2.改革


現在の球団経営の実情は、セ・リーグは黒字、パ・リーグは赤字の「常識」があります。そのカギはほとんど巨人が握っているようなものです。
前述のように、巨人戦の放映権料が明暗を分けています。その他に、球団収入の大部分を占めているのが入場料なのですが、今年の球団観客動員数を見比べてみると、下位チームに関してはリーグによっての大きな差はないように見えます。
(ここに実は、観客動員数の表があったのですが、なにやら後で見返すと、とてもおかしなことになっていたので、省きます(笑)そのまま提出したんかい、ワシ・・・・・・)

総入場者数などはかなり差がありますが、それも巨人戦のみ球場が満員になっているという現状があるからで、セ・リーグだから、パ・リーグだからというものではないようです。根強いファンに支えられている人気球団の阪神でさえ、1997年には長引く成績不振の為、甲子園の入場者数が減少し、3億円弱(推定)の赤字を出しています。
去年(99年)は、野村監督を招いたことによる野村フィーバーで盛り上がったものの、今年(2000年)も最下位となり、球団ワースト記録となる3年連続最下位。阪神も他球団と同じように、負け続ければ客が離れる傾向にあり、経営にもなんらかの影響が出てきて当然でしょう。
今まで、勝っても負けても甲子園球場に通ってきていた、熱心なファンの上にあぐらをかいた経営を行ってきた為、先の見えない中途半端な改革しか行ってこなかった。そのツケが、今から徐々に経営に直接関わる問題として明確化してくるだろうと思われます。

パ・リーグの観客動員数ランクは2000年シーズンの順位と全く同じです。セ・リーグも阪神の特例を除けば、ほぼシーズンの順位に準じています。チームが強ければ、ファンが球場に通うという法則は、成立すると言ってもいいでしょう。ファンはやはり強いチームが見たいのです。

今年のあるデータがあります。2000年春、大リーグのメッツとカブスが開幕戦を日本で行いました。初の日本での公式戦で、メディアは湧きに湧きました。
開幕前には、東京ドームで巨人とのオープン戦を行いましたが、その試合の視聴率が約18パーセント。目玉であるはずの開幕戦は約12、3パーセント、第2戦も10パーセント程度でした。
「野球」という観点で考えれば、大リーグの公式戦の方が人気は高いだろうと予想されますが、今のファンは「野球」を見るのではなく「贔屓にしているチーム」を見ているのです。昔は、娯楽が少なかったこともあり「野球を見る」という姿勢が基本でしたが、現在では「好きなチームを応援する」人が一番多いと見られています。かくいう私も、メジャーには興味ないです(笑)

そのような点からいっても、リーグに関係なく巨人に依存しない部分での経営努力をするのならば、やはり自チームのファンに球場に通ってもらう事が一番てっとり早いのではないでしょうか。
そこで、スポーツチームとしての在り方をいち早く新しい視点で考えたのが、横浜ベイスターズでした。ベイスターズの親会社は総合食品会社のマルハです。
1993年、大洋ホエールズから、横浜ベイスターズという名前に変更することを決めたのは、オーナーの中部慶次郎さんという人でした。きっかけは、地元紙の関係者に、「広島みたいに地元の応援で盛り上がる球団にしてください」と言われたことでした。それを機に、地域密着型経営を打ち出し、横浜という土地をアピールした球団PRに路線を変更したのです。中部オーナーは、「それをしていなければ、セ・リーグでまっ先に赤字に転落していたのはうちだった」と後に語っています。
横浜はその後、1998年には38年ぶりというリーグ優勝を果たし、その優勝パレードには40万人もの人々が集まりました。地域密着型の球団でなければ、この栄光はなかったかもしれません。
そしてさらに、横浜ベイスターズの改革は続きます。2000年度から、2軍を「湘南シーレックス」とし、独立採算制をとったのです。これは、日本の2軍球団運営では、画期的なことでした。
もちろん、基本テーマは地域密着です。「横浜」よりさらに狭い「湘南」という土地名をチーム名に入れ、ユニフォーム、マスコットも全て1から作り上げました。今まで、一軍におんぶにだっこの状態で、採算度外視だった2軍は、全ての球団の頭痛のタネでしたが、横浜ベイスターズは、そんな2軍をチームとして独立させるだけでなく、地域との共存で、街の活性化にも役立てようとしたのです。
結果、湘南シーレックスとしてのホーム(横須賀球場)開幕戦は、2000人以上もの観客が集まり、異例の外野開放となりました。ちなみにその中には私もカウントされてます(笑)

地元の人のシーレックスへの関心は高まっています。開幕時はシーレックスのユニフォームを着ていた金城選手は、シーズン途中に1軍に上がり、最終的には首位打者のタイトルを取りました。
米国には、マイナーの試合を見て楽しむ土壌があります。若手が育つのを見届ける楽しさ、気楽に野球を見る楽しさを、シーレックスは地元の人に教えようとしているのです。
今シーズンのシーレックスの試合では、2軍では異例のトランペットや太鼓などの応援があり、選手の名前を書いたボードを持つファンがいました。(なんと、ビジターであるジャイアンツ球場にもいた!)
シーレックスの戦略の第一段階は成功したと言えるでしょう。

同じように、2軍のチームを独立採算制にしたパ・リーグのチームがあります。オリックスです。
オリックスは、サーパスマンションを売り出している穴吹工務店とスポンサー契約を結び、2軍のチーム名を「サーパス神戸」に変えました。
米大リーグではさほど珍しくない2軍の独立採算制ですが、日本の場合、1軍が試合をやっている脇で2軍が試合をしていても、観客動員は期待できません。
そういった事から、スポンサー契約の道を選び、球団はこれによって1億円の資金援助を穴吹工務店から受けることになりました。
それと同時に、今まで無料にしていた入場料などを取ることにしました。
とはいっても、現時点での利益の確保は見込んでいません。
「1軍で球場を満員にできないのに、2軍で大儲けできるとは考えられない」(岡添社長)というのが、パ・リーグの現状です。 しかし、少しでも経営の健全化をはかりたいが為に、試行錯誤をしているのです。



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