つれづれ話
ウンチクのつづき

・オルゴールの歴史(2)。
 19世紀の末、オルゴールにひとつの技術革新がありました。裏面に突起のついた金属の円盤を使う「ディスクオルゴール」の発明です。
 ディスクは扱いにシリンダーほど気を使うこともなく、簡単に交換できます。しかも、鉄板を機械にはさんでガッチャンとプレスすれば作れますので、安価に量産できます。
 ディスクオルゴールはどんどん普及しました。特別なお金持ち以外の家庭でも使われるようになりましたし、レストランや酒場でコインを入れて演奏する、ジュークボックスのような使われ方をしたものもたくさんありました。
 まだレコードもラジオもなかった時代です。人々は生演奏のほかはもっぱらオルゴールで音楽を楽しんでいたのでした。


家庭用卓上型ディスクオルゴール
「オーケストラル・レジーナ6型」。
ディスクの直径70cm。1900年頃。

スターホイールと櫛の歯(ジェミニ)

・ディスクオルゴールのメカ。
 シリンダーオルゴールでは、櫛の歯は筒に向かって直角に取り付けられ、突起が直接櫛の歯を弾いて音を出します。
 それに対してディスクオルゴールの場合は、櫛の歯はディスクと平行に取り付けられています。突起は「スターホイール」と呼ばれる歯車を引っかけて回し、これが櫛の歯を弾くようになっています。スターホイールを介することで、安定した大きな振幅で櫛の歯を弾くことができるようになりました。

・ディスクの互換性
 ディスクオルゴールのディスクは、どれも同じように見えます。しかしよく見ると大きさが何種類もあることに気がつきます。大きさが違うものは、当然使えません。
 大きさが同じでも、櫛の歯の配列などが統一されていないため、基本的にディスクの互換性はありません。

・オルゴールの歴史(3)。
 ところが1920年ごろ、オルゴールは急速にすたれてゆきます。レコードが登場したのでした。以来長らく、オルゴールは「宝石箱の付属品」として細々と生き延びてきました。
 そのオルゴールが、20世紀末になって再び注目されるようになっています。おそらく、電子音など人工的な音が増えすぎたために、櫛を弾いて出し、木の箱で響かせる素朴な音が逆に新鮮に感じられるのでしょう。

(まだつづく)

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