編曲
強弱を表現する

 「強弱をつける」ではなく。

 ドラムにつけられた突起の高さは一定です。櫛の歯は、どれも同じ高さまで持ち上がって離れます。つまり、同じ大きさの音しか出せないことになります。

 突起の高さを変えれば強弱をつけることは理屈の上では可能ですが、実際には工作が大変面倒になりますし、図のように、弱い音は早めに突起から離れてしまうため設計も面倒くさくなります。これも机上の空論にすぎないでしょう。
 (過去に、これを実現した「フォルテピアノ」という機種が作られたことがあるにはあります(*1))

 しかし、オルゴールの音を聴いていて、強弱がついているような気がしたことはありませんか?
 それは編曲のテクニックなのです。アクセントをつけたい音は、同時に他の音を鳴らすことで補強するのです(*2)。逆に、強めたくない音にはうかつに和音をつけないようにしなくてはなりません。
 オルゴールのための編曲には、このように独特の技術が要ります。そんなことまで想いをめぐらせながら聴くと、「たかがオルゴール」の音が味わい深いものに感じられるかもしれません。

(*1)「フォルテピアノ」では、シリンダー(ドラム)と櫛を強音用と弱音用の2組用意し、弱音用を鳴らす・強音用を鳴らす・同時に鳴らす、の3段階の強さの音が出るようになっていました。
(*2)櫛の組み付けのときには、この「同時に鳴る音」が同時に鳴っていれば、ななめの曲がりはないと判断できます。

*    *    *    *    *

 ホール・オブ・ホールズの編曲をやってらっしゃる落合さんからメールが来ました(2001年10月24日)。同じ音を出す歯を2本つくり、同時に鳴らすことで強弱をつける方法があるそうです。

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