フレームの物理(音)
内部損失と素材の音

 ポリバケツを叩いてみましょう。「ぽこん」

 ポリバケツが「ぽこん」と鳴ってすぐ鳴りやんでしまうのは、分子の振動がすぐに熱に変わってしまう性質があるためです。
 これも、硬い物質は減衰(内部損失)が少ないという傾向があります(久谷焼は「かぁん」と鳴りますが、萩焼は「こんっ」でおしまいです)。

 音を出すのは櫛の仕事です。「フレームの音」が目立ちすぎるのは困りますから、その意味でもある程度柔らかい材料が必要になります。しかし、櫛が作った振動をケースに伝えるという役割がありますから、柔らかいほどいいというわけでもありません。
 亜鉛は、金属の中では柔らかいほうです。フレームの材料として、このあたりの硬さがちょうどよいようです。(いい音を出す目的のためには、さらに柔らかい鉛や、もう少し硬い銅でもいいかもしれません)
 また、融点が低いため鋳物が作りやすいことや、かしめて組み立てる工程があるのですが、これがやりやすいことも利点です(鉛では柔らかすぎます。また、銅は融点が高いので扱いが難しくなります)。

 硬さと音の関係を書いてきましたが、そのほかにも、物質によって減衰しやすい振動数が違っていたりしますので、「素材の音」は素材ごとにそれぞれ異なっています。

 もちろん、フレームだけでなくケースについても、形・大きさ・素材によって音が変わります。こちらはほとんど木が使われます。このケースを置く場所によっても、いろいろと音が変わります。お試し下さい。
 「素材の音」はない方がよいわけではなく、むしろフレームやケースの音が加わることで、オルゴールの音にふくらみをつけてくれます。オルゴールに限らず生演奏の音が、電子音やサンプリング音源と違って聴き疲れしないのは、音が「きれいすぎない」ためでしょう。我々の先祖が何億年もかけて馴染んできた音は皆そうだったのですから。

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