フレームの物理(音)
音速と素材の音

 裸のオルゴールを空中に持ち上げるとほんの小さな音しかしません。櫛が直接空気を振動させてつくる音はわずかだからです。
 櫛の歯が作った振動は、フレームからケースに伝わり、ケースの振動が空気を振動させて私達の耳に届きます。
 いま見ているオルゴールのフレームは、亜鉛の鋳物でできています。これもいい音を出す工夫のひとつです。

 木製の桶を叩いてみましょう。「こぉーん」
 ブリキのバケツを叩いてみましょう。「ぐぁぁん」
 久谷焼の鉢を叩いてみましょう。「かぁん」。(いい仕事してますねえ)
 似たような形のものでも、素材によって音が違います。素材によって音が変わる理由は主に、「音速」と「内部損失」です。

 大まかに言って、硬い物質は甲高い音をたてます。
 硬い物質は、原子や分子の結びつきが強いので振動を伝えやすく、音速(*)が大きい(速い)という傾向があります。「」でちらと出てきた「弦の定常波」を思い浮かべてください。音速が大きければ、同じ波長でも振動数が大きな、高い音になります。
 もちろん、大きなものは低い音をたてます。お寺の梵鐘は「ごぉーん」と鳴りますし、仏壇の鉦は「ちぃーん」と鳴ります。
 (ブリキのバケツの場合、本体と取っ手がそれぞれ音をたて、さらにぶつかりあったりもするため、いろいろな音がいっぺんに出て濁った音になります。あまり適切な例ではなかったかもしれません。m(..)m)
 
 櫛の振動がオルゴールのフレームに伝わり、振動させます。複雑な形をしたフレームは、各部がそれぞれ異なった振動数で共振します。音速が大きい物質でできていると全体に甲高い音で鳴って耳障りな音になりますから、小さなオルゴールのフレームはある程度柔らかい物質で作る必要があります。

(*)この場合、正確に言えば「横波の伝播速度」です。

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