大問題ダム

大問題ダム


1992/9
もうすでに新聞紙上にて報じられた、大門ダムを水源とする水道水が異常に汚濁し たという記事が出て数日経ちますが、その数日間は小淵沢町の飲食店街は、パニッ ク状態だったとのことを知人から聞きました。朝日新聞に書かれていた以上に、事 は重大だったようです。県はその原因究明をしているそうですが、今だその原因に ついて発表していません。

10年前始めて、大門ダム建設中の現場風景を車窓から見たとき、何か嫌な予感が したのを憶えています。山肌を抉り、コンクリート固めをしていたその景観は、そ の後の清里の開発の先取りをしていたのです。

大門ダム開発の目的が、近隣町村の飲料水源の確保であるならば、現在稼働してい るダムの位置は決定的に不適切と言うべきだろう。当然、専門家たちの知の集積の うえで造られているであろう大門ダムについて、素人として断言できるのは、自然 浄化出来ない構造・工法というような専門知識を必要とするような問題ではなく、 誰もが地図によって確認できる単純な問題である。すでに出来てしまったダムにつ いて何を言ってもしょうがないのかも知れないが、大門ダムとは極端な言い方をす ると、清里の下水の溜池なんだ。地図を見て欲しい。大門ダム・清里湖にどのよう な川が合流しているか。清里の下水の大半が流れ込むであろう小深沢川、中ッ沢川、 そして地図には記載されていないが丘の公園・ゴルフ場のすぐ下からさえ流れてい る別荘団地の水路の水も大門ダムに直接流れ込んでいる。

ダム開発が何年前に計画されたか、多分20年くらい前として、誰もが現在の清里 の開発を予想できなかったかも知れない。しかし、予想とは別の可能性は当然、計 算されなければならなかったはずで、このダムは水源確保以上に水源地を開発促進 する起爆剤として機能してしまい、飲料水確保と水源地開発というとても信じられ ない根源的な矛盾を抱え込んだまま、県のプロジェクトを早期達成すべく、拙速な、 あまりにも拙速な欠陥ダムを造ってしまった。そのことに県は気付いているのか。

開発促進と飲料水確保の為のダムなら小深沢川の合流地点より上流に造るか、川俣 川側に造るのが常識だったろう。ダム建設の立地条件における水量、地形、地盤な どによって現地点が選択されたのたが、飲料水の最大の条件である水質保証が、た とえ今後の下水処理場設置によって清里の下水処理をしたところで、下水は下水で あり、それにもかかわらず水源地の開発を県は抑制するどころか、一連の丘の公 園・コルフ場開発を今なお拡張し、清里の森開発は留まることなく、あげくの果て、 水源のシンボルである八ヶ岳中腹にスキー場までも造ってしまうという、恥じ知ら ずな、底なしの能天気県政のいいかげんさに、大門ダムとは大問題ダムと言い換え ねばならず、今後、望月県政の汚名として後世に光り輝くだろう。

この構造的な矛盾ダムは現在問題なっているリゾート・マンションの産みの親であ り、もしこの清里にゴルフ場とスキー場がなかったら、マンションはけして建たな い。高さ制限とか、景観条例という前にこの事実を認識しておく必要があるだろう。

一方で飲料水確保のダムを造りつつ、その一方では確実に水質汚染するであろう開 発を同一の主体である県自体が平行して実行していたというこの実態を、どのよう に県は説明するのか。

だから、大門ダム水質汚染は、断じて清里住民の下水が原因なのではなく、県の根 本的な認識不足、想像力なき企画が、その無能力が原因の起こるべくして起きた確 信的な犯罪行為と言うべきだ。

それらの根本的欠陥を、あたかも地元住民の責任に回避するかの下水道、下水処理 場設置は、住民への大いなる負担という形で、必然的に新たな開発を余儀なくする だろう。

我々が自分たちの利益のために汚染したまずい水を飲むのならばしょうがない。し かしその利益に関係のない人々が、高い水道代のその水が水源地清里によって汚染 されていると知ったとき、清里人をどう思うか。

我々がこの問題で沈黙することは、清里人としての良心を捨てることである。 今それが問われている。