航空自衛隊浜松基地航空祭見聞記(2)
広い基地内をうろつきまわってトイレにたどり着き用を足して、まずは屋台で軽く朝飯でも……と思ったが、
「昼くらいになると絶対混雑する、空いてる今のうちに地上展示の機体を見て写真を撮ってしまおう」
という氷猫君の発言により、そのまま機体見物に入る。
(元々、氷猫君の目的はこれだった)
まずは目についたのはT4のコクピット見学である、すでに列が出来ていたのでどうしようかと思ったが……
「今のうちじゃないともっと混雑するんだから見てこいよ、そんぐらい待っててやるから」
と奨められたので、いそいそと広田は列に並んだ。
並んで十数秒の後、なぜか待ってると言った氷猫君が後ろにいた。
「良く考えてみれば、俺も写真撮るチャンスだった(^^;」
だそうな(笑)
T4は亜音速以下の飛行のできる、自衛隊のパイロット養成のための中等訓練用機種である、純国産の機体である。
運動性極めて良し、軽量でエンジンパワーもそれなりにあるため、F−15の戦闘機動に近い動きができるほどの優れものである。
外見は格好良く、美しく、なによりも可愛い(^^)v
生物を思わせるような滑らかな曲面が多用されており、ついた愛称が「ドルフィン」と来たもんだ。
広田お気に入りの機体なのである、間近でみてもう頬がゆるみっぱなし。
飽きるほど見つめまくったあげく、ようやくF−15とF−4へと。
うーむ、当然と言えば当然なのだがT4と比べて、こいつら可愛げがない。
パワー感と存在感は段違いなのだが。
F−4は航空自衛隊仕様でも空母着艦用フック(アレスティングフック)が付いてた、空中給油システムは取り除かれてると聞いていたが、ここは残っててちと意外。
F−4を見終ったあと、ふと横を見てみるとそこはちょうど、F−15の真後ろだった。
F−15はF−4の前に寄って見物していたのだが、このアングルからはその時が始めて。
「……こいつのエンジンが始動したら、ここにいても俺達吹っ飛ぶだろうなぁ……」
「…………(×2、しばらく二人とも沈黙)」
今まで広田はF−15を「性能良くて格好いい機体」としか見ていなかった。
だけどこの時我らは……
「嫌だ」
と氷猫君は言った。
「怖い」
と広田は表現した。
F−15の後ろ姿は、世界第一級戦闘機と呼ばれることの本当の意味を表してた。
禍々しいまでのパワー感と威圧感が、そこに近寄りがたいほどににじみでていた。
これ以降、我々の中で「F−15=化け物」という認識が固定されたのであった。
それにしてもイーグルドライバーってのはこれをたった一人で、自分の手足のように操るのだなぁ……
この後、気を取り直して機体見物&撮影を再開する。
しかし……
「……カメラがいかれた……」
しばらくあれやこれやといじったが、氷猫君のニコンF3は使用可能状態にならなかった。
しかたなく予備に持ってきてたデジカメに装備変更。
気疲れしたので、屋台に混じって設置されていた野外炊具一号(自衛隊の野戦用炊事システム)のところに行きウドン2杯を購入、朝飯にする。
喰ってる最中にF−15が、雷鳴のようなエンジン音をぶちまけながら基地上空を飛び回り始めた。
先に飛んでいたT−4とは音がまるっきり違う、やっぱりこいつは化け物だ。
食事後、今度はパトリオットを始めとする地上装備のあれこれを見物に入った。
まず歩兵用対空ミサイル、「スティンガー」である。
希望すれば担がせてくれるという事なので、さっそく広田は列に並んだ。
広田の番がきてヘルメットとアーマーベストを着用させてもらい、二人の自衛隊隊員の補助を受けながらスティンガーを構える。
発射装置及びミサイル本体で大体15キロぐらい、広田はそれほど重いとは思わなかった。
さっきまで散々見ていた戦闘機が、これで撃墜できるかと思うとちと不思議。
次に見たのがパトリオット。
これは4台くらい車両にワンセットが乗る。
まずはミサイル本体の搭載されるLS(ランチステーション)、レーダーを搭載したRS(レーダーステーション)、発射管制を行うECS(エンゲージドコントロールシステム……だったと思う(^^;)、システム全体の電源を司るEPP(エレクトリックパワープラント)
それぞれの装備の警護についていた隊員さん達は、広田達の「これなんの略ですか?」「パトリオット以外のミサイルって搭載できるんですか?」といった質問に丁寧に答えてくれた。
ついでに、LSは本来4基を四方に向けて装備しなければいけないのだが、予算の都合で一基だけなのだと裏事情まで教えてくれた。
実に面白かった、深く感謝。
そういえば広田が「パトリオット」と呼ぶとさりげなく、「ペトリオット」と言い直されてたっけ。
そっちの方が正しい発音らしい(笑)
最後に短SAM(車載型短距離地対空ミサイルと言えばいいのかな?)を見物した。
車両に4発のミサイルを搭載、これも別にレーダー車があってそのデータを元に発射されるらしい。
パトリオットと違うのは、レーダーを破壊された時に備えて目視手動発射装置があるという事だった。
観光地にある望遠鏡をごつく性能をよくしたような感じで、三脚にのせてミサイルランチャーから離れたところに設置するようになっているらしい。
そりゃそうか、近いところにいたらミサイルの噴煙でこっちが死んじゃう(^^;
この手動装置を触らせてもらいながら、その辺を少し質問してみた。
「この装置で見た方向にミサイルも向きを変えるんですか、こうぐるっと台が回ったりして?」
「えぇそうです、動かしてみますか?」
「え? え! い、いいんですか!?」
「はい、少しくらいなら動かしてもいいと上に言われてますんで」
我々がびっくりしている間に、この隊員さんは機敏に手動装置とミサイルランチャーの同調準備に入った。
実ににこやかに準備してくれた、今から考えると自分達の装備を自慢したかったというのもあったのではないかと思う(笑)←こういう時でないと自分達のやってる事を具体的に知らせる事できないもんねぇ。
いや実に願ったりかなったりだった、これだけでも浜松に来た甲斐があった。
子供のように、手動装置を動かしながら、我々はしみじみとそんな事を考えていた。
この後、サイドワインダーやスパロー(で、いいんだと思うけど(笑)、要するに戦闘機に搭載する短距離ミサイルと中距離ミサイルね)の訓練用のヤツの展示を見ながら、質問しまくってた。
とにかく、地上展示に関しては何から何までも質問しまくってた我々だった。