1.序論
2000年といえば、オリンピックイヤーとしてスポーツ産業は活気づいたように見えましたが、プロ野球はそれにかき消されそうな瀬戸際に、ON対決という名勝負があり、なんとか20世紀を有終の美で飾れました。
ほぼ毎日、野球の話題でスポーツ誌の一面が飾られ、プロ野球中心のスポーツニュース番組も数多くあります。それらの恩恵にもちろん私も預かっているわけです(笑)
しかし、それで21世紀のプロ野球が安泰かといえば、そうではありません。パ・リーグ一番人気のイチロー選手がメジャーへ行き、逆指名、FA(フリーエージェント制度)での戦力の片寄り、Bクラスチームの定着化など、プロ野球人気が下がる可能性はいくらでもあります。
最近よく耳にする、名門スポーツチームの廃部。企業側からすれば、会社が危ない時に、本業以外の所に金が出せるかということなのでしょうが、それに関してはみおは全く違う意見なのですが、それは今語るところでないので、置いておいて。
とにかく、企業スポーツが成り立たなくなった不況の今、利益を追い求める積極的な経営は、必ず野球界そのものを良いものにすると、私は考えています。なぜなら、親会社の都合で身売りを繰り返し、その度にホーム球場の場所や球団名を変えるようなチームに、熱烈なファンはつかないからです。それは、一度でもどこかのスポーツチームを好きになった事のある人なら、分かっていただけると思います。
今年のセ・リーグの覇者は、御存知の通り、読売ジャイアンツ(巨人)でした。
前年のオフにFAで大型選手の工藤と江藤を獲得し、ドラフトにも逆指名で成功。さらに外国人選手の補強も行った巨人。
その補強には、数十億もの他球団が到底動かすことのできない金額のお金が動いています。金満野球の象徴として、批判を受けました。象徴というか、今のところ巨人しかできないんだけど、こんなこと・・・。
しかし、渡辺オーナーは「企業野球だ、勝つ為に投資をして何が悪い」と明言して、今後もこの体勢を崩さないことをアピールしました。
それを善とするか悪とするかは別問題としまして、なぜ巨人はそんなにお金が出せるのか。
素朴な疑問として残ります。
ではまず、球団としての支出と収入を調べていきましょう。
球団の支出は選手への年俸を主とします。
・ 選手への年俸
・ 遠征費と新人の補強費(約15億円)
・ 球場使用料や運営経費(約20億円)
以上がどの球団も絶対に削ることのできない支出です。最低でもこれらに、60億円はかかると言われています。
では、60億かかるなら、70億儲けりゃいいじゃないかという話しになるのですが、収入は以下の3点が柱になります。
・ ホーム球場での入場料収入
・ キャラクター商品などの営業収入
・ テレビ局からの放映権料収入
この3点のうち、最後の「放映権料」というのがポイントになります。
現在の球団経営状態は、セ・リーグは巨人を筆頭に全球団が黒字、パ・リーグは全球団が赤字と言われています。(各球団は決算報告を公開していないので、全て推定)
この両リーグの明暗を分けているのが、放映権料なのです。
視聴率が稼げる巨人戦の放映権料は一試合が1億円前後と言われています。それに巨人はもちろんのこと、他のセ・リーグ球団もが支えられているのです。
こうして巨人は、「豊富な放映権収入→人気選手の獲得→選手の露出機会の増加→認知度と人気のアップ→広告収入の増加」の好サイクルを辿ることになります。よく考えると、この放映権収入に支えられているのは、巨人ファンもなのかも。
しかし、もっと元を考えると、人気があるから放映権料が高いわけで、じゃあその視聴率を上げている人気はいつからなの?とか考えればキリがありません。そのへんについては、卒論では触れませんでしたが・・・・。
他球団のオーナーは巨人の金満経営を批判しますが、これも一つの「強くなれば、より一層の利益が見込める」というビジネスのスタイルであることには間違いなく、他球団も現在巨人に頼った経営をしているのだから、あまり強く言える立場にはないと言えるでしょう。
巨人に対して戦力の平均化や放映権収入のリーグ一括管理などを望めば、それもまた巨人が頂点にたったリーグ運営になってしまいます。現在よりも巨人の立場が強くなる可能性もあります。
パ・リーグは、年間数試合のセ・リーグとの交流試合を望み続けていますが、それも巨人戦の放映権料と球場入場料をあてにしたもので、この案が実現すれば巨人戦が減ってしまう、セ・リーグの他球団にはね除けられていると言われています。
他球団は、もっと自らの力で球団を独立的に経営し、利益を出していく方法がないのでしょうか。
根本的な経営を見直し、努力しない限り、金満経営と巨人を批判する姿も、ただの手抜き経営の一端と見られても仕方がないような気がします。これは、贔屓目抜きにしても。
それでは、他球団はどのような努力をすべきなのか、今現在どういった工夫をしているのか、赤字のパ・リーグを中心に見ていくことにします。
果たして、プロ野球は本当に儲かる事業なのでしょうか。