下水道

下水道


 
          以下の文章は、私が高根町の環境課に内容証
          明郵便で差し出したものである。


                 通知書

           下水道加入を以下の理由によって拒否致し
          ます。
           現在まで、下水の地下浸透によって完全処
          理をしてきたこと。その処理過程において大
          きく成育した白樺が、下水道加入すると枯れ
          てしまうこと(現地で確認してもらいたい)
          また、それらの下水を畑への肥料として活用
          していること(この現状も確認してもらいた
          い)。尚且つその下水道事業が極めて反論理
          的・反倫理的であること(それを証明できま
          す)。
           
           平成八年六月十九日

                 山梨県北巨摩郡高根町清里三五四五
                             差出人 小林品子
                             代理人 小林 恵

              山梨県北巨摩郡高根町村山西割
                 受取人 高根町役場環境課殿
           



     私は高根町の下水道事業に従わないから、高根町が私を法的に訴えて
     きたと想定し、そのシミュレーションをしてみたい。これは法的ゲー
     ムだと思っている。勿論、山梨県の狂った開発が、この狂った下水道
     事業の引金であることは間違いないけれど、そんな所に高根町が争点
     を持って行かせないことは明白で、現実的には、以下の法律のある部
     分が論点になるだろう。

     高根町は、水質汚濁防止法の
     第14条の4(国民の責務)
         何人も、公共用水域の水質の保全を図るため、調理くず、廃食用
         油等の処理、洗剤の使用等を適正に行うように心がけるとともに、
         国又は地方公共団体による生活排水対策の実施に協力しなければ
         ならない。
     を法的論拠とするだろう。

     私の法的論拠は、廃棄物処理法の第6条の4項の「生活環境の保全上
     支障のない方法で容易に処分することができる一般廃棄物は、なるべ
     く自ら処分するように努める」になるだろう。一般廃棄物のなかに糞
     尿が含まれるからだ。それに私の家から排出される下水(水洗便所の
     浄化槽からの下水と、生活排水)が、水質汚濁防止法がいうところの、
     公共用水域に流されているわけではなく、その下水が浸透して地下水
     を汚染するような量であり質であるかどうか。何故なら、大きな白樺
     が下水を吸い上げてしまっているからだ。

     それに水質汚濁防止法の第2条の公共用水域と生活排水の定義を注意
     深く読むと、公共用水域に排出されている家庭からの下水を生活排水
     と定義しているわけで、公共用水域に排出していない私の家の下水は、
     厳密な法的定義としての生活排水には当たらなく、故に地方公共団体
     による生活排水対策の実施に協力する必要など最初から法的に何処に
     もないのだ(水質汚濁防止法第2条の7)。

     水質汚濁防止法第2条の7
       この法律において「生活排水」とは、炊事、洗濯、入浴等人の生
         活に伴い公共用水域に排出される水(排出水を除く)をいう。

    
     という事は、今まで完全に下水を地下浸透方式で処理してきた人は、
     下水道加入を完璧に拒否できることを意味する。これは高根町の下水
     道事業にとって大変な事態だ。私のように拒否する人間が続出したな
     ら、この下水道事業は破綻してしまうからだ。というより、最初から
     この事業が論理的に間違っているのだ。地下浸透で下水を自家処理し
     てきた家庭には、それを継続させ処理状況を監視し、公共用水域に生
     活排水を排出する家庭・施設には、合併浄化層で処理しすることを推
     奨・監視する(それを全部税金でしたところで、下水道事業より遥か
     に安く早く実施できた)。

     この下水道事業がどれだけの税金の無駄遣いをしたか(離散した集落
     形態と急峻な地形を無視した税金をドブに捨てるような工事)。これ
     からどれだけの無駄遣いをするか(起伏の激しい地形にポンプで下水
     を逆流させるための電気代と水道料)。そして加入者がどれだけの負
     担を強いられるか。高根町は今だバブル感覚が抜けないままに町政を
     行っている。それは全て山梨県の県有林開発の狂った設計図から誘発
     されたものである。
      
     また、論理的整合性の問題もある。高根町が今まで奨励・勧告してき
     た下水の処理方法としての地下浸透式を否定する下水道加入を強制し
     てくるなら、今までの下水対策との整合性は無くなってしまう。それ
     をどう説明するのだ。方針を変更するなら、変更を説得できる根拠を
     提示する義務がある。
   

◆悪徳詐欺商法◆ 清里地域で完成しつつある下水道事業は、表面的には同じ事業に見え ながら、二つ省庁(建設省と農林水産省)の縦割行政の中で行われて いて、駅前や念場原地域は、建設省が管轄する公共下水道事業である 一方、下念場や東念場地域は、農林水産省が管轄する農業集落排水事 業で、その事業の法的基盤が違っていた。 つまり、農業集落排水事業は住民の任意加入制で、下水道加入の法的 義務及び強制力はないのに対し、公共下水道事業は、その計画地域に 指定されると、計画地域の住民は下水道法によって自動的・強制的に 下水道への加入の義務が生まれるというのだ。 という事は、そのような住民の義務の生まれる強制力のある事業が計 画・実施されるには、その事業計画の初期段階から住民への情報公開 と住民参加を、事業主体は努める義務があるはずなのに、私の知る範 囲では、そのような透明な手続きによって、住民の納得・合意の中で この下水道事業が着手された痕跡は何処にもないのだ。 住民の知らぬままに事業が進行してしまい、その事業のほぼ完成時点 で、受益者負担が説明され、法的に加入を強制されるとするなら、そ れはまるで、購入の意志もないのに勝手に商品を送り付け、受け取っ たのだから購入する義務がある、と脅している悪徳詐欺商法よりもタ チが悪く、今時ヤクザだってそんな事はしない。ヤクザだってしない のに、行政がするならそれは世も末である。
◆様々な疑問◆ 公共下水道が下水道法による計画地域住民の下水道加入を義務化する として、その時起きるだろう幾つかの疑問を考えてみたい。 まず、集めなくてもいい今まで地下浸透方式で処理していた下水まで も集め、総下水量を増やし、結果として大門ダムの水質を悪化させる 可能性を持っている。終末処理場が距離的にも位置的にもダムの真上 になっているからだ。 そもそも、下水道法が定める処理排水の水質基準は、海なり末端下流 の河川に放流する事を想定しているもので、決してその処理水を飲料 水源として使用することなど前提にしておらず、だからその処理水が 増大すればするほど放流される河川及び湖沼は汚染度を増す。 どんな奇麗な水も止まったときから腐敗が始まる。大門ダムという飲 料水源の閉鎖水域の真上から放流される下水処理水が、水質を悪化さ せることは間違いない。 事実、ある団体が小深沢川の水質調査をした結果、クリーンセンター の下水処理水が放流される地点直下の水が最も汚染度が高かったとの データを出している。 だから、公共下水道の終末処理場で下水処理さえすればもう安全なん だなんて事はない。下水を出さない、下水量を減らす、という処理以 前の過程こそが重要であって、今より閉鎖水域に総下水量を増加させ てしまう公共下水道事業は、決定的に間違っている。 この下水道事業のもう一つの矛盾点は、本来の目的である飲料水源で ある大門ダムの水質を改善し、安全な水道源水を確保することなのに、 その貴重な水道水を下水処理のために途方もなく浪費してしまう事だ。 極端に言うと、高い税金をかけて奇麗にした水を使って下水処理をし、 奇麗にする元の水を汚していることになってしまう。ここでも、水循 環の基本設計の狂った失敗が露呈してしまう。全ては山梨県の開発設 計が狂っていることに還元・起因しているのだ。この狂った水循環の 構造の中では、結論的に言うと何をしても水質の改善どころか、悪化 の速度を止めることはできない。
1996年9月27日 ◆下水道法を読む◆ まずこの法律の第1条及び第2条の第3号を読むと、基本的に下水道 法は、市街地及び都市を想定・対象にして策定されていて、私達のい る清里のような人口密度が低く、建築物が離散している状況の地域な   ど対象になっていない。対象になっていないのに山梨県及び高根町が 下水道法を根拠に、この地域に公共下水道を強制的に設置しようとし ているのは、そのこと自体が大門ダムの水質汚染の深刻さを証明して いる事になる。 また第6条(認可基準)の第1号の条件を満たしていない公共下水道 事業になっている。特に、下水の放流先(飲料水源の大門ダム)の状 況は完全に無視されている。 さて問題の強制力が生まれる第10条の排水区域内の住民への排水設 備の設置義務だが、そこには但し書があり、特別の事情により公共下 水道管理者(つまり高根町)の許可を受けた場合は設置しなくてもい い。 私は特別の事情を内容証明郵便で高根町役場環境課に差し出していて、 環境課は現地を調べに来て私と話合いもしているが、両者の意見は一 致せず、今だその結論は出ていない。しかし私の結論は、下水道法を よく読めば読むほど、清里での公共下水道への加入は絶対にできない。 それが違法であるなら、高根町は私を訴えればいい。 しかし、問題はそんな事ではない。この下水道法が私達の住むこの地 域に適用されることの真に重要な問題とは、下水道法の目的と定義に 示されるように、この法律が市街地及び都市化を前提にしていること で、その結果として私達の地域が市街地並みの開発を認めた地域指定 を受けたと同様の法的根拠を持つことを意味しているのだ。下水道加 入の義務化というムチに対し、開発規制緩和というアメを用意してい る。 具体的に言えば、もう農地など守らず、農地の宅地転換を進ませ、開 発を推進させようということを、この下水道法は基本的に持っている。 このことは、ここで農業をしている人達にとっては、極めて重大な事 態というべきだ。このことに農業をしている人達は、はっきり異義を 唱えるべきだ。極言すると、下水道法の適用は、農業の切捨てを意味 する。収益のよくない農業なんか辞めてもっと金の稼げることをせよ といってるようなものだ。(事実、下念場及び東念場地域は、農業を 守るべく農林水産省の管轄する土地改良法を根拠とする農業集落排水 事業になっている。それゆえ下水道法による住民の下水道加入の法的 義務はないが、農地転用の規制は強い) この法律は、今まで一番環境に優しいくみ取り式便所で生活してきた 人々に、強制的に水洗便所への改造(第11条の3)をさせるという 愚行さえしている。それらの人達の負担(水洗便所への改造費、浄化 槽工事費、下水道管への排水設備工事費、そして加入金)は甚大で、 それを原因として農地の転用が誘発されるだろう。 下水道法が本質的に持つ都市化開発を認可・誘発させることにより、 当初の公共下水道事業の目的である大門ダムの水質改善は果たせず、 今以上に水質の悪化する危険性がある。山梨県の県有林の狂った開発 による大門ダムの水質汚染を改善するための公共下水道事業が、結果 としてさらなる開発の法的根拠を与えてしまい、開発の起爆剤になる 可能性さえ持っているのだ。(終末処理場をもつ公共下水道が有るの だから、その地域はもっと開発をしてもいいという口実・根拠が誕生 する。事実、将来の開発を認め想定した処理能力の終末処理場を設置 しているからだ。)