ササっと逃げたかったのですが……。よっこいしょぉ。ふぅー。という感じになってしまいまして。
早い話が、逃げ遅れました。タル爆弾ごと吹っ飛ばされる私。きゃああーー!
灼けるように熱い砂の上をころころと転がった末、ようやく体勢を整えて立ち上がった私は、砂の上に上半身…頭から腕、胸の辺りまでを露出させて、なにやらジタバタしている大口さんを見つけます。どうやら、タルは飲み込んでいたみたいですね。ちゃんすです!
釣竿を魔法のポーチから取り出しつつ、大急ぎで駆け寄ると、釣針付きの糸をていっと投げつけます。ふぃーーっしゅ! 上手いことひっかかりました!
お。おおお。おおおおおお。す、凄い手応えです。こんなバトルは初めてという凄まじいヒキ。まあ、釣りの経験なんて数えるほどしかないんですがねっ。
ぬああ、タル爆弾でふらつく私だけど、これでもハンターだ。ハンターの怪力、思い知れーーっ! と、渾身のチカラを込めて竿を引くと、ついに大口さんは砂から引き抜かれました。
どたんばたん。砂上でひっくりかえって暴れる大口さん。サイケで悪趣味なお腹が丸見えで、気色悪い。こうして全身が地上に出てくると、ますます胴の短いずんぐりむっくりなオオサンショウウオに見えますねえ。胴が短いというよりは、頭が異常に大きいのかな。大口さんだもんね。
なんて、悠長に観察している場合じゃアリマセン。攻撃、攻撃です。ええっと、普段は狙いにくい弱点のエラや、部位破壊できる腕を狙うチャンス。撃つよ、撃つよ!
あ、オーラも寄って来て殴り始めた。影が薄くてすっかり忘れてたけど、オトモアイルーの「オーラ」と「ブルース」も、ちゃんと来てます。雑魚モンスターを一手に引き受けてくれてたから出番がなかっただけ。
そ、そうだ。このチャンスに、拡散弾でダメージを……と、とと、慌てているせいで装填に時間が……起き上がっちゃうよ。早く早く……よし、撃ちます!
ボカーン。発射された拡散弾は、大口さんに命中すると、三発の小爆弾を吐きだして広範囲に爆発を巻き起こします。
コレは、まだ使える武器が弱っちい駆け出しにはありがたい武器ですが、所持弾数制限があって、三発しか持ち込めないのと、発射の時の反動が強いので、こうした隙を狙わないと、キッチリ当たらないし、外すとモッタイナイのです。
でも、装填に手間取ったせいで、一発しか撃てなかった。弱点を狙ってLv2通常弾あたりを撃ちまくった方がよかったかも。あ、一緒に殴ってたオーラがなんか離れたとこでうつ伏せに?
…………そうだった。普段ソロだから意識しなかったけれども、拡散弾の爆発は、仲間のハンターやオトモも巻き込むんだった。二重の意味で、通常弾の方がよかったかな。
まあ、撃っちゃったものは仕方ない!オーラもよく、投げた爆弾で私を吹っ飛ばしたりするから、おあいこ、おあいこ!
油断大敵
でもまあ、それなりのダメージは与えられた様子で、起き上がって砂に潜った大口さんは、地上に姿を見せず、こちらに攻撃もしてこないで、ずぞざざざという砂をかき分ける音だけを残して、あらぬ方向に移動し始めました。エリアを変えるつもりのようです。追いましょう!
気づいたらけっこーダメージ受けてたので、回復してから追いすがったところ、なんかお疲れの様子で、ぐったりしています。
と、こちらに気付くなり、そのおっきな口を開けて、ぶわああああと息を吸い込み始めました。砂ごと。
いや、むしろ砂を吸い込むことが目的だったみたい?
吸い込む動きが止まった直後……猛烈な勢いで、吸い込んだ砂を吐き出し始めたのです。ぐるっと水平に、薙ぎ払うように。
ほんと凄い勢いで、極太の光線みたい。当たったらただ事では済まなそう。
でも……本体は頭を砂の上に出したまま移動せず、その場で回ってるだけなので、射線を外して後ろに回っちゃえば、いい的だったりします。撃て撃て―。
撃ちすぎて、Lv2通常弾が無くなってきました。「連射」できるLv1散弾に切り替え。
……むしろこっちを主力にすべきかもですが。散弾はザコ退治用に使いたいとこなので温存してましたが……ザコはブルース君が主に引き付けてくれるし。
うん、実際、散弾のほうが戦い易いです。狙いを付けなくていいので。そのぶん、ピンポイントでの部位破壊は狙いにくくなりますが……。
ただ、この散弾というやつも、前方に広くぶわぁっと弾をばら撒くわけで、間にオトモとかが居れば巻き込みます。オーラ君、前に出ないでぇ。
と、とにかく。ばっかんばっかん弾をばら撒いていたところ、大口さんは大分弱ったのか、潜ってしまいました。
……出てきません。移動かな? でもぶつけてあるペイントボールの気配は動いていませんし……音響爆弾で誘い出そうかな?
そうして判断に迷った私は、うかつにもその場にずっと立ち止まったまま、大口さんの気配から意識を外してしまいました。
どっかーーーーーーーん!
突然! 怒りの大口さん渾身の、真下からの突き上げジャンプ攻撃です!
油断していた私は、まともに食らってしまい、天高く放り上げられた末、地面に叩きつけられました。
あうう、依頼者も、コレにやられたって依頼書にも書いてあったのに……!
ええ。いつのまにかちびちびとダメージも負っていたため、即乙でした……。
決着
がらがらがら。レスキューアイルー部隊の荷車でキャンプ場に運ばれる私。
そぉれい、と荷車から投げ出され、地べたに派手に転がされたショックで目が覚めた私は、もっさりと立ち上がって、体力増強用のこんがり肉をかじるなどの用意をし直して、再戦に向かいます。
それにしても、なんでレスキューアイルーの「乙ハンター」の扱いはあんなに粗雑なんでしょう。「大型モンスターのいるエリアに“死体回収”しに行くのは怖いんだぞ」という抗議の現れなんでしょうかね……?
一歩間違えたらマジモノの死体になるんだし、粗雑にされたくなければ「乙る」な。という遠回しな激励……ということにしておきましょうか。
炎熱地帯に戻ると、お疲れの様子の大口さんがいました。
今度は負けないよ、とばかりに散弾を撃ち込むと……なんかフラフラしながら逃げて行くんですが。
えっ、何? もしかして、あと一発で捕獲できるくらい弱ってたの?
ああああ、あそこでほんの一瞬油断しなければ、ムダに乙って報酬金額削られないで済んだというのかー!
ううう、これがまさに、とある偉人(変人だという説もあるが)の言葉で言う、一瞬の油断が命取り。というやつですか。がっくりしつつ、逃げる大口さんを追います。
「巣」に戻った大口さんは、いびきをかいて寝ていました。
体力の回復を図っているのでしょうけれど、隙だらけです。タル爆弾などで寝起きドッキリ攻撃もできますが……。
今回は、忘れず持ってきた捕獲セットで捕らえたいと思います。シビレ罠、セーット。
罠の発動とともに、大口さんは巨体を震わせて飛び起きますが、同時にマヒさせられ、動きが止まります。
そこにっ、捕獲用麻酔玉二発、シュート〜。捕獲、完了!
星四つレベル村クエ、初の大型モンスター・ハプルボッカ(これで正解だよね?)戦。しゅーりょー。です!
次は寒いぞ
新しい装備は、おなかの青い皮をアクセントに、背中の頑丈な甲羅と皮をベルト風な作りでまとめた、なかなかオシャレなモノ。
でも発動する「スキル」が、「腹減り」とか「食いしん坊」とか……「大口」さんらしくはあるけれど。
うーん、今使ってる「インゴット」シリーズが、見た目も性能も気に入っているので、今回はスルーかな。
さて、次の依頼はなにかなと村長さんに聞いてみたところ……。
ペッコ? レイアさん? アシラ二頭? うーん、どれももう戦った相手だし、日誌には……。
となると、その次のコイツかな。「眠りを誘う蒼白」。「ドスバギィ」とか言うのが相手みたい。
凍土か……一転して、寒いトコだ〜。
次回、「恐怖のバギィファンネル」に、続く。
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