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センター試験解説
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ジェイシー教育研究所製「センターTen」地学の解説は、このページが元に書き直したものです。

●第1問
問1
 ケプラーは惑星の公転の研究をした人。ニュートンは万有引力の研究をした人(ほかにも数学や物理学に様々な功績があるが)。
 たとえば北極では、自転のために地面が1日1回転反時計回り(左回り)に回転する。しかし振り子の運動は取り残されるため、振り子の振動面は、地面を基準にすると時計回り(右回り)に回転することになる。赤道の地面は右にも左にも回転しないのでこの現象はおきない。
 →正解は6
問2
 地球の公転によって、季節によって視点が移動するため、対象の天体の見える方向が変わる。これを年周視差という。年周視差の大きさは、天体までの距離によって異なる。
 また、公転の運動方向が季節によって異なるため、対象の天体からの光の来る方向が変わるように見えるのが年周光行差である。年周光行差の大きさは、天体までの距離に関係なく一定である。
 なお、分光視差は、スペクトル型から絶対光度を推定し、それと実視光度から距離を計算する方法。
 →正解は5
問3
 普通の恒星でさえ、視直径(みかけの直径)が観測できるものは少ない。まして白色わい星で観測できたものはないんじゃないかな。しかも白色わい星で吸収線から温度を推定する方法は使えないんじゃないかな(主系列星の場合は、吸収線から表面温度が推定できて、表面温度と絶対光度に相関関係があるため、見かけの光度と絶対光度から距離が計算できる)。ってことで2は間違い。
 レーダー(RAdio Detective And Ranging=放射波による方向と距離の決定)に使う電波では、たとえば1万光年離れた天体まで往復するのに2万年かかる。しかも、どんどん広がって薄まってゆく電波が、測定できるほどしっかり帰ってくるとは考えられない。したがって3も間違い。
 セファイドの変光周期をもとにする方法は、変光周期と絶対光度に明確な関係があることを利用したもので、ケプラーの第3法則(「調和の法則」。軌道半径と公転周期の関係)とは無関係。4も間違い。
 →正解は1

問4
 E=4×1026、c=3×108したがってc2=32×1016。これを式「E=△mc2」に数値を代入し、素直に計算する。すると0.44×1010になる。
 →正解は3
問5
 連星は、惑星と同じように遠心力と天体間の引力がつりあって公転しているものと考えられる。万有引力の大きさはお互いの距離と質量で決まるので、公転周期の観測から質量を計算することができる。
 食変光星は、セファイドのような脈動変光星とは異なり、絶対光度と変光周期に関係がない。
 物体が出す電磁波は、その物体の温度が高いほど波長が短い。このことから、赤い恒星は温度が低く、青い恒星は温度が高いと推定できる。また、表面温度が高い恒星は、単位面積あたりの放出エネルギー量が大きいと考えられる。
 そこで、全放出エネルギー量(=絶対光度、と考えて概ねよろしい)と単位面積あたりの放出エネルギー量から表面積が計算できることになる。
 →正解は(というか、間違いは)
問6
 質量の大きな恒星は核反応がさかんなため絶対光度が大きい。そして核反応が盛んなため短命である。すなわち、HR図の左上に位置する恒星は、短時間で主系列を離れて赤色巨星になる。
  星団Yはすべての恒星が主系列にあるが、Zでは一部の明るい恒星が赤色巨星になっており、またXでは真ん中あたりの恒星まで赤色巨星になっている。
 →正解は4

●第2問
問1・問2
 北半球では地面が左回り(反時計回り)に回っているため転向力が右向きにはたらく。そのため低気圧の中心に吹き込む風は一旦右にそれてから吹き込むことになり、左回り(反時計回り)になる。東側では南風が吹き込んで温暖前線ができ、西側では寒冷前線ができる。
 南半球では転向力が左向きになる。そのため低気圧には右回りに風が吹き込み、
 東側に温暖前線、西側に寒冷前線ができることになる。高気圧からは左回り(反時計回り)に風が吹き出す。
 →問1の正解は1、問2の正解は3
問3
 西風とは西から東へ吹く風。北半球では南向きに転向力がはたらくことになる。また、転向力は地面が回転しているために発生する「みかけの力」であるから、第1問のフーコーの振り子同様、地面の回転が大きいほど転向力が大きい。
 →正解は3
問4
 問題文に「南太平洋の」とあることに注意。→正解は4
問5
 表面付近の海水は、高いところから低いところへ滑り落ちようとする。また深部の海水は、海面が高いところでは上に乗っている海水が重いため大きな圧力を受けていることになり、圧力が小さいほうへ押し出される力を受けることになる。
 →正解は3
問6
 選択肢2について。問題文にあるとおり、大気(風)が海水の運動におよぼす影響が原因で、海水表面温度の異常、さらに気温等の気象の異常を引き起こすのがエルニーニョ現象。
 選択肢3について。ペルー沖やガラパゴス周辺では、西へ吹き流される海水を補うよう深層の海水がわきあがっている。これはエルニーニョに伴っておきる現象ではなく、むしろ正常なときに盛んな現象。
 選択肢4について。ペルー沖の海面の温度が上昇するため、この海域で海水の蒸発が盛んになり、また上昇気流が発生して雲ができやすくなる。
 選択肢5について。日本でも暖冬・冷夏・集中豪雨などの「異常気象」がエルニーニョ現象と関連づけて説明されることはご存じの通り。なお、エルニーニョ現象やそれに伴う諸現象は、自然現象が当然もっている「ゆらぎ」の範囲の出来事である。(上で「異常気象」とカッコつきで書いたのはそのためである)
 選択肢1のカタクチイワシについては「地学IB」では出てきていないと思うが、海の環境が変化すれば魚に変化が表れることは容易に推測できる。
 →正解は3

●第3問
問1
 地球楕円体上で考えてみよう。極では遠心力がはたらかず、赤道では最大の遠心力がはたらく。しかも赤道では地球の中心から遠くなっている。当然、極よりも赤道の方が重力が小さい。地球楕円体はジオイドに近い形なのだから、当然ジオイド上でも極と赤道では重力の大きさが異なる。
 風や水流の影響、波などがなければ、水面と重力の方向は常に垂直である。そのような状態の海水面およびそれを延長したものがジオイドである。このジオイドが標高や水深の基準になっている。ジオイド面と地球楕円体は最大で100mほどの高低差がある。
 →正解は2
問2
 1だとすると、赤道と極で重力の大きさが1割異なることになってしまう。すなわち、ものの重さが1割変わってしまう。実際にはこの違いはごくわずかである。
 分子間力や核力も少しあるだろうが、天体を一つの天体たらしめている力はおもに重力である。4だとすると、パルサーはばらばらになってしまう。
 たとえば土星は、写真を見ると素人目にもわかるほど扁平になっている(扁平率0.18)。木星も扁平率0.065で、自転周期はどちらも10時間程度である。
 →正解は3
問3
 「地殻」「マントル」は、岩石の種類による区分、「リソスフェア」「アセノスフェア」は状態(カチカチかネトネトか)による区分。とりあえず、選択肢2と3の組み合わせはおかしい。
 ここで出題されている現象は、地下深くの岩石の方が地震波の伝播速度が大きい(速い)ためにおきる。マントルの岩石の方が大きな圧力を受けているだけにガッチリ固まっていて、地震波が速く伝わる。カチカチとネトネトではカチカチの方が速く伝わる。
 →正解は4
問4
 この現象は、外核(液体)の地震波伝播速度が下部マントル(カチカチの固体)より小さい(遅い)ためにおきる。縦波であるP波はこの境界面を通過するときに屈折する。横波であるS波は液体の中を伝わることができないため、S波の影は103゜〜180゜の範囲になる。
 →正解は3
問5
 温度については詳しくはわかっていないが、中心へ向かって連続的に高くなっているはずである。密度は地殻とマントル、マントルと外核、外核と内核の境界で不連続に変化し、中心に近いほど大きくなっている。なお、地殻とマントルは岩石、外核と内核は金属(おもに鉄と考えられている)である。
 →正解は1
問6
 素直に計算する。底面積1cm2の角柱で考えるとわかりやすかろう。
 1kmは105cmなので、aの角柱の重さは2.7×4×106(g重)。bの角柱の重さは2.7×7×105+3.3×(40−7−h)×105(g重)。これを解いてh=6。
 つまり、このモデルでは大陸地殻の根の深さは27kmあることになる。
 →正解は4

●第4問
問1
 横ずれ断層の場合、断層の手前に立って見たときに、向こうの岩盤がどちらへずれたかで向きをあらわす。この場合、左へずれている。マグマが地層を切って貫入した岩体は「岩脈」、地層をはがすようにして貫入した岩体は「岩床」と呼ばれる。なお、岩床がさらに上の地層を持ち上げて鏡餅のような形になったものは「餅盤(べいばん)」と呼ばれる。
 →正解は3
問2
 トリゴニアは中生代の二枚貝、三葉虫は古生代の節足動物、デスモスチルスは初期のほ乳類のひとつで新生代第三紀。
 なお、高校の教科書に出てくる二枚貝(トリゴニア、モノチス、イノセラムス)はすべて中生代、巻き貝のビカリアは新生代の示準化石である。
 →正解は3
問3
 火成岩「あ」は、X・Y・断層・不整合・い・うを切っていて、他のものに切られていないからこれが一番新しい。「い」はX・Yを切っているが、あ・断層・不整合に切られているのでX・Yより新しく、断層・不整合・あより古い。
 そのように考えてゆくと、古い順に、地層X・Yの堆積(化石からXが先でYが後)→火成岩「い」の貫入→断層の形成→堆積中断ののち地層Zの堆積→火成岩「う」の貫入→火成岩「あ」の貫入、という地史が見えてくる。
 →正解は2と4
問4
 走向は、目的の面(ここでは地層)と水平面が共有する線の向き。すなわち、水平断面に表れている地層の向きであるから、地層Xの走向は西北西−東南東である。傾斜は上の面が向いている方向であり、地層Xの傾斜は南南西である。記号では、ナベブタ状の記号の長い線を走向に合わせ、短い線を傾斜の向きにつける。
 なお、化石の時代から、地層Xは北へ130゜傾斜し、上下が逆転している可能性がある。逆転している証拠が見つかった場合にはそのように記録しておく必要がある。
 →正解は3
問5
 b−cよりも右の部分と平行に、少し奥で切った様子を想像してみるべし。
 →正解は1

●第5問
問1
 リソスフェアは岩石圏表面付近のカチカチ部分、アセノスフェアはその下にあるネトネト部分。ホットスポットはアセノスフェアのさらに下に根をもつ高温部分。
 →正解は3
問2
 結晶分化作用で、初期に晶出する鉱物は有色鉱物が多いため、FeやMgが効果的に減少してゆく。また無色鉱物ではCaに富むものが先に晶出するため、NaやKはあまり減らず、(液の量が減るため)NaやKの濃度が高くなる。
 一般に固体は液体よりも密度が大きく、また初期に晶出する鉱物は金属を多く含むため、抄出した結晶は次々とマグマ溜まりの下部に沈殿する。
 →正解(というか、間違っているもの)は4
問3
 マグマが水中に噴出すると急冷され、表面は結晶になることができずに非結晶の固体になる。これはガラスである。マグマは一時「液体の詰まったガラスの袋」のようになり、やがて中まで冷えて枕状溶岩になる。
 →正解は1
問4(1/20修正)
 おもに熱の影響でできた変成岩が「接触変成岩」、おもに圧力の影響を受けてできた変成岩が「広域変成岩」。片麻岩は、広域変成岩のうち、比較的高温の条件で再結晶作用が十分にすすみ、粗粒の結晶の集合体になったもの。広域変成岩なので縞状の構造(片理構造)が見られる。
 →正解は2
問5
 同じ化学組成で、結晶構造が異なる鉱物を「多形」または「同質異像」と呼ぶ。たとえば石墨(いわゆる「炭」)とダイヤモンドはどちらも炭素原子の集合体であり、多形の関係にある。
 →正解は4
問6
 アイソスタシーの問題と同じように、底面積1cm2の角柱の重さを考える。深さ80km(=8×106cm)なので、圧力は2.4×107g重/cm2。atmに換算すると、2.4×104atmとなる。
 →正解は3