中原由美子 バレエ・フレイグランス
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NHK主催「情報化メディア懇談会」の機関紙に紹介されました。
視点&思点
見えない感覚に訴えるバレエを!
〜“舞い香る”を模索する〜
バレエ・フレイグランス主宰
中原由美子
舞う ― 実際の動き、踊り <身体>
香る ― 目に見えないイメージ、雰囲気 <心>
 バレエは目で観るものと考えるのが一般的ですが、私はさらに目に見えない感覚に訴えるものを創りたいと思いつづけています。そこで、サブタイトルに“舞い香る”を掲げた「バレエ・フレイグランス」の公演を、ちょうど10年前の1994年から隔年で開催してきました。6回目にあたる今年は、7月16−17日に天王洲アイルのアートスフィアで開催され、無事幕を降ろすことが出来ました。I-Mediaのお仲間も大勢観に来ていただきましたが、ヴィジュアルな中に、わずかでも“ほのかな香り”を感じていただけましたでしょうか。
 今回上演した3つの作品について、発想から仕上げまでの流れを簡単に記しておきます。
「Falls」 -滝- 振付/中原 由美子
 発想は、86 年に封切られた映画『Mission』の音楽(エンニオ・モリコーネ作)のCDとの出会いでした。映画の内容は、イエズス会の伝道(Mission)が成功した稀有な地として知られるパラグアイとアルゼンチンの国境にあるイグアスの滝の周辺で、1750年から58年にかけて起きた悲劇の史実を描いたものです。残念ながら、私は映画のパンフレットと原作本でしか、この作品にふれることはできませんでしたが、CDからは十分すぎるほどのイメージがひろがりました。そして、「滝」をテーマにしたダンスを創りたいと思い立ったのです。
  打たれても起ちあがる人々の力強い想いと祈り。
      打たれる―痛み―悲歌―暴走―救い―望み―祈り
 6人の女性がそれぞれの想いを7つのパートに分かれて踊りました。
滝の音とともに映像を舞台前面の紗幕に映し、次第に舞台奥の水しぶき(ドライアイスによる舞台効果)に打たれるダンサーに照明が入ります。滝音が音楽へとフェードインすると、ダンサーの身体画が揺れ始めその動きは次第に高まっていきます。映像・照明・音響・ダンスがみごとに響きあった瞬間でした。観客が一時の清涼の中から、滝の瀑布に負けない人々の力強い想いを感じていただけたら、作者冥利です。
「釣針」 -恋のつりばり- 演出・振付/中原 由美子
 かつて海外にバレエの勉強にでた時、日本人のルーツである伝統芸能をもっと知り大切にすべきであると強く感じました。そして能・狂言を勉強しているうちに「釣針」という演目に出会いました。
  狂言では、大名と太郎冠者が妻を得ようと恵比寿詣りにでかけます。夢の中のお告げに従い、大名が釣り上げたのは眉目秀麗な美女。太郎冠者が我もと釣針をたれると、なんと釣れたのは、美女ならぬ醜女。太郎冠者が追っかけられ引っ込みとなります。
 この大筋に私なりの演出を加えてみました。
 2組の祝言後、立場が逆転し、大名は妻のわがままに手をやき、太郎冠者は妻につくされ幸せになるという筋立てにして、現代にも通じる男女の悲喜交々を、「くすっと笑ってもらえれば」というバレエ作品に仕立てました。言葉のないダンスでは演者の動きでしか観客に伝えることができないので、工夫のいる作業でした。
  照明によって四角い能舞台に仕立てるとともに、柱の代わりに短冊状の布を吊って、ダンスが可能な空間を造りだしました。
  ここでも照明の冴え、ダンサーのきめ細かい演技、また深みある音楽に支えられました。
「椿姫」 -yumiko- 演出・選曲/中原 由美子  演出・振付/地主 律子  美術/岡林 里依  衣裳/西原 梨恵
 デュマ・フィスの小説「椿姫」を読むことから作品創りが始まりました。
 椿の花に囲まれ“椿姫”と呼ばれる、貴婦人の香り漂う娼婦マルグリット。
パリの社交界で奔放で虚飾な日々を送っていたマルグリットは、純情多感な青年アルマンによって真実の愛に目覚め、純粋でひた向きな恋の喜びを知ります。ところが、アルマンの父に息子との別離を求められ、マルグリットは心乱されます。しかし、アルマンを真に愛することは別離しかないと悟り、彼のもとを去り、病の床でひとり命を閉じるのです。
  哀しいこの物語を単に筋をなぞるだけでなく、マルグリットの心象模様を中心に私と4人のコロス(物語を進行させる役)で約35分の作品に仕上げました。
  音楽はラフマニノフの交響曲第2番を使い、全体を4つの景に分け、装置・照明の変化で場面と心象の変化を表しました。
一景 ― 翻弄

二景 ― 華

三景 ― 苦悩
四景 ― 哀しみ
       光へ

舞台全面を覆う白い布の中央に椿姫。運命に翻弄される様。
コロスの助けで白い布をぬける。
引き抜きのごとくバイオレット色のドレスに変身。
社交界の華々しい椿姫。
別離を迫る黒い影(4人のコロス)に囲まれ、決別の覚悟。
白い影に伴われ、寝台に横たわる白い夜着の椿姫。 
ひとり病の床に崩れ、花びらが落ちる様に命を閉じる。
 振付の地主律子さんと長い時間をかけ演出を練り、試行錯誤を繰り返しました。そしてスタジオで動きをつけ始め、そこに舞台美術の岡林里依さんと衣裳の西原梨恵さんに加わってもらい、イメージをふくらませてもらう作業が始まりました。まさに四者共同の作品創りを続け、さらに、舞台監督・照明・音響・裏方の職人技に助けられ、舞台で私の“椿姫”を演じることができました。
 公演を終わって、たくさんの方から、感動した、涙が止まらなかった、しばらく余韻が続いたとの感想をいただき、演者と観客とが想いを共有できた素晴らしい一期一会であったことを再認識いたしました。これからも、「舞い香る」を根底において、いままでの作品をより練り上げて再演を繰り返す一方、新しい出会いによる新たなコラボレ−トを実現し、奇をてらうことなく本物の作品、心に残るバレエ作品を創り続けていきたいと思います。
  また、日本人のルーツである文化・芸能を大切にし、西洋のバレエとの融合をはかってゆくつもりです。そして、俳句の世界をバレエ化したいと早くも次なる想を練っているところです。
バレエ・フレイグランス
「中原由美子バレエ・フレイグランス」は、私が創作するバレエ作品を披露する公演活動です。
バレエ・アカデミー
足立区千住の「バレエスタジオ・グレイス」に本拠を置く、中原由美子のバレエ教室です。
アート・フレイグランス
バレエテクニックの向上と併せて、バレエ関連のアート、文化に関したワークショップの開催等の講演活動を行っています。
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