合わせを開いた僕の目の前に、形のよい双丘が現れた。
 思わず、口の中のものをゴクリと飲み込む。と、小さく震えていることに気がついた。

「……ねぇ、もしかして初めて?」

 自然に出た言葉に案の定、はその問いかけにも答えてくれなかった。
 けれど、力一杯に背けられた顔と、耳が真っ赤になっていることが答えだと知った。

「うれしいな、僕がの処女をもらえるなんて。お返しに殺してあげるよ」

 『殺す』という言葉にビクリと震えた彼女だけど、声はさっきから一言も出さない。

「……声を出さないのは精一杯の抵抗なんだろうけど。
 それが逆に、男の被虐心を煽ってるってこともあると覚えておいた方がいいよ。
 もちろん、僕だって例外じゃないから」

 剥き出しにさせた胸を弄りながら、僕はの耳に囁く。

「あぅっ!」

 先端に爪を立てた途端、大きな声が上がった。固くそそり立ったそこは、どうやら彼女の弱点らしい。

「かわいいね。だから、僕はが好きだよ


 その言葉を聞いてキスされて、目をみ開いた私は涙がこぼれたのを知った。
 少し前に聞いた言葉、受け取った温もりが、私の頭の中を鮮明にしていく感覚を覚える。

「ど、どうしたのっ?」

 慌てて離れた彼だけど、私は目の前の紫水晶から目が逸らせない。涙が止まらない。

「……キ……キラぁ……」

「え……僕のこと……わかるの……?」

 恐る恐る問いかけてきた彼に、大きく頷いた。アメジストの瞳が揺らぎ始める。

「…………ッ……」

 きつく抱きしめられて、私はキラの胸に顔を埋めた。
 拘束を解かれた腕は彼の背中に回り、しっかりと服を握りしめた。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

「謝らなくていいよ。があんな態度を取ったのは、理由があるんだから」

「でも、それでもひどい言葉ばかりぶつけたッ」

「気にしなくていいってば。それとも、あれがの本心?」

 私は何度も首を振る。
 そして顔をあげると、顔中に優しいキスが降ってきた。
 何度か啄むような口付けを交わして、瞳を閉じて深いキスを受け入れる。
 今度は気持ち悪いなんて思わなかった。侵入してきたキラに、私はぎこちなく答えた。

「……んふ…ぁ……」

 ゆっくりと離れると、繋いでいる銀の糸が光った。それを絡め取るかのように軽いキスを交わし。
 三度首筋に顔を埋めてきた彼の、その頭を私は抱え込む。
 胸を揉まれながら吹きかけられるキラの吐息が、触れてくる彼の舌が熱くて、徐々に頭がボンヤリしてくる。

「みんな本当に心配してたんだよ。バルトフェルドさんもマリューさんもカガリも、ラクスも」

 ぴくん、と震えがきた。
 そのまま私は、キラの両肩に手を掛けて彼をやんわりと引き離した。

「……だめ。これ以上は駄目なの」

 ズルズルと流されてしまいそうだった私を、引き戻したのは彼女の名前。

「私はキラに抱かれちゃいけない。キラも、私を抱いちゃだめなの」

「何でっ……僕はのことが……」

 その続きを封じるように、私はキラの唇に人差し指を当てた。

「キラがその言葉を言うべき人は私じゃない」

「どういう……意味?」

「私はラクスにはなれない。ましてや、彼女の代わりに抱かれてあげることなんてできない。
 キラが本当に欲しているのは、抱きたいのはラクスでしょ?」

 私はキラの腕から逃げ出すと、外されたボタンを再び閉めた。
 そしてすべて閉め終えると、顔を上げた。

「ほら、いつまでもこんなところにいたら誤解されても知らないから。
 早くロック解除して、自分の部屋に帰った方がいいと思うんだけど」

こそ、何を誤解してるのさ?」

 ツカツカと歩いてきたキラは、私を抱え上げた。

「ちょ、ちょっと!」

 抗議の声はあっさりと無視され、私の体はベッドの上に落とされる。
 そして起き上がるよりも早く、覆い被さってきたキラ。その時に彼の胸元で光るプレートに気がつく。

「キラ……それ……ど……して……?」

 自分が作ったものを見間違えるはずない。

「あれ、覚えてないの? これはが作ったものでしょ?
 きれいなのに何で海に投げ捨てちゃったの?」

 『もったいないから、僕がもらっちゃった。いいよね?』と笑いながら、キラは言う。
 いいも悪いも、もともとキラにあげるつもりで作った……とは言えない。
 捨てた理由だって、今の私に言えるわけないじゃない……。

「キラどいて。私はラクスの代わりじゃないんだから」

「ヤだ。それより、どうしてここでラクスの名前が出てくるわけ?
 あのね、僕が本当に好きで欲してるのはで、抱きたいと思っているのもだけ。
 勝手に人の心を決めつけないでよ」

「だ、だって……。キラはいつもラクスと一緒で、彼女ばかり見てて、彼女のことしか心配してなくて……」

「だから、僕がラクスのことを好きだって思ったわけ?」

「わ、悪いっ?」


 ぷっと頬を膨らませながら抗議してくる彼女。
 僕は思わず小さなため息。そして、ふっと思いついた。

「好きなのはだけだってわかってもらうために、僕は実力行使にでるよ。
 殺してほしいって言ってたぐらいだし、何回でも殺してあげる」

 微笑んだ僕の顔に、何故か引きつった顔を見せた
 今度はボタンを外すなんてまだるっこしいことは省いて、たくし上げたパジャマを腕から引き抜いた。